出産・子育て
2025年9月4日更新
子どもが学校に行きたくないと言ったら?|広がる学びの場 選択肢さまざま
年々増えている不登校。不登校は特別なことではなく、誰にでも起こり得ることです。子どもが「学校に行きたくない」と言ったら、親はどう対応したらいい? 安心できる選択肢を探ります。

広がる学びの場 選択肢さまざま
2017年に「教育機会確保法」が施行され、学校以外にも学べる場が広がっています。当事者の体験、教育現場の工夫、フリースクールの現状などをQ&Aで紹介します。学校以外にも 相談先、学び場
子どもの学びを支えるために、さまざまなサポートがある。那覇市教育委員会の羽地誠さんに公的な相談先や学び場について聞いた。

はねじ・まこと
那覇市教育委員会教育相談課 指導主事
Q 不登校の現状は?
A 不登校は年々増えていて、那覇市では小学生の約4%、中学生の約10%が不登校です。その理由として1番多いのは「やる気が出ない」、次に「生活リズムの乱れ」、3番目に「学業不振」が挙げられています。特に夏休みなど長期の休み明けは、不登校が増える傾向があります。
Q 法律ができて、どう変わった?
A 2017年に「教育機会確保法」が施行され、不登校の子を国や自治体が支援すること、多様な学習活動を支援する方針が示されました。教育現場でも、研修を行いながら国の動きを確認してしっかり対応していきましょう、という認識が広まってきていて、各校で生徒が登校したくなる魅力ある学校づくりの工夫が進んでいます。また、「登校だけでなく社会的自立を目指す」という考え方も広がり、教育現場や保護者の意識に変化が生まれています。民間フリースクールを出席扱いにする学校も増えてきています。一方で、フリースクールの自由な取り組みを科目別に成績評価を付けることが難しく、今後の課題となっています。
「教育機会確保法」って?
不登校の子どもを国や自治体が支援することを明記。登校のみを目標とせず、休養の必要性を認め、多様な学習活動を支援する方針を掲げた。
Q どんな相談先・学びの場がある?
A 学校以外に、教育委員会や教育委員会教育相談課があり、心理士などが個別相談に対応しています。また、教室以外の学び場として「自立支援教室(空き教室で学校復帰を目指して、個別にサポート)」や「学習支援室(教育委員会が運営する学び場)」があり、どちらも出席扱いになります。子どもにとっても親にとっても、選択肢は多様な方がいい。関心のある方は、市町村の担当課にお問い合わせください。
学校に行けなかったあのころ
志堅原京子さん(47)は、小学3年生から7年間、学校に行けなくなった。不登校への思いや家族の向き合い方を聞いた。
しけんばる・きょうこ
メンタルコーチ、起業コーチ=写真は本人提供
Q 不登校は、どう始まった?
A 小学3年生から学校に行けなくなりました。行きたいのに、行こうとすると吐いてしまう。体重は16キロまで落ち、病院に通いMRI検査を受けても原因不明でした。今思うと、敏感で周囲の刺激を受けやすかったのかもしれません。数カ月適応指導教室に通いましたが、その後はずっと家にいました。母は苦しかったと思いますが、いつも私を励まし、勇気づけてくれました。
受験を控えた中学3年の時、なぜか突然嘔吐が止まり、「生き直そう」と決意。体と心が成長し、エネルギーがたまったのかなと思っています。定時制の高校に進学し、生徒会活動、中国への派遣留学など学校生活を謳歌(おうか)しました。その後外資系IT企業に就職し、独立。2人の子どもを育てています。
Q 子どもに「学校に行きたくない」と言われたら?
A 子どもが学校に行き渋る時があるのですが、「行きたくない」と自分の気持ちを伝えられたら休ませます。最初は葛藤もありましたが、大切なのは無理に学校に通わせることより生きる力だと思うようになりました。「家族と笑える、ご飯を食べられる、好きなことがある、の三つがあれば大丈夫」と考えています。不登校の子は苦しんでいる。だからこそ家族が受け止めて「愛している」と伝えることが支えになると感じています。
Q 子どもの将来が不安…。
A 今は通信制の高校や大学、AIを活用した学習方法など、選択肢が広がっています。子どもが大人になる頃には、想像を超える新しい仕事や生き方も増えているでしょう。なので、私は不登校だから将来が心配、とは感じていません。
そう思えるのは、不登校を経験した友人が大人になって結婚し、社会で活躍している姿を見てきたから。不登校は成長の過程で心や体を整える期間。その子のタイミングが来れば、きっと外の世界に踏み出せると信じています。
フリースクールという選択肢
不登校の子の選択肢の一つが、民間の学びの場「フリースクール」だ。沖縄フリースクール居場所等運営者連絡協議会の西山哲平代表に、フリースクールの現状を聞いた。
にしやま・てっぺい
小学校教員を経て、フリースクール珊瑚舎スコーレ職員
Q 不登校の背景は?
A 不登校の背景には、貧困や発達特性、人間関係、学習の遅れなど、さまざまな要因がからみあっています。子ども自身が気付いている場合もあれば、そうでないことも。協議会が行ったアンケートでは、不眠や頭痛、腹痛など体に不調が出ている子どもも少なくありません。
Q フリースクールとは?
A 学校に通えない、または学校以外で学びたい子どもたちに学習や居場所を提供する民間の教育施設です。公立校のように決まったカリキュラムはなく、スクールごとに特色があります。子どもの学ぶ場の一つですが、成績の評価が低くなりやすい、小学生の利用費は平均月額4.6万円で、公立小学校に比べて6.5倍と負担が大きいことが課題です。運営も厳しく、スタッフの多くが低賃金や無償で働いています。県外では補助金を出している自治体もあり、さまざまな子どもが利用できるよう、経済的な負担を減らす仕組みが求められています。
Q 不登校をどう受け止めたらいい?
A 子どもの声に耳を傾け、子どもの気持ちや体を優先してほしい。しばらく休んでエネルギーがたまると、少しずつ心が開いていくこともあります。また、その子に合った対応を、保護者だけでなく複数の大人で考えていくことが大切ですが、情報が行き届いていないと感じています。保護者が1人で抱え込んで孤立してしまわないよう、支える仕組みや関わりも必要です。

沖縄フリースクール居場所等運営者連絡協議会は県内28のフリースクールが加入。各団体の情報をHPで発信
毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」子どもが学校に行きたくないと言ったら?
第1986号 2025年09月04日紙面から掲載