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2021年11月18日更新

[沖縄・輝く女性を紹介]彩職賢美|NPO法人「よみたん自然学校」副校長の小倉 のぶ さん|大自然を先生に 主体性育む教育

子どもの健やかな成長は、毎日の遊びと暮らしの中にある、と考えています。読谷村の観光施設の一角をお借りして、自然体験を軸に、子どもの気持ちと主体性を大切にした教育活動を始めて18年。現在は、3年保育とフリースクールで、3歳から12歳までの幼小一貫教育を行っています。昔の人たちが大切にしてきた自然や文化、暮らしを伝えながら、子どもたちの生きる力を育んでいきたい。

気持ちに寄り添う関わり

NPO法人「よみたん自然学校」副校長
小倉 のぶ さん


日々の遊びと暮らしが学び
自分発揮できる環境づくり


大河ドラマのロケセットだった、赤瓦の琉球民家が学び舎(や)。4本のガジュマルが木陰をつくる前庭では、木登りをしたり、鬼ごっこをしたり。木製の長椅子を重ねて、自分好みの高さの滑り台を作って遊ぶ子たちも。

よみたん自然学校には3歳から小学生まで、約40人が通う。一人一人の個性を発揮できる関わりを重視。子どもたちは朝の集まりで、その日やりたいことを伝え、自分でやることを決めて、1日を過ごす。「子どもたちは、自然との触れ合いや仲間との関わりの中で、いろいろな発見をします。それを誰かに伝えたいという気持ちや行動が、学びにつながっていく。私たちスタッフは、教える人ではなく、子どもと同じ立場で一緒に遊び、学び合う大人なんです」

子どもたちとスタッフ、保護者、そして地域をつなぐ要として、子どもたちに寄り添い学校運営を支える。心を砕くのは、子どもたちがリラックスして、自分らしく安心して過ごせる居場所づくり。最も大切にするのは、気持ちをベースにしたコミュニケーションだ。

「怒ったり、泣いたり、はしゃいだり、行動の背景には、気持ちがあります。仲間に入れてもらえなくて寂しかったなど、その時の素直な気持ちを大事にされることで、ほかの人の気持ちに目を向け、受け止めることもできるようになります」

校舎は、エアコンも網戸もなし。土間にはかまどがあり、いつでも火起こしして遊べる。「子どもの育ちには、自分を発揮したり、興味関心を向けられる環境を大人がどう用意するかが重要。ローテクな家は自然が身近。どうすれば快適に過ごせるかを自分で考え、工夫する余地があるから、生きる力も強化されます」

子どものころ、両親がよく連れて行ってくれたキャンプや山登りが、自身の自然体験の原点。大学時代、自然体験ツアーのキャンプリーダーを務めたことを機に、環境教育やエコツーリズムへの関心を深めた。さまざまな団体に所属して、自然体験を提供する手法を学び、卒業後は企画・編集会社に就職。子ども向けの新聞制作やイベント企画を通して、自然体験の大切さを伝えてきた。

2000年、読谷村に移住。3児を自宅出産し、人、地域とのつながりも深まった。「長女が泣きやまなくて、アパートの方に怒られると思ったら、逆に一緒にあやしてくれて。子どもを地域で育てようという、相互扶助の仕組みの中に迎え入れてもらった懐の深さに感謝しています」

04年、夫とよみたん自然学校を設立。子育て支援事業を皮切りに、07年に「幼児の学校」、10年にフリースクール「小学部」事業を始めた。「小学部は、卒園生の保護者から『やってほしい』という後押しがあり、開校しました。当初は、フリースクールも少なく、朝から小学生を預かるなんて、とご批判を受けたこともありました」と振り返る。教育に対する選択肢が広がる中、自然教育を軸とする理念に共感が広がり、問い合わせは増え続けている。

失敗したって大丈夫。自分は自分でいい。夫婦で大切にする学びの環境で、自由に伸び伸び過ごす子どもたちの姿は、保護者にも波及。「『息子が毎日、あまりにも楽しそうだから、私もやりたいことをやろうと思ったんです』というお母さんの話を聞いて、すごくうれしかったです」

自身の体験を生かし、お母さんと幼児が一緒に自然体験を楽しめるイベントにも力を注ぐ。「親子で一緒に自然に触れる心地いい時間は、自分を見つめる機会にもなる。日々の子育てが楽しくでき、遊べる場を提供できれば」。大自然のようなおおらかさで、母子を優しくサポートする。



 幼児のママさんたちにおすすめ! 
「親子で楽しめる外遊び」

提供/よみたん自然学校

よみたん自然学校の保護者や、親子イベントに参加したお母さんたちに人気の遊びを、教えてもらいました。「自然の心地よさを感じて、ママがリラックスすると、赤ちゃんにも伝わります。自然の中で、親子で楽しい時間、心地いい時間を共有し、重ねていくことで、つらいが楽しいに変わります。遊ぶことで、子どもの気持ちも分かりますよ」と呼び掛ける。

鬼ごっこ、かくれんぼ
意外と盛り上がります。「こんなに走ったのは10年ぶり〜」といいながらも、楽しそうに追いかけ合っているお母さんが印象的でした。

たき火
長引くコロナの自粛生活で外出先も限られる中、乳幼児とママ、パパの手助けができないかと考え、今年9月、0歳児〜2歳児家族を対象に、「たき火 de café」=写真=というイベントを開催。6組の親子が参加してくれたのですが、「枝をポキポキ折って、火に入れるのが新鮮だった」と、楽しそうにしていました。

たき火を囲んでのユンタクは、リラックスして話もはずみます。たき火で、焼き芋や焼きマシュマロなどのおやつを作るのも楽しいですよ。「たき火 de café」は、12月12日(日)にも開催します。

枝を削って菜箸を作る
無心で枝を削るだけですが、つい夢中になって、「あと、もうちょっとだけ」と、なかなか終われない。実際に体験したお母さんからは、「『ごはんよ〜』と声を掛けても、遊びに夢中になって、なかなか食卓に来てくれない子どもの気持ちが分かりました」と、学びのシェアがありました。


 地域の協力でできた心地いい居場所 

読谷村の観光施設「むら咲むら」内の一角にあるよみたん自然学校。「地域の方にはすごくお世話になっています。お祭りや行事、清掃活動などには、日頃、使わせていただいているお礼をこめて、参加しています」と話す。ドラマのオープンセットだった琉球民家=組み写真右=を借り受け、自分たちで土間を整え、床を張り、いつでも火を起こせるようにとかまども手作りした。現在のかまど=同左=は、2代目。「地元のやちむん職人の指導のもと、わらと水を混ぜてこねた沖縄の赤土を使って仕上げました」。野外炊飯の日は、このかまどで、シンメーナービや羽釜を使ってごはんが作られる。

問い合わせ先(HP)https:/yomitan-ns.org
 


プロフィル
おぐら・のぶ
1973年生まれ、兵庫県出身。武蔵大学社会学部在学中に、環境教育の学びを深める。卒業後は、企画・編集会社で、子ども向けの新聞制作やキャンプの企画などに携わる。2000年に沖縄へ移住。04年に夫とよみたん自然学校を設立し、お母さんと乳幼児の自然体験プログラムを担当する。全国体験活動指導者認定委員会 自然体験活動部会認定主任講師、自然体験活動推進協議会認定リスクマネジャー。

 


今までの彩職賢美 一覧


撮影/比嘉秀明 文/比嘉千賀子(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1393>
第1789号 2021年11月18日掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
funokinawa編集部

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