彩職賢美リターンズ
2025年5月22日更新
一般社団法人be.らぼらとり(MamaBee) 代表理事 翁長 有希さん|街のチカラで 働くママ支援[彩職賢美リターンズ]
「子育てとキャリアは一体。どちらかではなく、どちらも大切にできる社会にしたい」。キャリア教育コーディネーターとして、さらには子育て支援や女性活躍推進のため、仲間と共に取り組む翁長有希さん(45)。「社会の仕組みを変えたい。コザにはそれを可能にする潜在力がある」と熱く語る。
一般社団法人be.らぼらとり (MamaBee)
代表理事 翁長 有希さん
沖縄を少子化と 無縁の島に
18年間、キャリア教育の推進を目的に教育現場の改革や人材育成に取り組み、教育業界で比較的順調にキャリアを積んで、前職では会社代表に就任。そのころ彩職賢美に出してもらいました。
しかし代表就任から4年後、第1子の妊娠という大きな転機を迎えて退職。フリーランスに転身したとき、社会の構造が子育て世代、特に女性にとってあまりにも優しくないことを肌で実感しました。それまでのように思い切り仕事ができなくなり、急にハンディキャップを背負ったような感覚に襲われたんです。保育園からの呼び出し、働く時間の確保の難しさ、社会から取り残されるような不安。そうした体験を通じて「これは私個人の問題ではなく、社会全体の課題だ」という思いが強くなりました。
そこで、同じような状況にある女性たちが集まれる場として、子育て支援団体「MamaBee」を仲間と立ち上げ、子育て講座やコミュニティースペースの運営に力を注ぎました。
また、息子が小学1年生になるとき、その個性を強みとして伸ばし、のびのび成長させたいと、息子に合う環境を探したのですが、学びの選択肢があまりにも少ないと感じ、共感する仲間の協力を得ながらフリースクール=下囲み=を開校しました。現在、スクールは3年目を迎え、子どもたちも元気に通っています。
フリースクール開校 学びの選択肢を増やす |
![]() 昨年3月に行われた「琉究学舎こてらす」修了式の様子。地域の人々も激励に駆けつけた
(写真は翁長さん提供)
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2023年、翁長さんはフリースクール「琉究学舎こてらす」を設立した。きっかけは長男。フリースクール入校を考えたが、数が圧倒的に少なく、距離や定員の問題などもあり、なかなか見つからなかった。第3子の出産時期だったが、「自分でつくるしかない」と決意し、共感してくれる仲間たちの協力を得ながら開校した。 こてらすは、多様な人と交流しながら「社会がまるごと学び場にできる場所」をキャンパスにすることにこだわり、沖縄市の一番街を中心拠点に、沖縄中を飛び回り多様な体験をする。 「コザでは、一番街通りの皆さんや自治会長さんが子どもたちのことをいつも気に掛けてくれ、見守ってくれている。そんな温かな交流を通し、学びを得ながら成長している」と目を細める。 |
子育てとキャリア
両立できる社会を
キャリア教育、女性活躍推進、子育て支援、フリースクール。一見バラバラに見える活動も、すべての根底には「教育」があります。そして女性にとって「子育てとキャリアは切り離せない」という確信が、年々私の中で強くなっています。
特に深刻なのは少子化問題です。2023年、沖縄も人口が自然減に転じました。今後さらに急速に状況は悪化するでしょう。「女性活躍」と言われながら、子どもを産めばキャリアが止まり、復帰しても元のポジションには戻れない。企業は人手不足に悩みながら、子育て中の女性を生かす仕組みがない。この悪循環が、次世代に「子どもは持たない方がいい」との考えを無意識に刷り込んでいます。
18~25歳の約5割が「子どもを欲しくない」と答えているデータがあります。若い世代に「キャリアか子どもか」という2択の感覚が刷り込まれている。日本のジェンダーギャップ指数にも表れているように、女性にとって生きにくい社会構造が少子化の大きな一因です。このままでは、日本社会は持ちこたえられません。
私は、沖縄を少子化と無縁の島にしたい。子どもが生まれない、育てにくい社会のままでは、未来はありません。
エネルギーに満ちた
コザを拠点に
子育てとキャリアは切り離せないものであり、女性がこの二つを両立できる社会の仕組みを作ることが急務だと考えています。そこで昨年から、キャリアコンサルなど専門知識を持つ信頼できる仲間と共に「ママテラスタウンプロジェクト」に取り組んでいます。
拠点に選んだのはコザの一番街。この街が持つ可能性を強く感じるからです。起業家が多く、若者のエネルギーに満ちており、地域の人々も新しい試みに寛容です。子どもたちが安心して歩けるアーケード、隠れた名店や女性向けのサロンが並ぶ、女性や子どもにとって居心地の良い環境が整っています。
このプロジェクトでは、子育て中の女性が仕事を続けられるよう、企業向けのコンサルティングも行っています。人材不足に悩む企業と、スキルを持ちながら働く場を求める女性をつなげるマッチングの仕組みを構築中です。女性がフリーランスとして複数の企業と関わりながら、自分のペースで働ける環境を整えることで、キャリアの継続を支援していきたいと考えています。
また、コザに子連れ専用のコワーキングスペースを作り、子育て講座とキャリア支援を一体化させた拠点づくりも計画中です。同時に、オンラインでのサービス展開も進めていく予定です。
私の目標は「沖縄を少子化と無縁の島にする」こと。
女性が生きやすい社会を作ることで、貧困の課題や企業の人材不足の改善にもつながると信じています。少子化、女性活躍、人材不足は全部つながっています。女性が子育てとキャリアを両立しやすい社会の仕組みを築いていくために、力を注いでいきたいと思っています
翁長 有希さん
「(一社)be.らぼらとり」代表理事
[プロフィル]
おながゆうき/1979年生まれ。英語教師、人材育成会社代表を経て、フリーのキャリア教育コーディネーター。2017年、「MamaBee」設立。19年、「(一社)be.らぼらとり」代表理事。23年、「琉究学舎こてらす」設立。
2013年5月9日号に掲載
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撮影/比嘉秀明 聞き手/赤嶺初美(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美リターンズ<28>
第1971号 2025年05月22日掲載