彩職賢美リターンズ
2025年5月29日更新
松川郁子コーラスグループ 主宰 松川 郁子さん|魅せるコーラス 追い求め40年[彩職賢美リターンズ]
「コーラスを舞台表現の新しいジャンルにする」を理念に、県内外7団体のコーラスグループを主宰する松川郁子さん(80)。6月にはグループ40周年の記念フェスタを開催予定だ。振り付けなどの舞台演出やプログラムを工夫するなど、「魅せるコーラス」で、老若男女問わず楽しめる音楽の輪を広げる。
松川郁子コーラスグループ
主宰 松川 郁子さん
コーラスを革新
舞台表現で魅了
コーラス指導の始まりは、息子が通っていた識名小学校のお母さんコーラスです。それが「野ばらの会」となり、40周年を迎えました。当時は沖縄女子短期大学の非常勤講師として勤めながら、夜、公民館に集まって練習しました。
前回、彩職賢美に出たときから合唱団のグループは増え、県内外7団体、約50人が活動しています。40年続けている人もいますし、設立時は20代でお母さんでしたが、今では孫を連れて参加している人もいます。中には80代の団員もいます。みんな楽しそうに活動していることが、何よりうれしく思います。
活動では、「誰でも、楽しく歌えること」を大切にしています。その大きなきっかけを得たのは、ヨーロッパで目にした、動きながら楽しそうに歌うコーラスでした。当時、沖縄のコーラススタイルは、直立不動で長時間、歌うだけ。それでは聴衆にとって聞き続けることが難しいのではないかと感じていました。これではコーラスが一般に広がらない。そこで「コーラスを舞台表現の新しいジャンルにすること」を目指しました。
当初は、「コーラスは動くものではない。しっかり立って、楽譜を持って歌うもの」と批判されましたが、「世界では違う。沖縄もきっとそうなっていく」と信じて実践を続けました。今では、多くのコーラスが振り付けを取り入れるようになっています。
これまで、北海道やハワイでも公演を行い、沖縄の歌も届けてきました。北海道の公演では「20年沖縄に帰っていない」という観客が涙を流して喜んでくれました。コーラスを通じて沖縄の心を伝えることができたと感じています。
コーラス、振り付け考案 2年かけて公演を準備 |
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団員の強い要望に応え、「40周年記念フェスタ公演」を、2年前から企画、準備してきたという松川さん。そのうち1年半は歌をしっかり練習し、その後の半年間は、松川さんが歌に合わせて考案した振りを入れていった。 松川さんは後輩音楽家の育成や活動の場を創出するため、グループのピアノ伴奏や発声練習、ボイストレーナーの仕事を後輩に任せている。各グループはその指導者のもと練習をし、月に1、2回の全体練習で松川さんが全体を統括。本番に備えてきた。 「魅せるコーラス」を目指す松川さんは、コーラスの振り付けや選曲のほか、舞踊家、楽器演奏者などの舞台演出も担当。「この2年間は、公演のことで精いっぱいでした」と笑う。「団員みんな練習を頑張ってきたので、その成果を100%出して、目いっぱいの笑顔で、聴衆を楽しませてほしい」と期待を寄せた。 |
声が一つになる喜び
コーラスの魅力
コーラスの最大の魅力は「第三の声」だと思っています。これは、大勢の声が一つになった時に生まれる声のことです。みんなの声が必要で、メンバーが50人いたら50人の声が一つになって、新しい声を作ります。なるべく多くの人がいた方が、いい声になります。声を一致させるのは簡単ではありません。一度それを実現しかけたことがあり、涙が出るほどうれしかったです。
また、コーラスは健康にも良い影響があります。体を動かし、腹式呼吸で体内にたくさんの空気を出し入れできること、発声練習で声帯も鍛えられ、嚥下(えんげ)機能の維持・改善にも役立つとも言われています。
さらに、コーラスグループでの活動を通じて、新しい友人をつくることができるのも魅力の一つです。特に高齢になると、新しい知り合いを作ることは難しくなりがちですが、コーラスに参加することで、異なる地域から来た人々と出会えます。いろんな人との交流を通し、自分の視野を広げてもらいたいです。
40周年記念フェスタ
一体感を生み出す舞台
6月に開催される40周年記念フェスタでは、全7団体約50人の団員が集まります。
公演は2部構成で、第1部はコーラスの演奏、第2部は「歌声」形式で、唱歌や昭和歌謡、ロシア民謡などを観客と一緒に歌います。そのため、パンフレットに歌詞も掲載します。
舞台ではただ歌うだけではなく、振り付けやダンスを取り入れ、照明効果も活用した「魅せる」工夫が満載です。声楽専門家のグループによる「乾杯の歌」(オペラ「椿姫」より)は、男女の舞踊家とのコラボレーションです。
最後は沖縄の曲「童神」「琉球木遣歌(きやりうた)」で締めくくりますが、その前に舞踊家による「遊びションガネー」が披露されます。沖縄らしい色彩豊かなステージになると思います。
観客の皆さんにコーラスを楽しんでいただきたいということが一番の願いです。
夢は「第三の声」と
かっこいい高齢合唱団
夢は「第三の声」を実現すること。もう一つ、米国の「ヤングアットハート」というシニアコーラスグループをモデルに、高齢になっても活動的で魅力的なコーラスを目指しています。同グループは平均年齢80歳の合唱団で、車いすの方も一緒に全国ツアーをしていました。女性は高いヒールを履いてかっこよくて。私の理想はこの合唱団なんです。
年齢や身体的な制約にかかわらず、誰でもコーラスを楽しめることを伝えたいです。歌に自信がなくても、障がいがあっても、国籍が違ってもOK。さまざまな人が集まることで、より豊かな声が生まれるのがコーラスの魅力です。
これからも「魅せるコーラス」を追求し、コーラスの魅力を広げ、コーラスを通じて人々の心を一つにしていきたいと考えています。
松川 郁子さん
松川郁子コーラスグループ主宰
[プロフィル]
まつかわいくこ/1944年、沖縄市(旧コザ市)出身。琉球大学教育学部音楽科卒業。沖縄女子短期大学の非常勤講師として勤める。声楽専門家のグループをはじめ、7団体50人余りが在籍する「松川郁子コーラスグループ」を主宰。
2013年8月22日号に掲載
↓下の画像をクリックして「松川郁子コーラスグループ」のHPへ
撮影/比嘉秀明 聞き手/赤嶺初美(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美リターンズ<30>
第1972号 2025年05月29日掲載