彩職賢美
2015年2月19日更新
[彩職賢美]みやび茶屋 仲元 店主の小島雅美さん|祖母のおはぎ 沖縄につなぐ
沖縄県沖縄市で和のスイーツを振る舞う、「みやび茶屋仲元」を営む小島雅美さん。看板メニューは祖母から伝わるレシピであんこを炊いたおはぎだ。店には小島さんの握るおはぎと朗らかな人柄を慕って多くの人が訪れる。「居場所になる」ことを土台に据え、人と人とをつなぎ、心がリセットできる空間を提供できるよう、きょうもおはぎに「魔法」をかける。
大好きな沖縄市の活性化にも
和のスイーツを提供するカフェ
「みやび茶屋 仲元」店主
小島 雅美さん
築50年余の戸建て住宅を利用した甘味処。店内には毎日3時間、手間暇かけて炊いたあんこの甘く優しい香りが漂う。「これは祖母の代から伝わるレシピ」と小島さんは目を細めた。
看板メニューのおはぎはじめ、ぜんざいやどら焼きなど、どれも素朴で懐かしい味わいで、祖母伝授のあんこが味の決め手になっている。
メニューはすべて手作り。小島さんは「おはぎを握るとき、おいしくなあれ、と魔法をかける」と満面の笑みを浮かべた。ティーアンダーのこもったおはぎと朗らかな人柄に根強いファンは少なくない。
埼玉県出身の小島さんが初めて沖縄を訪れたのは26年前。
アメリカの影響が色濃く残るコザの町にカルチャーショックを受け、その独特な雰囲気に心引かれた。が、それ以上に小島さんの心をつかんだのは人々の温かさだ。「受け止めてくれる懐の広さがあった」。
東京で忙しい日々を送る中、「沖縄が私の逃げ場。心落ち着けられる時間だった」。沖縄に通い、リセットしては日常に戻る、そんな暮らしを何年も繰り返すうちに、寝てもさめても沖縄のことを考えるほどの「沖縄好き」に。パートナーの矢野宏行さんを説得し、移住を決めたのは2004年のことだった。
おはぎを握る小島さん(左)と矢野さん。おはぎは注文を受けてから1個1個丁寧に握る。2人の間にはいつも笑顔と会話が絶えない
住まいは念願の沖縄市。しかし、仕事で那覇まで通う日々は心も体も消耗させていった。そんなとき、ふと子どものころ食べたあんこの甘さが恋しくなった。すぐに埼玉県に住む母親から祖母が残したレシピを聞き、おはぎを握った。久しぶりに食べた祖母の味。「こんなにおいしいものだったのかとびっくりした」と興奮気味に語る。
転機は現在の店舗の場所が貸しに出ていることを知ったとき。「私はかつてコザの人たちに受け止めてもらっていた。今度は私が居場所になりたい」。
思い立ったら即行動。「建物も気に入っていた。ここで何かやりたくて何も決まっていなかったけどまず借りた」と苦笑い。
模索を続ける中、矢野さんに提案されたのが「おはぎカフェ」。友人らの間でも評判となっていたおはぎは、「店をやるなら安心して食べられる手作りのものを、と考えていたし、昔から伝わる食文化を伝える上でもぴったりのメニューだった」そう。
10年に店舗をオープン。おはぎを初めて食べる人はもちろん外国人や家族連れ、小島さんのように県外から訪れ、心を充電して帰っていく人の姿も。中には客同士で新たな事業に挑戦したりと、新たなつながりも生まれた。「ここに来るとみんな良い表情になる。私もうれしい」と笑顔。
沖縄市の観光協会とも連携し、同市のゆるキャラの焼印を押したどら焼きの販売や添加物を使わない商品の開発を提案するなど地域を盛り上げる取り組みにも携わる。「沖縄市が大好き。初めて訪れた時のような活気を取り戻せるお手伝いがしたい」と意気込む。
愛する土地と人を元気にする小島さんのおはぎ。きょうも魔法の言葉をかけながら生み出されていく。
小島さんのハッピーの種
Q.休みの日は何をしていますか?
海に入れる季節は、シュノーケリングをしたり、普段は会えない友人らに会いに行ったりしています。
以前、那覇で仕事をしていたときは忙し過ぎてヘトヘトになる日々で休日はぐったりしていました。でも今は、しっかり休むことで気持ちをリフレッシュさせ、仕事に臨めるように心掛けています。
Q.沖縄で好きな場所は?
沖縄市にあるデイゴホテルです。観光で訪れていたころから宿泊していた場所で、オーナーはじめスタッフの皆さんとの触れ合いがあったからこそ今の私がいます。
とても温かい雰囲気で受け入れてくれたところで、私もここのような空間を作ることが目標です。
今の店の建物も大好き。家主夫妻は私たちにとって沖縄の両親です。屋号の「仲元」は家主さんの名前からいただきました。
みやび茶屋仲元
沖縄県沖縄市諸見里3-22-15
098-932-5747
営業/11時~18時(ランチタイム~14時30分)
<店舗情報はこちらから>
PROFILE
小島雅美(こじま・まさみ)1967年、埼玉県生まれ。沖縄に魅せられ、14年にわたり行き来をしたのち、2004年、パートナーの矢野宏行さんと共に移住。沖縄市内のホテルや那覇市内のIT会社などに勤務。10年、沖縄市に「みやび茶屋仲元」を開店、店主に。おはぎやどら焼きなど手作りのお菓子などを振る舞う傍ら、エイサーやイベントなどで同市のまちづくりにも関わる。
[今までの彩職賢美 一覧]
撮影/比嘉秀明・編集/相馬直子
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1157>
第1440号 2015年2月19日掲載
この記事のキュレーター
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- 相馬直子
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編集者
横浜市出身、沖縄で好きな場所は那覇市平和通り商店街周辺と名護から東村に向かう途中のやんばる。ブロッコリーのもこもこした森にはいつも癒されています。「週刊ほ〜むぷらざ」元担当。時々、防災の記事なども書かせていただいております。被災した人に寄り添い現状を伝えること、沖縄の防災力UPにつながること、その2点を記事で書いていければいいです!