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2024年3月7日更新
成年後見制度|法的にサポート 財産守る|やってみよう、終活⑫
認知症などで判断能力が不十分になると、預貯金の引き出しや不動産の売買などができなくなる。そんな時に利用されるのが、「成年後見制度」。概要や利用時の注意点を、司法書士の染矢弘芳さんに聞いた。
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類がある。「法定後見制度は、判断能力が低下した人の財産を守る人(法定成年後見人)を選び、法的に本人を支援する制度です」と染矢さん。制度を利用するには家庭裁判所に申し立て、法定成年後見人を家庭裁判所が選ぶ。「親族が選ばれることも多いが、専門家が選ばれることもある」。訴訟など争いがあれば弁護士、登記手続きなどがあれば司法書士など、ケースによって適した専門家が選ばれるという。選ばれた法定成年後見人は、本人の預金通帳などを管理し、収入や支出の記録をつけ、家庭裁判所に報告する。
「注意点は、家庭裁判所の許可を得るため時間がかかり、財産を守ることが第一なので売却や資産運用は認められないことがあること。認めるか否かは、本人のためになるかという観点で判断されると思われます」。また、法定成年後見人に専門家が選ばれると報酬が定期的に発生し、報酬は家庭裁判所が決める。
第三者がチェック
判断能力が低下する前に契約できるのが「任意後見制度」だ。あらかじめ公正証書によって契約を結び、本人が選んだ「任意後見人」が財産を守る。家庭裁判所で選ばれた任意後見監督人によるチェックが入る。「契約の内容に沿って不動産の処分や管理、資産運用などもできて自由度が高い」。注意点は、任意後見人と任意後見監督人には定期的に報酬が発生すること、契約が発動するのは本人の判断力が低下し(医師の診断書などで確認)、家庭裁判所において任意後見監督人が選任されてから、ということだ。
「法定後見制度は、判断能力が低下した後に本人の意思によるのではなく利用する制度で、任意後見制度は本人の意思であらかじめ備える転ばぬ先のつえ。どちらも第三者のチェックが入り、本人の財産を守れます」
成年後見制度の利用例
成年後見制度の利用に関する統計 出典:最高裁判所事務総局家庭局
そめや・ひろよしさん
染矢合同事務所。司法書士、行政書士。電話=098(836)3799
『週刊ほ〜むぷらざ』やってみよう、終活
第1909号・2024年3月7日掲載