かくれ貧血　代謝やホルモンに影響｜身近な病気もっと知ろう家族の医学手帳（112）

家族の健康が気がかりな「ほーむさん」が専門のドクターを訪ね、気になる病気について聞くこのコーナー。今回はかくれ貧血にスポットを当て、日本内科学会認定内科医、総合内科専門医である新健幸クリニック副院長の小禄雅人先生に話を聞きます。

かくれ貧血

これは心配！貧血予備軍

Ｑ１かくれ貧血とは？

貧血の中で最も多いのが鉄欠乏性貧血です。血液中には鉄とタンパク質が結合することで作られるヘモグロビン（以下、Ｈｂ）という物質があり、全身に酸素を運ぶ働きをしています。血液検査の結果、このＨｂの項目が基準値より低いと、鉄欠乏性貧血が疑われます。疲労感、倦（けん）怠（たい）感、朝起きられない、爪がもろくなる、頭痛、立ちくらみといった症状や、無性に氷が食べたくなる氷食症を起こすこともあります。

Ｈｂが基準値以内なのに、これらの症状がある場合、かくれ貧血の可能性があります。かくれ貧血とは、血液中のＨｂはなんとか足りているものの、潜在的に鉄が欠乏している状態で、放置すれば貧血になってしまう状態を指します。例えるなら、鉄欠乏性貧血は体というお財布に鉄というお金が少ない状態、かくれ貧血は体というお財布にかろうじて鉄というお金は入っているけれど貯金が乏しい状態です。

女性は月経で鉄を失いやすく、体内の鉄が不足するとこうした症状が起こるほか、酸素を運ぶ赤血球が小さくなったり、代謝やホルモンの分泌、体内時計の働きなどにも影響することがあります。特に成長期の１０代に多く、過度なダイエットをしている女性にも起こりやすいと思います。

成長期や過度なダイエットは要注意

Ｑ２どんな検査で分かるの？

鉄欠乏性貧血は、血液中のＨｂのほか、血清鉄の検査で分かります。かくれ貧血は、鉄を全身に貯蔵するフェリチンという鉄結合性タンパク質の量や、総鉄結合能（ＴＩＢＣ）、赤血球の大きさをチェックする平均赤血球容量（ＭＣＶ）などを調べることもあります。検査結果が基準値内であれば大丈夫ということではなく、私は「基準値の平均値以上を目標に治療しましょう」と患者さんに説明します。

たとえば当院の成人女性のフェリチンの基準値は５～１６０ナノグラム／ミリリットルとなっていますが、目安としては８０～９０ナノグラム／ミリリットル、できれば１００ナノグラム／ミリリットルを目指して治療を進めるようにしています。

Ｑ３どうすれば改善するの？

基本的には食事がとても大切です。肉や魚に含まれるヘム鉄は吸収されやすいので、赤身のマグロやカツオ、赤身肉、レバーなどを積極的に食べましょう。ビタミンＣやタンパク質は鉄の吸収率を高めるので、ビタミンＣが豊富な野菜や果物と、肉、魚、卵、乳製品、大豆製品といった良質なタンパク質も忘れずに。

なお、濃い緑茶、コーヒー、紅茶などに含まれるタンニンは鉄の吸収を妨げるため、食後１～２時間は空けて飲むのがおすすめです。効率的に鉄を補うならサプリメントも有効です。

小禄雅人さん／新健幸クリニック副院長
おろく・まさと　新健幸クリニック副院長。琉球大学医学部医学科卒。豊見城中央病院の腎臓・リウマチ膠原病内科、聖マリアンナ医科大学附属病院の腎臓・高血圧内科をへて現職へ。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本リウマチ学会専門医、日本腎臓学会専門医。モットーは「臓器だけではなく全身を診る」。

新健幸クリニック
電話＝０９８－８６１－５７００
那覇市久茂地２－１１－１８３Ｆ