教育
2020年11月5日更新
中学生は妊娠しない?|思春期の性教育[7 ]
文・百名奈保|性行為で妊娠することは分かっていても、自分のことと結びつかない思春期の子は多いです。沖縄は10代の妊娠・出産が全国の2倍、という統計もあり、自分の体の変化について理解することは大切です。
A 初潮が来れば可能性はある
愛のないsexは妊娠しない?
女子中学生から衝撃の質問がありました! 「愛のあるsexは妊娠して、愛のないsexは妊娠しないんですよね?」
1人だけではなく、何人かの女子から同じ質問をされたことがあり、とても驚きました。
彼女たちは、学校で実施されている『命の教育』などで「お父さんとお母さんが愛し合い、性行為をしたら赤ちゃんが生まれます」という話を聞いているので“遊び”や“同意のない”性行為では妊娠しないと思ったのかもしれません。
思春期講演では「初潮がくれば、何歳であってもsexをしたら妊娠する可能性はある」「中学生でも、たった1回でも、初めてのsexでも妊娠することはある」と、伝えます。
女子の感想文の中に「妊娠は大人がするものだと思ってた」「命の始まりは奇跡に近い確率って聞いたから1回のsexでは妊娠しないと思ってた」というものがありました。自分の体に起こりうることなのに、妊娠は自分のことと結びつかないようです。
大人になる前に、「自分の体に起きていること」と「妊娠する力を持っていること」を一致させて理解しておくことはとても大切なことです。
月経周期を知らない女子
女子は、小学生の時から高校生になるまでの間、月経について何度も話は聞いているけれど、月経周期や排卵について詳しく教わる機会が少ないので、中高生でも「自分の月経が、次いつ来るのか分からない」という生徒さんが少なくありません。自分の周期が分からないので「急に生理がきた!」「予測不能!」と言って保健室にナプキンをもらいに来る生徒がたくさんいる、と保健室の先生が嘆いていました。
理想的な思春期教育は、保護者や教育関係者、医療従事者が関わり、小学生から「何度も繰り返し」自分に必要な知識の積み重ねができることです。
男子の二次性徴については、保健体育の教科書に「精通」や「性衝動」について数行さらりと書かれているだけで、「最初の精通を前向きな気持ちで受け止める」「精通があれば自分にも命を生み出す力がある」ということが丁寧に伝えられていないのが現状です。
男子高校生たちの声で「学校で、自分が知りたい性の話(マスターベーションや避妊)を聞いた記憶がほとんどない」「精液は汚らしいと思う」「射精したあとむなしくなる」というものがあります。
また、中学3年生の男子が卒業するころ「僕の童貞をもらってください!」と女子に申し込むというイベントがあるそうです(もちろん女子は相手にしないそうですが)。性体験を急ぐ男子に「自分が中学生でも彼女が妊娠することはあるよ」と伝えても、彼らは「同年代の友達で妊娠させた人もいるけど、それは運の悪い人」「自分は今まで彼女を妊娠させたことがないから大丈夫」と言います。
女子も男子も、自分の体を100パーセント好きになれなくてもいいから、自分の体の“変化”と“能力”について理解してほしいと思います。
10代の妊娠・出産が全国の倍
保護者の皆さんへ。沖縄県の10代の妊娠・出産の割合は全国と比べて2倍近くあるということを聞いたことはありますか?
性行為を、興味本位で経験してみたい子、つなぎとめたいとか認められたいという気持ちが強くてする子、他の人に後れをとらないよう焦ってする子、自分の意志に反(はん)して(同意なし)経験する子がいます。
沖縄県の19歳以下の出産数は380人(2018年)、性交経験のある高校生女子は20%(全国)というデータがあります。保護者の皆さんには、「親が思っているより子どもの性行為は身近にある」という現状を知っておいてもらいたいです。
ひゃくな・なお/那覇市嘱託助産師・保健師として、学校で性教育について講話。子どもたちからの相談も受け付けている。那覇市首里で、「助産院*きらきら」を開業
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毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざ
「第1735号 2020年11月4日紙面から掲載」