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2023年3月2日更新

洋裁と織物 暮らしに提案[彩職賢美]

義理の祖母が52年前に創業した店を、30歳のときに引き継ぎました。2年前に移転した際に、義母の機織り工房も併設。洋裁と織りのスクールに力を注ぎながら、ソーイングや伝統工芸の魅力を広く伝えていきたいと考えています。


撮影/比嘉秀明

作って使う楽しさ伝える

FABRIC SHOP MINAMI
オーナー 伊波 美津乃さん



洋裁教室に力を注ぎ
ニーズにも柔軟対応


2年前、沖縄市八重島の静かな住宅街に移転オープンした生地店「FABRIC SHOP MINAMI(ファブリック・ショップ・ミナミ)」。オーナーで店のプロデュースを手掛ける伊波美津乃さん(43)は「広いアトリエに休憩コーナーやディスプレーコーナーなどを設け、生地を選んだり洋裁教室で学ぶ時間をゆったり楽しく過ごしてもらえるような空間づくりと、織物の制作や教室ができる工房の併設などにこだわりました」と笑顔を見せる。

義理の祖母が52年前に始めた生地店を、2代目として13年前に継承。店名を変え、ソーイングクラスを設けた。オーダーメードの服の受注や、義母で織物職人の伊波順子さん(70)とコラボレーションした商品開発など、時代のニーズに合わせた提案力で店をもり立ててきた。特に力を注いでいるのがソーイングクラス。「仕事を持ち、休日に通う人が多い」と感じた伊波さんは、教室のコンセプトを「今日作って、明日着る」と決め、採寸、型紙製作までを店舗の製作スタッフが担い、生徒には生地選びと裁縫をしてもらうことにした。「自分の体形に合わせた作りたいデザインの服が、個人差はあるが、1日~2日程度で作れる」と話す。移転前は3人でいっぱいだったアトリエも8人まで入れるようになった。

教室に7年ほど通う50代女性は「既製品と違い、自分サイズの服ができるのでうれしい。型紙を作ってもらえるから、自宅でも柄や素材違いの生地で作り楽しんでいる。作業中は集中し、休憩コーナーで休んだりしながら、1日中ここで過ごしたいくらいすごくリフレッシュできる」と笑顔を見せる。

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「洋裁を専門に学んだことがなく、作り方を理解するのに最初はすごく苦労した」と話す伊波さん。受注したオーダーメードの服づくりは、スタッフが対応するが、「お客さまの要望をお聞きし、的確に伝えていくには洋裁の理解が必要」と、実際に自分の服を作ったり、スタッフとともに型紙作成の勉強会を開いたり、服が完成した後の検証作業に加わるなどして勉強を重ねた。

「お客さまの要望に応えきれているか、体の特徴をとらえて仕上がっているか、デザインが似合っているか、その検証を何度も繰り返すことが私自身の鍛錬になり、スタッフと知識を共有してお客さまの要望を受ける力が付いた」と話す。


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伊波さんの店で提案する服や雑貨の多くには、知花花織など織物が使われているのが特徴だ。手掛けるのは義母の順子さん。併設された機織り工房で織りの制作や指導を行っている。「母の手仕事を広め、継承していきたい。伝統工芸の魅力を伝えたい」と伊波さんの思いは強い。

「伝統工芸品は大切にされ守られがちで、それはうれしいことだけど、皆さんに使っていただくことで、さまざまな声や価値観が出てくるはず。それを制作に反映させながら、作る側、使う側で沖縄の伝統工芸を成長させていけたらと思っています」と熱く語る。

「織物に興味を持つ人が増えれば、使う人が増え、作る人が増える」と、織物に気軽に触れてもらえるよう、機織り工房でスクールを開く。指導する順子さんは、「子どもや初心者でも大歓迎」とにっこり。

「布から作るものづくりを通して、多くの人に楽しさをはじめ、想像し考え、形にしていく豊かさを感じ取れる店として、長く、皆さんとお付き合いしていきたい」と伊波さん。「今後は体験教室などで観光にも貢献したい」と瞳を輝かせた。


 伝統工芸 織りの魅力を伝える 

店の敷地内には10台の機織り機がある工房が併設されている。そこで制作や指導をしているのが義母の伊波順子さん。知花花織研究会会長を務め、講師もしていたが、現在は会の活動を離れ、美津乃さんをサポートしている。ショップオリジナルの服や小物の制作デザインにも携わっており、「手織りの優しさ、ぬくもりが伝わるような布が作れたらうれしい」と話す。「織物をもっと気軽に日常生活で使ってもらえるようにしたい。後継者育成も頑張りたい」と順子さんが話すと、美津乃さんも「次世代に継承していくためには、教室や商品展開など、継続していくことが私の大きな役目」と力を込める。

今後は、観光客を対象に数時間で織物のお土産が作れる体験教室を企画し、「県内外に伝統工芸である織りの魅力を伝えたい」と意気込む。

機織りを指導する義母の伊波順子さん

 子どもたちも手作り楽しむ 

同店では、子どもたちを対象にした洋裁や機織り、染色も体験できるワークショップを開いている=写真下。中でも人気なのが、リュックサック=写真左。子どもたちが実際に機織りした織物をポケット部分に利用している。好きな布と合わせて、愛着もいっそう深まりそう。

美津乃さんの小学2年生になる一人息子も、半ズボンやお弁当バッグなどを手作りしたことがあり、「お弁当バッグは今でも愛用している」と目を細めた。


小学生も洋裁や機織で手作りを楽しむ

FABRIC SHOP MINAMI 電話=098(937)0564



プロフィル/いは・みつの
1979年、沖縄市出身。沖縄ビジネス外語学院卒。ホテル日航アリビラ、沖縄トヨタに勤務。2006年、結婚。09年、義理の祖母が創業した「生地の店美奈美」を継承。店名を「FABRIC SHOP MINAMI」に変更。沖縄市美里に移転し、洋裁教室も開始。21年、沖縄市八重島に移転。同敷地に自宅、店舗兼教室、織物のアトリエ兼教室を併設。


今までの彩職賢美 一覧


文・赤嶺初美(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1422>
第1856号 2023年3月2日掲載

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