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2023年6月15日更新

漢方で治す① 体全体を整える漢方|身近な病気もっと知ろう 家族の医学手帳(109)

家族の健康が気がかりな「ほーむさん」が専門のドクターを訪ね、気になる病気について聞くこのコーナー。今回から3回にわたり、漢方での治療にスポットを当て、日本東洋医学会会員である、のはら元氣クリニックの野原正史院長に話を聞きます。

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漢方で治す①

穏やかに効き体質改善も

Q1 西洋医学との違いは?

西洋医学は、診察やさまざまな検査で病気の原因を探り、診断をつけ、化学合成された西洋薬を処方したり、手術や放射線治療を行う、科学的、論理的な医学です。一方、東洋医学の漢方では、まずは診察でその人の体質や状態を見極めて証(しょう)を立てます。証を立てるとは、その時点での患者の病態を判断することです。そして証に合わせて、2種類以上の生薬(草、木、種、皮、葉など)からできた漢方薬を処方し、体全体のバランスを整えることで体質を改善し、緩やかに病気を改善します。


即効性がある漢方薬も
 

Q2 どんな診察をするの?

西洋医学と大きく違う点は、脈診と舌診、腹診と呼ばれる診察方法です。西洋医学でも脈をとったり、口の中を見たり、おなかを押したり、たたいたりしますが、漢方の診察では、脈の数(心拍数)や強弱(血圧)、張り具合(抵抗力)などを診ます。また脈が触れる位置で体のどの臓器に異常があるか、舌の状態で本人の気力、貧血(栄養状態)のありなし、水分の異常(むくみ)の有無、病気が急性か慢性かなどを判断します。また、おなかをさわってストレスの状態、体質が虚弱かどうかなどの判断をします。漢方の診察では西洋医学の診察で行う肺や腸の音を聞く聴診をあまりしませんが、これは漢方が聴診器や心電図がない時代から続いている診察方法だからです。

 

Q3 効き目はゆっくり?

漢方薬は何年ものみ続けないと効果が出ないと思っている方が多いと思いますが、それは誤解で、もちろん即効性がある薬もあります。たとえば、ただの風邪を治すのに何カ月もかかっては意味がないので、即効性が期待できる葛根湯(かっこんとう)や小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、麻黄湯(まおうとう)などの薬を使いますし、足のつりやこむら返りには芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)、動悸(どうき)には炙甘草湯(しゃっかんぞうとう)、二日酔いや頭痛には五苓散(ごれいさん)などを処方します。

ちなみに、慢性の病気に関しては、体質改善に時間が必要なため、個々の体質によって最低3カ月、場合によっては半年から数年かかることもありますが、薬が効きそうかどうかは2週間程度で判断できますので、体に何か不具合のある方は、一度漢方薬をお試しされるとよいでしょう。

◇       ◇       ◇
 
次回は、漢方が得意とする治療について聞きます。
 


野原正史さん/のはら元氣クリニック 院長
北里大学医学部卒。琉球大学病院第一外科、長崎大学病院第二外科、沖縄国立療養所沖縄病院、北部地区医師会病院などを経て、2004年10月のはら元氣クリニックを開院。日本東洋医学会会員、モットーは「西洋・漢方の枠にとらわれない、一人一人に合った全人的医療を行う」。

のはら元氣クリニック
那覇市銘苅3-21-21
電話=098-867-0012
http://www.noharagenki.com/


文・堀基子(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』 家庭の医学手帳<109>
第1871号 2023年6月15日掲載

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