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2023年5月4日更新
血圧130↑は黄色信号!|そろそろ本気で! 生活習慣病予防②
血圧は130(㎜Hg)/80(㎜Hg)を超えたら要注意。自覚症状のないまま血管が硬く狭くなり、脳梗塞や心筋梗塞などの疾患を招くおそれがあるって知ってましたか? 5月17日の「高血圧の日」にちなみ、高血圧のリスクや予防について専門家に聞きました。
柔軟な血管保つ食と運動がカギ
高血圧になると血流が悪くなり、脳梗塞などの疾患を招く。中村内科クリニックの中村義人院長は「肥満も高血圧の要因。塩分だけでなく糖質・脂質の取り過ぎに注意」と呼び掛ける。「リハビリデイサービス ポジリハ那覇店」の管理者で、健康運動指導士の金城智士さんは「運動で足の筋肉を鍛えると、血流も良くなる」とアドバイス。
ドクターから
中村義人さん|中村内科クリニック院長
なかむら・よしと
九州大学を卒業後、与那原中央病院をはじめ県内外の病院に勤務。2018年に中村内科クリニックを与那原町で開院。日本高血圧学会認定専門医・指導医
高血圧になって高い圧力が血管にかかり続けると、血管が硬く狭くなる(動脈硬化)。中村内科クリニックの中村義人院長は「動脈硬化が進むと血流が悪くなって、脳梗塞や心筋梗塞など重い疾患を招き、腎臓など体中の臓器にも悪い影響を与える」と説明する。
血圧の数値(単位は㎜Hg)は心臓が収縮した時の「上の血圧」、心臓が拡張した時の「下の血圧」の2種類がある。正常な血圧は上が120未満、下が80未満とされている。「血圧が130/80を超えたら要注意。血管が硬くなると血圧はさらに上昇する。その高い圧によって血管内部が傷つくと、そこに悪玉コレステロールなどが入り込み動脈硬化がさらに進む。血管自体は傷みを感じないので自覚症状がないまま、ある日突然、命をおびやかす状態になるおそれもある」と注意を呼び掛ける。
動脈硬化が始まると血管の弾力性がなくなり、高い圧で血管内が傷つくと、悪玉コレステロールなどが入り込んで血管が狭くなる
肥満で血圧が上昇
高血圧になりやすいのは遺伝的な要因もあるが、食べ過ぎや運動不足、お酒の飲み過ぎ、喫煙などの生活習慣も大きな要因、と中村院長は指摘。塩分を多く取ると血圧を上げる作用が働くので、食べ過ぎはそれだけ塩分を多く取ることになる。
血圧の上昇には、食べ過ぎや運動不足による肥満も大きく関わりがある。中村院長は「肥満によってインスリンが血中に増え過ぎると血圧の上昇につながる。また、過剰なインスリンによって動脈硬化自体も進む可能性がある」と説明する。インスリンが増え過ぎるのは、肥満で過剰に増えた内臓脂肪の働きによるもの。インスリンの効きが悪くなり、その分、体が多く作り出すためだという。
「最近の研究では、肥満によって肥大化した脂肪細胞が動脈硬化を促し、さらなる血圧上昇につながることも分かってきた。食事は塩分だけでなく、肥満にならないために糖質・脂質の取り過ぎにも注意」と中村院長。
運動で動脈硬化を抑制
前述の生活習慣に加え、血管が老化して硬くなるのも血圧が上がる原因。中村院長は「運動をすると血管をやわらかくする働きがあるNO(一酸化窒素)の生成が体内で活発になる。ウオーキングなどの有酸素運動を1日30分、週5回程度続けることが望ましい」とアドバイス。ほかにも、運動で汗をかくことで塩分を排出し、血流が良くなり、自律神経が整って血管を広げるなど血圧を下げる効果が期待できるという。
毎日の晩酌も血圧を上昇させる一因。中村院長は「高血圧の予防には減塩や節酒などの食事の管理と、運動を並行して行い、適正な体重を維持することが大切」と呼び掛ける。
中村院長に聞く高血圧に関する疑問
Q1 そもそも血圧って何?
A 血液が血管の壁を押すときの圧力
血圧とは、心臓から全身に送り出された血液が血管内の壁を押すときの圧力のこと。血圧の値は、心臓から押し出される血液の量と、血管のやわらかさや収縮の程度で決まる。中村院長は「血管がやわらかいと、血液が血管の壁を押す力を逃がして血圧の上昇を抑える」と説明する。
Q2 塩分は1日にどれくらいとってよい?
A 6~8gが目安
1日に取る塩分の目安は6gとされる。中村院長は「夏場や、外で体を動かす仕事をしている人はもう少し増やして8gほどでもよいが、控える工夫は必要。お昼に塩分の高い食事を取ったら夕飯は塩分を控える。塩分の多い料理を取る頻度が多い人は、頻度を減らすなどして調整しましょう」と説明する。沖縄でよく食べられる天ぷらなどの揚げ物は油自体は味があまりないので味付けのため塩分が多くなりがち。「ポーク」(ランチョンミート)などの加工食品や、沖縄そばなどの麵類も塩分が高めだ。
Q3 運動を30分する時間が取りにくい
A 1日トータルで30分になればOK
働き盛り世代だと運動のためにまとまった時間をとるのがなかなか難しいこともあるだろう。中村院長は「例えば1日に3分間の運動を10回、10分間の運動を3回というようにトータルで30分運動しても効果がある。例えば、お昼の休憩時に職場の周囲を散歩したり、1時間ごとに少し休憩を入れて職場内をぐるりと歩いたり、トイレに行く時も上の階のトイレを使うなど、生活の中でちょっとずつ運動する習慣を取り入れるといい。私も院内を移動する時に少し遠回りをしたり、休憩中に院内を巡って歩いたりすることを心掛けている」とアドバイス。
健康運動指導士から
金城智士さん|リハビリデイサービス ポジリハ
きんじょう・さとし 「リハビリデイサービスポジリハ那覇店」の管理者で、社会福祉士。外間パーソナルトレーニングジムでもトレーナーとして活動。健康運動指導士
心臓から体中に送られた血液は、体の筋肉の働きでまた心臓に送り返される。運動不足によって特に足の筋肉が衰えると、血流が悪くなる。高血圧を予防するための運動のポイントについて、リハビリに特化した通所介護事業所「リハビリデイサービス ポジリハ那覇店」の管理者で、健康運動指導士の金城智士さんは「ウオーキングなどの有酸素運動に加えて、スクワットなどで太ももやふくらはぎなど足の筋肉を鍛え、ストレッチでほぐすと血流の改善につながる」と説明する。
しかし、長時間の運動やハードな運動は逆に体を痛める原因になり、継続するのも難しい。金城さんは「1日30分程度のウオーキングがおすすめ。朝夕に分けて行っても同様の効果が得られる。運動中でも会話ができる、すこし息が弾む程度にとどめることが肝心。また、現在高血圧の治療中の人はどのくらいの運動が妥当か主治医に相談を」とアドバイス。
隙間時間にでき、運動を習慣づけるための手始めとして、金城さんにかかとの上げ下げでふくらはぎを鍛える筋トレと、ふくらはぎのストレッチを教えてもらった。「デスクワークなどで動かない状態が続くと血流が悪くなるので、午前と午後の休憩中に1セットずつやるのもおすすめ」と呼び掛ける。
ふくらはぎのストレッチ
机などに手をついて、図のように左右の足を前後に開き、少し前方に体重をのせてながら、左のふくらはぎを30秒間伸ばす。足を伸ばす際は、ふくらはぎが痛気持ちいところでキープする。同様に反対のふくらはぎを伸ばす。
ポイント かかとは地面にしっかりつけ、反対につまさきは足の指を上げるようにして地面から離す。つまさきは斜めに向かないようまっすぐ。
ふくらはぎを鍛える「かかと上げ」
1セット15~20回、かかとを上げ下げする(机やいすに手をついてもいい)。姿勢はまっすぐ、お尻が突き出たりしないようにして立つ。
① ②
ポイント①
かかとを上げる際は、5本の足の指にしっかり体重がかかるように意識する。
ポイント②
かかとを下げた際に、いったんつまさきを上げる動作を加えるとすねの筋肉も鍛えられる
毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざ
「第1865号 2023年5月4日紙面から掲載」