彩職賢美
2022年9月22日更新
[沖縄・輝く女性を紹介]彩職賢美|インスタグラマーのせっちゃんさん|インスタで人生が一変
シングルマザー、子ども3人、資格無し、アラフォー。貯金を取り崩し、時間に追われていた私がインスタグラムで人生が一変。会社を辞めて起業し、時間や生活にゆとりが生まれました。
撮影/比嘉 秀明
スマホ一つで起業、会社設立
インスタグラマー
せっちゃんさん
フォロワー48万人超
母、主婦目線が強み
インスタグラムで100円均一のオススメグッズや使い方などを紹介しているせっちゃん、こと、與那覇世津子さん(42)。動画や文字入りの写真など、目を引く投稿が支持され、フォロワーは48万人を超える。
インスタグラムで本腰を入れて投稿を始めたのは、3年前。離婚して子ども3人を抱え、「崖っぷち」のころだった。
当時、通信系の会社で営業をしていた與那覇さん。フルタイム勤務後、保育園の時間に合わず、子どもたちを夜間保育に預けて夜9時ごろ迎えにいく日々。保育料や生活費がかさんで貯金を取り崩し、学資保険も解約した。「時間的にも経済的にも余裕がまったくなくて、こんなにすぐに生活が困窮するのかと驚いた。何よりも迎えに行くと子どもたちが寝てしまっていて、一緒に過ごせる時間がわずか。何のために働いているんだろうと、むなしくなった」
もともとインスタグラムのアカウント(せっちゃん@100yenshoplove)は持っていたが「生活を変えたい」と、本気で投稿を始めた。フルタイム勤務で家事、育児をこなしながら、削れるのは「睡眠と昼休憩の時間だけ」。子どもたちが寝静まった夜に写真を撮り、昼休憩は急いでご飯を食べ、残りの時間で加工して投稿。一日も休まずに投稿を続けた。「必死で、そのころの記憶はほとんど無い」という中で原動力になったのは、「子どもに負担をかける生活を続けたくない」という思いだった。投稿への反響やコメントが、励みになった。
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試行錯誤をしながら、投稿を続けた與那覇さん。ある日、「雑誌のように、文字と写真で見られたら分かりやすいんじゃないか」と思いつく。写真に文字を入れる「文字入れ投稿」を始めて、一気にフォロワーが増えた。写真のみの投稿が主流だった当時、目新しいデザインが受け、3カ月でフォロワーは10万人を超えた。同時に、企業から商品PRの案件が来るように。紹介した商品から売れた分に応じて報酬が入るアフィリエイトの収入も増えた。「同じ服でもモデルさんでなく、一般人の私が着ることで共感してもらいやすい。友だちに勧められたような感覚なんだと思います」
インスタグラムの収入が月収と並んだときに、「仕事にできるかもしれない」と思うように。フォロワーが増えるにつれて収入も増加。2年前に仕事を辞めて独立した。「何よりホッとしたのは、子どもが熱を出したときに周りに気を遣わず休めること。肩の力が抜けました」 投稿では、生活で困ったことがネタになる。例えば、洗った水筒がうまく乾かない、車内の細かなゴミが気になる、などの悩みと解決法を紹介する。フォロワーの大半は30代~50代の女性だ。「商品の説明には無いけど、こんな使い方できるとか、こんなところが便利、とか。主婦や母親の目線が役立っています」
最初から徹底しているのが、実際に使って、いいと思ったものを紹介すること。「何よりも信頼が大事」と、ほぼ毎日100円ショップに通い、ネットで商品を仕入れて試す。仕入れたもののうち、7~8割はボツにする。「100円ショップが好きだから、続けられる」
仕事で使うのはスマホのみ。投稿している写真や動画の撮影・編集は、すべて独学だ。「子育て中でも特別なスキルがなくても、スマホ一つで人生は変わる」。会社員時代の年収を1カ月で稼ぎ、社員3人を雇う與那覇さん。インスタグラム以外のSNSも運用し、別事業の立ち上げも視野に入れる。変化は、止まらない。
沖縄の魅力を知り沖縄に来てほしい
写真提供/與那覇さん
沖縄生まれ、沖縄育ち、「沖縄大好き」な與那覇さん。「沖縄の魅力を多くの人に知ってもらい、沖縄に来てほしい」と、インスタやツイッターで沖縄の情報を発信している。「久茂地交差点で私が何か話しても誰も足を止めてくれないけれど、SNSで発信するとフォロワーさんに見てもらえる」。お気に入りのスポットは、北部。毎週北部に通い、美ら海水族館やお気に入りのカフェでお茶している。「どこでも仕事ができるので、好きな場所で仕事をすることも多い」
子育て中も働きやすく
與那覇さんの会社の従業員は、みな子育て中の女性。「お母さんが働きやすい会社にしたかった」と與那覇さん。午後4時退社で、土日祝日のほか月に2~3日平日の休みを設けている。「仕事が4時に終われば、帰宅後のバタバタが全然違う。土日はお母さんにとって休みではないので、自分の時間を持てる平日に休みを作った」。従業員3人はみな正社員でボーナスも支給。「必要な時は頑張ってメリハリをつけて仕事をする。20年近く会社で働き、こうだったらいいなと思うことを実現しました」
撮影も編集もスマホ
キャッチーな文字が目を引く投稿。最近は、写真よりも動画投稿が主流だ。與那覇さんは写真も動画もスマホで撮影・編集する。「パソコンは使えないんですよ(笑)。とにかく見やすいことを第一に。書体を統一して、私の投稿だと分かりやすくしています」
プロフィル/與那覇世津子(よなはせつこ) 1980年宜野湾市出身。志真志小学校、琉球大学附属中学校、普天間高校を卒業。通信系の企業に勤め、2019年に退職。インスタグラムは48万人超、ツイッターは約3万8千人のフォロワーがいる。
[今までの彩職賢美 一覧]
撮影/比嘉秀明 文・栄野川里奈子
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1411>
第1833号 2022年9月22日掲載