ビューティー
2018年5月12日更新
『yes and no』|美容外科医のないしょ話
文/当山護(当山美容形成外科会長)
旅行客の要望にホテルマンや旅行業者は決して「できません」とは言わず「何とかやってみましょう」とお答えします。すごい職業だなあと感じ入ります。お客さまにすれば半分は断られるかもしれないと思いつつのお願い事です。最終的には希望条件が合わない事もあるだろうけれど、お客さまは努力されたことに感謝する部分はあります。基本的にはどんな職業にも同様のことは多少はあるのかもしれませんが…。
医療の場合はどうでしょうか? 乳がんの方に治せませんとは決して言えません。現実的には治せる治療法を検索したり、専門医を探し紹介していきます。病は「治せる」と断言できるものが少ないのも事実ですが、医者には治せる最大限の努力が要求されていきます。
美容外科の場合はどうでしょうか?「この鼻もっと高くできますか?」と言われたら「イエス」と答えます…が「3ミリほど高く!」と要求されますと「できるだけやってみましょう」とお答えするでしょう。鼻の高さに計測法の基準がないからでもあります。同様に、「美しくしてください」という微妙な要求にもイエスと言いにくくなります。美しさにはある種の個性が必要だからかもしれません。
一方、術前・術後の写真を比較すると明らかに美しく変化しているのに、「変化が無い」と術後訴えられる方もおられます。理由は顔全体のイメージが変わっておらず周りからは変化なしを指摘されるからです。部分的変化は他人には分かりにくいものですが、実はご本人はすでに気付いておられることが多いのです。気付いているが他人からの評価を得たい! という内に秘めた気持ちがあるのでしょう? しかし、実際は案に相違し友人からの評価は辛い。そのため、きれいな変化があるのにご本人が落ち込む悪循環を生む時があるのです。
夕方「おいしい夕食ができています!」と遠くでカミさんの声がします。要望せずとも常に温かい食事を作ってくれる彼女、おいしさの結果はともかく、私の答えはいつも感謝の「イエス」です。
『週刊ほーむぷらざ』美容外科医のないしょ話
第1607号 2018年5月10日掲載 毎月第2、第4週に掲載