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2024年10月27日更新

想いと背景 理解し受け止めて|こんな時どうする?大人の発達凸凹(でこぼこ)⑰

文・金武育子
(株)沖縄発達支援研究センター代表(株)おきなわedu取締役



職場の困りごとあるある
  おせっかい・余計なひと言  
 

皆さんは「おせっかい」と聞くと誰を思い浮かべますか? 沖縄では、おばぁの「かめーかめー(食べなさい)攻撃」や、日常生活への進言が思い浮かぶのではないでしょうか。高齢女性の愛ある行為なのですが、押しが強過ぎると閉口してしまうのも、また事実です。

そんな時思い出すのが「大丈夫(=いらない)」と、孫に断られたおじぃの言葉です。「食べられなかった時代のひもじさを味わってほしくなくて、強く勧めてしまうんだよね。なにしろ挨拶(あいさつ)が『あさばん(昼食は)かでぃー(食べたかい? 食べられたかい?)』だったのだから。おじぃも、きっと食べただろう、好きな物ではないのだろうと思っていても、『もっと食べなさい(ひもじい思いはするな)』と言ってしまうんだよ。そういう時は気持ちをくんで『ありがとう』と口をつけるものだよ」と。以来、私にとって「かめーかめー攻撃」は「その想いに応えたい」と思わせてくれる挨拶になりました。うちの子どもたちも、「じゃあ少し」と口をつけるか、「ありがとう(今はいらないよ)」と気持ちを受け止められるようになりました。

発達凸凹のおせっかいもコレと似ています。まず知っていただきたいのは、見かけ上の判断にうわべだけで反応するのではなく、よく見て感じるのが大切だということ。一方で、熟慮せずに発言・行動する、余計なひと言を言ってしまう発達凸凹の課題もあるので、職場の人間関係上、「度が過ぎる」「相手の事を考えないおせっかいや余計なひと言」は問題となるわけです。





なぜ、おせっかいや
余計なひと言が出る?


発達凸凹のおせっかいからは次のような関係性が生まれやすいです。相手を思う気持ちが強過ぎて何度も繰り返してしまうAさんに対し、相手の気持ちがよく分からず表面的な出来事しか見ずに迷惑に感じるBさん。自分のおせっかいに気付かず、言わなくていい余計なひと言を衝動的に口にしてしまうCさんと、それを投げつけられ、怒りや迷惑を表現するか、どう反応したらいいか分からずに受け止め過ぎてしまうDさん、です。

思いのあるおせっかいと、それを受け止める組み合わせなら問題になりませんが、相手の親切を迷惑がって嫌がるばかりのBさん・Dさんと、衝動的に思いつきでおせっかいをしてしまうAさん・Cさんでは、お互いにとって「良い関係性」には発展しにくいのではないでしょうか? AさんやCさんが余計なことを相手の状況に配慮せず「自分は正しいから」と発し続ければ、受け取るBさんやDさんは嫌な気持ちを持ち続けてしまうことになり、良好な人間関係ではなくなります。そしてここに、大人の発達凸凹の難しさがあるのです。

表1に、日本精神神経学会がまとめた、子どもと大人の発達凸凹「多動性・衝動性の特徴」の比較を示しました。大人の場合、なぜこのような事が起こるのか分かりにくく、はっきり問題となる行動が示されないこともあり、性格のせいだと考えられやすいことが分かります。これが、発達凸凹の「多動性」と「衝動性」によるもので、理由もないまま落ち着かずに衝動的に行動してしまっているとしたら、当事者も相当につらいのではないでしょうか。そしてこれは「自己不全感」や「疎外感」につながっており、彼らを悩ませているのです。

 

    想いと背景 理解し受け止めて    


良好な人間関係を
築くには?


間違っているとか行き過ぎた言動だからといって、「自分勝手」や「能力が低い」など自己不全感や疎外感を助長する声かけは、事態をさらに悪化させる場合が多いのではないでしょうか。周りの人はまず彼らにこうした特性があることをよく理解し、本人が悩んでいる点について寛容であることが大切です。答えが分かりにくいからこそ、答えを求める彼らを、受け止める気持ちで向き合っていただくと、良好な人間関係が保てるのではないでしょうか?

冒頭のおじぃの教えは「黄金(くがに)言葉」となり、受け取り上手となった私は、心温まるお話と、翌日の分までありそうなたくさんのお土産をいただいています。想いに思いをはせていただく昔ながらのお食事は、心にも体にも栄養満点です。ただし、相手の想いと背景を分かっているか、いないか、は大きな違いを生みます。大切なことを分かってほしいと思い接することが、力強いサポートになるのではないでしょうか。



文・金武育子
(株)沖縄発達支援研究センター代表
(株)おきなわedu取締役

きん・いくこ/1970年、那覇市首里生まれ。10代の2人の息子を通して人生と向き合う中年期クライシス体感中。臨床心理士・国際交流分析士。大学講師、office育子を経て、現職。好きな言葉は「人は必ず発達する」「人間、この未知なるもの」

記事に関する問い合わせは、odssc.okinawa@gmail.com

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『週刊ほ〜むぷらざ』 こんな時どうする?大人の発達凸凹⑰
第1932号 2024年08月15日掲載

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