小湾喜智
2018年12月14日更新
街のワイン屋さんからおいしい話「フランス研修旅行記vol.03」
ワイン専門店Cote Dor(コートドール)の小湾喜智さんのコラム vol.05
おいしいワインとそれに関わる楽しいの話をご紹介。
前回に引き続き、2018年6月末に訪問したフランス・ブルゴーニュの研修旅行記を綴って参ります。どうぞお付き合いください。
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怒涛の20種以上のワインの同時テイスティングや、有機栽培を実践するブドウ畑の視察を経て、興奮冷めやらぬ中の研修3日目。
個人的にとても楽しみにしていた研修のカリキュラムが、今回の「樽工場」の見学でした。
ジョゼフ・ドルーアン社の地下セラーでも見たように、ワイン熟成させる手段の1つとして、木製の樽材を用いることがあります。
実は、すべてのワインが木樽で熟成されるわけではありません。木樽熟成を行うかどうかは、ワインの生産者がどのような味わいの表現をしたいかによって、使用の有無が判断されます。
出来上がったばかりのワインは味が荒々しく、その段階ではおいしさが整っているわけでないので、しばらくワインを静置して「熟成」させる必要があるのですが、その「熟成」する際の容器として木樽を用いることで、次のような効能が得られます。
■木樽は木材ゆえ、完璧には密閉されておらず、ワインにほんの少しずつ酸素を供給します。結果、ワインがゆっくりと酸化熟成していき、香りや色調、味わいに変化が生まれます。
■木樽にはタンニンと呼ばれる渋み成分の他、バニリンと呼ばれる香り成分などが含まれているため、これらの要素がワインに付与され、よりワインが複雑に変化、発展します。
このようにして、木樽熟成はワインに好ましい変化を与えることができるのです。
ということで遠路はるばる行ってきました、樽専門工場の「フランソワ・フレール」社。
工場に着くと、まずは木樽の原材料となる、カッティングした木材を乾燥させる工程を見学。
思いのほか、大ざっぱに野ざらしなことに一同、驚愕(笑)。
実はこの野ざらしが重要だそうで。
当然野外なので雨も降りますが、なんでも、この適度に降る雨が木材のなかに含まれる余分な渋みや苦みの要素を洗い出してくれるそうです。上記の写真で地面に茶色い跡がついていますが、これこそ、木材に含まれる渋み成分などが雨で染み出したあとなんだとか。
さらにここの工場は山の中腹にある高台で、非常に風通しの良いエリアなので、雨が降っても問題なく乾燥することが可能とのこと。案内してくれた樽工場の方は、ここで木樽をつくることに意義があり、ここでしか得られない風味があることを力説されておりました。
組み上げられた木材にはそれぞれこのようなタグがつけられています。
木材の原料となる木は1本1本個性が違いますし、上述の通り、天候によっても木材の仕上がり具合は変わってきます。このタグを使いながら、各ロットの状態管理をしていくわけですね。
さて、お次はいよいよ工場内に入って組み上げ工程の見学です。
こちらの工場では、樽職人さんが金槌片手にトンテンカンカンと小気味良いリズムで、手作業により樽を組み上げていきます。
上段を組み上げた樽は一度火で炙って柔らかくし、
専用の機械も使いながら、金具できっちり隙間ができないように組み上げられていきます。
こちらの写真は、内側を焦がす工程。樽の内側を焼いて焦がすことで、香味成分を引き出すことができます。この焼き度合いはオーダーメイドで、クライアントからは細かい指定があるそうですが、何と驚くことに、こちらの樽工場で内側を焦がす工程ができる焼き手の職人は1名しかいないそうです。病欠で休まれたら一大事ですね(笑)
こちらが焼き終えた樽の様子。内側が黒く焦げているのが分かります。
その後は蓋をしたり、水漏れのチェックをしたり、表面を研磨してきれいに仕上げたりという工程があって、
仕上げに、コンピューター制御によるレーザーポインタで、蓋の部分へクライアント指定のロゴを印字。
こうして樽が仕上がり、クライアントの元に出荷されていきます。
今回、木樽について深く学ぶことで、実際のワインに香味に表れてくる木樽の影響というものをよりイメージしやすくなり、大変良い学びの機会となりました。
そして学んだあとは腹が減る、ということで、毎度おたのしみのランチタイム。
今回はミシュラン1つ星に輝く「Loiseau des Vignes(ロワゾ―・デ・ヴィーニュ)」に連れてきて頂きました。
こちらは何と言っても、壁一面にセットされたボトルから注がれるグラスワインの量が圧巻!こちらの写真はその一部なのですが、なんとこれらのボトル全62銘柄が、グラス1杯から楽しめるそうです。片っ端から飲みたい!ところでしたが、今回はジョゼフ・ドルーアン社の研修なので、ここはお行儀よく、ジョゼフ・ドルーアンの素晴らしいワインとお料理の組み合わせを検証。
特にメインで頂いた鴨肉と、ジョゼフ・ドルーアンの赤ワインが素晴らしい相性をみせてくれました。満足満足。
ということで、今回のコラムはここまで!
次回はいよいよ研修旅行記の最終回!どうぞお楽しみに。
<ワイン専門店Cote Dorの小湾喜智さんのコラム>
- 街のワイン屋さんからおいしい話「フランス研修旅行記 vol.02」
- 街のワイン屋さんからおいしい話「フランス研修旅行記 vol.01」
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- 街のワイン屋さんからおいしい話「ロゼワインといい関係」
この記事のキュレーター
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ワイン専門店 コートドール勤務
(社)日本ソムリエ協会認定 ソムリエ
(社)日本ソムリエ協会認定 SAKE DIPLOMA
S.S.I(日本酒サービス研究会)認定 唎酒師
FCAJ(日本フードコーディネーター協会)認定 フードコーディネーター3級