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2023年4月6日更新
遺言書を法務局に預けられる 2020年に制度がスタート|やってみよう、終活①
2020年、法務局に自筆証書遺言を保管できる制度がスタートした。何がどう変わったのか。メリットや、利用する際の注意点は? 法務局の担当者に聞いた。
Q 自筆証書遺言とは?
A 遺産分割や財産の譲渡などについて、自分で書いて作成する遺言のことです。遺言書を作成する際は遺言者が自筆し、署名、日付を書き、押印する必要があります。また、遺言の内容が明確であることや、遺言者の能力が十分であることが求められます。
自筆証書遺言は公正証書遺言(公証役場で公証人が作成)と比べて費用がかからず、手続きも簡単です。ただし保管や管理には注意が必要で、遺言書の作成にあたっては十分な情報収集や専門家のアドバイスを受けることが望ましいです。
Q 法務局への保管制度って何?
A 自筆証書遺言を法務局に保管できる制度が、2020年7月10日に開始されました。それまで自筆証書遺言には、紛失や改ざん、遺言書が相続人に発見されない、といったリスクがあったのですが、法務局に保管することでそうしたトラブルを防ぐことができます。また、保管制度を利用すると、以前は自筆証書遺言を実行する際に必要だった家庭裁判所での検認手続きが不要になるため、相続発生後の相続人の手続きの負担も軽くなります。
そのほかのメリットとして、費用は申請手数料のみ(3900円)。自分で書くことができれば、何度でも書き直すことができ、撤回も可能で、自由度が高いです。
県内ではこれまでに、年間150~200件ほどの利用があります。
Q 保管制度を利用する際の注意点はある?
A 自筆証書遺言には、法律で定められた形式や手続きがあり、不備があると遺言書が無効になります。法務局に保管する際は、余白の規定もあります=左に記載例。形式については法務局の窓口で担当者が申請時に確認するので無効になる可能性は低いのですが、内容に関しては法務局でアドバイスはできません。不安がある場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをお勧めしています。また、財産目録以外はすべて自筆で書く必要があるため、自分で書けない場合は作成することができません。
Q 遺言書はどんな人に必要?
A 財産があり、どういうふうに残したいという意図がある人は、遺言書を残しておくと良いですよ。中でも、(1)夫婦間に子供がおらず、残された配偶者に財産を多く残したい(2)相続人の仲が良くなくトラブルを防ぎたい(3)均等に分割するのが難しい不動産を所有している、といった場合は、遺言書を作成しておくといいでしょう。
残された人にとっても、遺言書があると、相続人全員での協議(遺産分割協議)や必要な書類を集めるといった負担が軽減されます。
家庭裁判所の遺産分割事件の7割は遺産額が5000万円以下との統計もあり、トラブルの発生と財産の大小は関係ありません。スムーズな相続のために、遺言書をご活用いただければと思います。
自筆証書遺言の保管制度をご利用の際は、管轄の法務局へご予約の上、お越しください。
法務局に預ける自筆証書遺言書の記載例
教えてくれた人
那覇地方法務局供託課の遺言書保管官の具志堅光男さん(左)、南谷麻由子課長
『週刊ほ〜むぷらざ』やってみよう、終活
第1861号 2023年4月6日掲載