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2015年4月2日更新

[彩職賢美]松本料理学院 学院長 松本嘉代子さん|伝統の食文化 次世代へ継承

戦後の沖縄の食を見つめ続け、今も第一線で活躍する料理研究家の松本嘉代子さん。1969年、那覇市で松本料理学院を設立し、家事や育児をしながら多くの生徒に家庭料理や行事、郷土料理を教えてきた。変化し続ける沖縄の食に危機感を持ち、伝統の食を次世代に継承する。「食べて、体で覚え、作る」ことを大切に、長寿の復活を目指し、歩み続ける。


 

長寿県の復活目指して

料理研究家として半世紀
松本料理学院 学院長

松本 嘉代子さん


「食に関する仕事に就いたのは、高校2年生の担任の『目標があれば何でもできる』との言葉が原点」と振り返る。本土への進学を持ちかけられたが家庭の経済的負担から悩んでいた時、その言葉に背中を押され、神奈川県の短期大学に進学、栄養学を学んだ。
1950年代の本土。「初めて目にする食材も多く、どこで手に入れればよいか分からなくて苦労したこともある。でも、食も文化も沖縄と全てが違い、刺激的でワクワクした」と昨日のことのように目を輝かせた。
卒業後には、料理教師の資格も取得。結婚を機に一度は現場から離れたが自宅を開放する形で松本料理学院を開いたのは69年のこと。「料理、生徒ともじっくり向き合う」のが約40年間、変わらない授業のスタイルだ。「料理に手間暇かけることは当たり前。丁寧な下ごしらえや調理は大変だけど、食材本来の味を生かす料理ができあがる」と松本さん。
教える際は生徒との会話も大事にする。何気ない会話の中から食材の方言名やその意味、昔の暮らしや風習などへ話が広がることもしばしば。「料理を軸に枝葉が広がっていくのも面白い」とにっこり。



琉球料理のクラスで生徒たちを前に作り方のデモンストレーションを行う松本さん(中央)。生徒からは活発な質問が飛び交う(編集部撮影)


本格的に琉球料理や行事料理を教えだしたのは40代になってから。琉球料理の第一人者、新島正子氏らとの親交がきっかけだ。
沖縄に住んでいれば当たり前にできていると思っていた琉球料理や行事料理の知識が漠然としたものだったことに気付かされた。「沖縄独自の食を守らなければ」という思いにかられた。
そこで伝統的な料理を作っていた料理人の具志カマド氏に師事、「食べて、体で覚え、作る」を実践。地域でも聞き取りを繰り返し、作り方をまとめた。「特に行事料理の作り方や盛り付け方法は地域や家庭で異なっていた。次世代に残すためには一般的な方法を幅広く教える必要もあった」と教室や講座などで積極的に指導を続ける。「現在、行事料理を簡素化する傾向にあるが、せめて一品だけでも手作りにして、その意味や作り方などを残してほしい」と呼びかける。
後進の育成から技術の伝承など、活動を続ける原動力には戦後、大きく様変わりした沖縄の食文化への危機感がある。「間違った料理名や調理法などがあふれてきた。今辞めたら途切れてしまう。先人たちが残した食文化を守り育て、若い世代に伝えたい」。もう1つは「長寿県を取り戻したい」という願い。「『クスイナラチクミソーリ(薬になりますように)』という言葉のように沖縄の食は医食同源。伝統的な食は県民の健康維持につながる」と尽力する。
松本さんは「楽しい会話をしながら食べるとおいしい。おいしいと感じたとき、消化液が出て、消化・吸収が良くなり、リッチな気分になる。食べることは生きること」。その生き方は料理を通して、私たちに進むべき道を示し続けている。


 

松本さんのハッピーの種

Q.料理を教えていてうれしい瞬間は?
でき上がった料理を生徒がおいしそうに食べているとき。どの顔も幸せな顔をしているんです。その笑顔を見るのが大好き! すてきな皆さんに囲まれて料理指導できるなんて恵まれた仕事です。

Q.忘れられない食は?
十三祝の時に食べたイナムドゥチです。戦後も間もない食べる物もままならない時代。友人の家で振る舞われたイナムドゥチには具がたくさん入っていて本当においしかった。
それに、フィリピンやタイなどで食べたドリアン、もう一度食べたいですね。
こうしたさまざまな食の経験が新しいことに挑戦することや柔軟に物事を受け止められることなどにつながっています。これまでの暮らしの中で養われたのでしょうね。。


松本料理学院
沖縄県那覇市泉崎1-9-13(地図
098-861-0763
http://matumotoryourigakuin.ti-da.net/​



PROFILE
松本嘉代子(まつもと・かよこ)1939年生まれ、本部町で育つ。55年相模女子短期大学部家政科卒業。69年、松本料理学院を設立、学院長に。99年厚生大臣表彰(栄養指導業務)受賞。2008年食生活文化賞(教育功労賞)受賞。12年、沖縄県文化功労賞を受賞。「沖縄の行事料理」「おきなわの味(共著)」「ゴーヤー料理60選」など著書も。現在も新聞、テレビ、料理講習会などで活躍中。



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撮影/比嘉秀明・編集/相馬直子
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1163>
第1446号 2015年4月2日掲載

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編集者
横浜市出身、沖縄で好きな場所は那覇市平和通り商店街周辺と名護から東村に向かう途中のやんばる。ブロッコリーのもこもこした森にはいつも癒されています。「週刊ほ〜むぷらざ」元担当。時々、防災の記事なども書かせていただいております。被災した人に寄り添い現状を伝えること、沖縄の防災力UPにつながること、その2点を記事で書いていければいいです!

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