介護
2024年11月7日更新
11月11日は介護の日|広げよう! 介護の選択肢
介護の形は十人十色。保険サービスだけでは個々のニーズに応えられないことも。そんなとき力になるのが、介護保険外サービスだ。選択肢を広げ、自分らしい介護生活を実現する道筋が見えてくる。
介護保険外サービスで暮らしも心も軽やかに
介護保険で適応しない部分を補うものとして、ニーズが高まる「介護保険外サービス」。
四つの介護保険外サービスと、活用方法を紹介する。
介護保険と保険外 組み合わせるのがコツ
大城五月さん/(株)hareruya代表。産業ケアマネ、主任ケアマネジャー。
居宅介護支援事業を主に、介護保険外事業を県内でいち早く展開
介護保険サービスは、要介護(要支援)の認定を受けている65歳以上の高齢者と40~64歳の特定疾患の患者が利用できる。法に基づく厳しい基準があり、サービスの種類や利用条件に制限がある。つまり、介護保険サービスを利用するには要介護認定が必須で、認定プロセスに時間がかかる。
介護認定を受ければ、食事・排せつ・入浴・衣服の着脱、通院・外出といった「身体介護」の他、独居なら、掃除、洗濯、調理、買い物といった「生活援助」も受けられる。しかし、散歩や趣味のための外出介助や同居家族がいる場合の生活援助は原則として受けられない(ただし、家族に事情がある場合、認められることもある)。
(株)hareruya代表の大城五月さんは、「介護保険制度は介護を社会で担うことを目指し創設された、世界的にも素晴らしい制度だが、高齢者やその家族のニーズ全てに対応できるものではない」と指摘する。
そこで、注目を集めているのが「介護保険外サービス」だ。介護認定の有無にかかわらず利用でき、より柔軟な対応が可能なため、高齢化やニーズの多様化から今後さらに需要が増えると予想される。県内でいち早く介護保険外サービスの事業を始めた大城さんは「介護保険外サービス事業を行っている人は、介護保険事業で培ってきた知識やスキルを活用してサービスを提供している人が多く、安心感がある」とし、「必要な場合は、各市町村の介護保険課や地域包括支援センター、ケアマネジャーへ相談のほか、ネット検索で情報収集を」と話す。
ただし、保険外サービスは全額自己負担で、利用者の経済的負担が大きくなることもある。「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせるのがコツ。アンテナを張り巡らせ、より充実した介護生活を送ってほしい」とアドバイスする。
介護保険外サービスの調べ方
各市町村の介護保険課や地域包括支援センター、ケアマネジャーに相談するほか、ネットで検索もおすすめ。
検索するときは、「○○(受けたいサービス) 介護保険外自費サービス △△(住んでいる地域)」を入力して検索すると得たい情報につながりやすい。
知っておきたい!その他の介護保険外サービス
●配食 ●見守り ●草むしりなど庭の手入れ ●訪問理美容 ●買い物代行
●ごみ出し ●終活サポート ●ペットの世話 など
専門スタッフが通院に同行し、受け付け、問診、診療室への立ち会い、薬の受け取りなどをサポートする(写真提供/hareruya)
■事例:70代男性のAさん
県内に身寄りがなく、成年後見制度と介護保険を利用するAさん。生活に必要な介護サービスは整っていたが、介護保険の適用が難しい通院や外出の支援が不足。(株)hareruyaのケア・シェアリング・ポノが提供する保険外の病院付き添いサービスを利用し、月1回の定期受診で、適切な病状管理につなげた。Aさんは「顔なじみの先生の顔を見るだけで元気になる。受診後に院内売店で買い物をするのが楽しみ」と話す。
■サービスの特徴と活用法
「病院の付き添いは基本的に介護保険の適用外だが、必要とする人は多い」と事業設立の経緯を話すhareruya代表の大城さん。
同サービスは専門スタッフが家族に代わり付き添う。「病状悪化の予防、心身状態の維持につながり、関係者と報告書を共有することで、医療と介護の連携も強化される」と語る。
家族は報告書で受診内容を把握できる安心感があり、高齢者の「家族に迷惑を掛けたくない」という心理的負担も軽減。なじみの医師やスタッフとの関係継続は、精神的な健康にも良い。
大城さんは「在宅介護者、施設入居者、入院中に他の医療機関を受診する時にも利用できる。本人が望む生活を継続するための一助にしてほしい」と呼び掛ける。
えらべる+ ホームページ http://eraberu-plus.com
訪問リハビリ 生活に合わせトレーニング
訪問リハビリで訪れた川満さん=左=と談笑する島袋さん
■事例:島袋裕子さん(100歳)
転倒で骨折した93歳まで運転していた島袋さん。要介護認定を受けて介護保険で訪問リハビリを利用していたが、回復して要支援2になると利用不可に。身体機能の低下を心配した家族の依頼で、ASASUZUの訪問リハビリを保険外で利用。今年、施設に入所した後も継続している。
孫の祥吾さんは「保険外だから、トレーニング以外のちょっとした身の回りの世話なども柔軟に対応してくれる。体調の観察など報告を受けるたびに、家族以外の人との交流が身体機能や認知機能の維持、生活の張り合いにつながると実感している」と信頼を寄せる。裕子さんも訪問リハビリの日には部屋を整えるなど、生活にメリハリが生まれた。
■サービスの特徴と活用法
「作業・理学療法士などのリハビリ専門職による保険外サービスは、周知が進んでいないのが現状」とASASUZU代表の川満尚彦さん。「リハビリで『自分でできること』を維持し、健康寿命を延ばすことは重要です。体のケアと丁寧な対話を通じ、自己選択・自己決定をサポートすることが私たちの目指す自立支援。今後もリハビリ専門職として、シニアの困りごとを解決・緩和できるようサポートしていきたい」と語る。
家事代行 家中の掃除や家族の料理も
「仕事が早く丁寧で安心。助かっています」と話す平良さん夫妻
■事例:平良エイ子さん(89歳)
平良さんは足が悪く、立ち仕事の家事が困難になり、(同)SUNJUが提供する家事代行サービスを利用。「それまでは伝い歩きで家事をして疲れ切っていた」が、毎週1回の家事代行で、掃除、料理、買い物を頼み、「とても仕事が早く丁寧で安心して任せられる。2階や庭の手入れもしてくれてありがたい」と笑顔。
夫婦二人暮らしの平良さん。「離れて暮らす子どもたちへ、心配を掛けずに済む」と語り、家事代行のおかげで「家が整い、気持ちよく暮らせる。作ってくれる料理も楽しみ」と喜ぶ。
■サービスの特徴と活用法
介護保険では、同居家族がいると「生活援助」は基本、利用できないため、「家事代行の需要が増えている」とSUNJU代表の宇江城雄斗さん。同社は平良さんのため時間を延長し、スタッフも2人体制で対応。サービス開始から「平良さんの表情が明るくなり、信頼を寄せてくれているのが伝わりうれしい」とほほ笑む。
高齢者のみならず、産後や子育て中の家庭からも好評で、「介護で無理をして体も心も疲れ果ててしまうのではなく、家事代行などを活用し、休むことや自分の時間を作ることも大切にしてほしい」と話す。
介護タクシー あきらめていた観光ができた!
車いすで念願の沖縄観光を実現させ笑顔の女性と齊藤さん=右(写真提供/いまここ)
■事例:70代女性のBさん
病気の後遺症で車いす生活となった県外在住のBさん。昨年、インターネットで、車いすでも沖縄観光ができることを知った。介護タクシー「いまここ」の齊藤友二さんが、本部町でイルカ体験を提供する事業所と連携し、送迎をサポート。Bさんは、「車いすになり旅行は諦めていたが、できると知って感激した。また来年も絶対に来ます!」と次の目標にもつながった。
■サービスの特徴と活用法
介護タクシーは、ケアプランに組み込まれていない突発的な通院、余暇的な外出支援は保険適用外となる。齊藤さんは「お出かけは最高のリハビリになる」と、コンサートや講演会、清明や模合の送迎や付き添いにも対応。地元の人が思い出の場所を巡るプチ旅プランも人気で、簡単な写真や動画の撮影も行い、喜ばれている。
「介護タクシーの運転手は、介護の有資格者が多い。私は介護福祉士として福祉事業所に勤めた経験があり、知的・視覚障がい者のサポートも可能。家族の代わりに同行ができるので、介護者のケアにもつながる」と話す。当事者だけでなく、事業所からの相談にも応じており、「介護生活で困っていることがあったら、気軽に相談してほしい」と笑顔で話す。
ASASUZU(アサスズ) ホームページ https://r.qrqrq.com/ApiSkgPB
介護タクシー いまここ インスタグラム https://www.instagram.com/imacoco.oki?igsh=eDc5b3JqZ2syeDhx&utm_source=qr
取材/赤嶺初美(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』11月11日は介護の日
第1944号 2024年11月07日掲載