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2024年10月31日更新

一般社団法人ドアレスアートオキナワの代表理事 呉屋マリヤさん|障がい者アート広めて自立へ[彩職賢美]

障がい者アーティストの作品を発信する団体を、2年半前に立ち上げました。団体名の「ドアレスアート」は、アートに垣根はない、という思いから。いいものを世に広めて、アーティストの自立につなげたい。

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キレイよりも「個性」に価値

一般社団法人ドアレスアートオキナワ 代表理事
呉屋 マリヤさん


展示会やイベントなど2年半で25プロジェクト

もともとは美容師。アート関連や福祉の分野で働いたことはなく、身近に障がい者もいない。

そんな呉屋マリヤさん(36)がドアレスアートオキナワを設立したのは、公共の障がい者の展示会に行ったことがきっかけだ。「いいな」と思った作品を購入しようと問い合わせたが、個人情報保護のため難しい、と言われた。「本人が売りたくないなら分かるけど、そうじゃない壁がある。なら、買えるようにしよう」と、団体を立ち上げた。

「0から1を立ち上げることが、面白い」という呉屋さん。その行動力は並ではない。最初は所属アーティスト3人からスタートした。アーティストを募る傍ら、企業にも働きかけて積極的にコラボレーション。2年半の間に、県内外での展示販売会やトークセッションなど、25のプロジェクトを行った。イベントでは、企画運営や作品の販売、空間作りなどを担う。
 

左から呉屋さん、所属アーティストの3人


定期的に展示販売会を開いているデパートリウボウは、「一般の人も立ち寄りやすく、場の力がある。ここしかない」と飛び込み交渉。その日のうちに担当者に会って熱意を伝え、協力を得て会場として使うことになった。「言わないと始まらない。まずはアクションを起こすこと」と自然体だ。

現在、所属アーティストは35人、個人支援者8人、協賛企業は38社に。展示販売会での販売のほか、作品が手帳の表紙やお箸のパッケージとして商品化されたり、企業のパンフレットに採用されたりと、アーティストの活躍の場は広がっている。
 

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呉屋さんの原点は、高校時代にカナダへ留学したこと。美術で「手を描く」課題が出たときに、教師が写実的で上手い絵よりも個性的な作品を称賛したことに衝撃を受けた。「絵に限らず、個性的であることが評価される。生徒の作品に値段を付けて地域の人に販売もしていて、とにかく自由だった」

その価値観は、現在の活動にも通じる。展示作品を選ぶときの評価基準は、「ユニークであること。キレイよりも、面白い・カッコイイが最大の賛辞だと思う」と話す。

「ドアレスアート」という造語には、譲れない思いがある。「同情を引くために、障がい者という言葉を使いたくはない。健常者が描いている絵を健常者アート、とは言わないじゃないですか」。展示販売する作品は、「対価に値する、ギャラリーに置いていてもおかしくない」クオリティーの高い物に絞っている。思い描くのは、障がいに関係なく、自由にアートを楽しめる社会だ。

「仕事で楽しいのは、封を開けてアーティストの作品を初めて見る瞬間」という呉屋さん。もともとアートが好きで、国内外のアート作品を見てきた。「原色の風景を見て育っている沖縄のアーティストは、色彩感覚が豊かでポテンシャルが高い。所属アーティストはアートについて学んでいない人がほとんどで、だからこそ面白い作品が生まれる」と可能性を感じている。

仕事の原動力となっているのは、アーティストの存在だ。「『生きがいになっている』と喜ぶアーティストがいる。彼らが活躍する『ステージ』を提供し続けたい」

現在、ファミリーマート浦添高校前店のイートインスペース(9時~19時)で、作品のポスターを飾る「#アートなコンビニ」を開催中。11月19日まで。また、11月4日、タイムスホール(那覇市久茂地)でシンポジウム(14時~)とアートミニマルシェ(12時~18時)を開く。どちらも参加無料。

今、目指しているのは海外展開。さまざまな垣根を超えていく。
 

 思い立ったら海外へ 

海外を訪れることも多い呉屋さん。「知らない街を歩くのが好き。思い立ったらホテルも取らず、その日に海外に行く」。小籠包を食べに台湾に行ったり、散歩をしに香港に行ったりしたことも。写真は韓国

写真は呉屋さん提供
 

海外の魅力を聞くと「予想できないトラブルが起きること。台湾で空港行きのバスに乗ったつもりだったのに、行き先が違って英語も通じなくて…。地元の人に身振り手振りで状況を伝え、何とかタクシーを捕まえてホテルに宿泊した。日本ではなかなか体験できない」と笑う。

 アートを楽しむ 

呉屋さんは、20代から国内外で気に入ったアート作品を購入し、部屋に飾っている=上写真。美大生の絵やバリ島の道沿いで買った絵、写真、デジタルアートなど、作品のテイストはさまざまだ。「同じ絵を見ても、無になったり、頑張ろうと思えたり、その時々の自分の状況で感じ方が違う。毎日見ることで、無意識に影響を受けている」と話す。

アートを見てきた経験が、イベントのプロデュースや団体運営に役立っているという。

ドアレスアートオキナワ
メール info-doorless-art-okinawa.org

 

 アーティストの声 
展示会場で出会った、2人の所属アーティストに声を聞いた。

2年前、初めて作業所で絵を描いたcoemushiさん(37)。「自分の内にあるものを形にして、見てもらえることがうれしい。売れることも励みになる。作業所での仕事の時間以外は、ずっと絵を描いています」と笑う。

子どものころから、絵を描くことが好きだった安部美夕希さん(40)。統合失調症になり、2022年9月からドアレスアートに参加している。初めて出展した展示会で作品が購入され、泡盛のラベルや企業のパンフレットに採用された。「絵を描いていてよかった。個人だと、ここまでの広がりはない」と喜ぶ。絵の売り上げで、画材を購入している。「絵を描くことが、何よりも幸せな時間。洗濯や料理など家事をこなして、ごほうびの絵を描いている」と目を輝かせた。



プロフィル/ごや・まりや
1988年那覇市出身。山野美容芸術短期大学卒業。東京で美容師を経て、学校法人琉美学園の学園統括長、外資系ホテルのスパのマネージメントに携わる。2018年一般社団法人琉球美容研究所を創設。2022年一般社団法人ドアレスアートオキナワの代表理事に就任。



今までの彩職賢美 一覧


撮影/桑村ヒロシ 取材/栄野川里奈子
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1440>
第1943号 2024年10月31日掲載

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