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2022年7月21日更新

[沖縄]一緒にSDGs!×働き方|障がい者と共に働く

SDGsで多様性への関心が高まっている今、「障がいのある人と共に働く」ことについて考えてみませんか。障がい者雇用を進める県内企業や現状を紹介します。

貴重な働き手 会社の「戦力」



冷凍食品の加工を行う(有)仲松ミート(うるま市)は、従業員25人中障がい者5人と、障がい者雇用を積極的に進めている。障がい者雇用に関わる仲本和美総務・経理統括部長は「彼らは会社にとって欠かせない戦力」と話す。働く障がい者の声や会社の工夫を聞いた。

◇         ◇           ◇

入社4年目の仲本瑞希さん(29)は、品出しや商品の味付けなどを担当。知的障がいがある。「責任感を持って、分からないことがあったら確認しながら仕事をしている。一人でやるより、みんなで一緒にやっていけるのが楽しい」と話す。仲本和美統括部長は「働く意欲が高くて責任感が強い。リーダー的な存在」と頼りにしている。

友寄裕貴さん(22)は入社5年目。知的障がいがある。「学校の実習で訪問し、ここで働きたいと思った」と話す。冷凍インゲンのカットやゴボウ巻きといった作業からスタートし、現在は機械の洗浄も任されている。「最初のころはもっとテキパキ作業をするようにと指導されることが多かった。今日の作業のノルマを達成できると、満足感がある」と話す。仲本部長は「社内で機械の洗浄ができるのは2人だけ。私にはできない」と笑う。「彼らの実直に働く姿勢は、周囲にもいい影響を与えています」


環境整え生産性高まる

20年前から特別支援学校の実習先として積極的に生徒を受け入れてきた同社。7年前に環境が整い、障がい者を雇用した。「実習で接していたので、みんなすんなり受け入れられた」と仲本部長。

雇用前に作業を細分化して書き出し、任せられる仕事を洗い出し、以前から課題だったスケジュール管理も行った。また、従業員に自分の仕事の自己評価をしてもらった。「強みや弱みがあると分かると、相手を受け入れやすくなるかなと思ったんです。これらの取り組みによって作業の効率化が図れて生産性が高まった」。

現在、5人の障がい者を雇っている同社。障がいによって特性があるため、それぞれに合う仕事を任せたり、対応することを心がけている。例えば、自閉症スペクトラムで集団作業が苦手な人には、1人でやる作業を任せている。落ち着きがなかった従業員には聞き取りをし、音の刺激が原因と知り、仕事中のイヤホンを許可した。「特性も、できる・できないも、やってみないと分からない。最初は短時間の勤務から始めて、どんな状況でどう反応するかを見極め、配属先を決めて慣れてもらいます」と仲本部長。時間帯によってサポートする人を決め、従業員の負担が集中しないように配慮している。

工夫は必要だが、「1時間同じ作業に黙々と取り組むなど、健常者よりも障がい者の方が得意な仕事がある。会社には高齢の女性も多く、重い荷物の受け入れや運び出しなど力仕事をしてくれる男手はありがたい。福祉の精神ではなく戦力として雇っている。彼らがいないと困ります」と社に欠かせない存在となっている。


適材適所で力を発揮

県中小企業家同友会で、障がい者雇用を進める健障者委員会の委員長を務める仲本部長。「労働人口が減っていく中、障がい者は貴重な人材。障がい者雇用と聞くと面倒と考えがちだが、社内整備は業務改善のきっかけにも。当たり前に仕事ができる人が多いので、難しく考えないで。相談窓口はたくさんあるし、雇用している会社にも話を聞いてほしい」と話した。



仕事内容にひかれて、働きたいと思った(友寄さん)


みんなと協力して仕事できるのがいい(仲本さん)


彼らは戦力。いないと困る(仲本部長)


 企業が求める人材って? 

「採用で重視するのは、①コミュニケーション力②素直な姿勢③体力、の三つ」と仲本部長。就労継続支援B型事業所(※4面に説明)から同社へ就職した従業員は、コミュニケーション力が高く活躍しているという。「スキルより基本的なことが大切。脱いだ靴をそろえる人は、仕事で使った物をきちんと片付けられる。日々の積み重ねが仕事につながる」と話す。

 

障がい者雇用のイロハ

 ①障がい者雇用は義務? 

国は「障害者雇用促進法」で企業や地方公共団体へ、一定の割合で障がい者雇用の義務を定めている。2021年3月から、民間企業の法定雇用率(雇用すべき障がい者の割合)は、2.3%になった。従業員43.5人以上の企業は、障がい者を一人以上雇う義務がある。常用労働者が100人を超える企業で法定雇用率を達成していない場合、不足1人あたり月額5万円の納付金を支払わなくてはいけない。

障害者雇用促進法は1960年に制定され、当初は、対象は身体障がい者のみで努力義務だった。76年に法定義務となり、98年には知的障がい者、2018年から精神障がい者も対象となった。

労働局によると、県内の障がい者の法定雇用率は、約4割の企業が未達成でそのうち雇用0人が約6割。沖縄労働局職業安定部職業対策課の稲田裕子さんは「雇用したい気持ちはあるがどうしたらいいか分からない、という企業が多いのではないか。人手不足の中、障がい者は貴重な働き手。働く人が増えるほど、障がい者は自分もできると思えるし、企業はイメージがわいて雇用が進む。助成制度やサポートする支援機関もあるので、積極的に活用してほしい」と呼びかけた。


 ②県内の現状は 

2021年度のハローワークにおける障がい者の就職件数は1532件(下図の棒グラフ)。そのうち従業員49人以下の企業が43.7%、50~299人が31.5%、300人以上が24.8%となっている。沖縄労働局の稲田さんは「コロナの影響で一時的に落ち込んだが、少しずつ持ち直してきている。状況が変わり、就職件数が増えることを期待している」と話す。

 グラフ:ハローワークにおける障がい者の新規求職申込件数・就職件数 



7月28日に障がい者の就労フェア

公益財団法人ヤマト福祉財団は障がい者雇用を促すため、7月28日(木)に宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで「おしごと発見フェア」を開く。担当の大江美幸シニアマネージャーは「沖縄で障がい者施設の職員向けに開いた研修会の分科会が発端になった。障がい者に就労の場を、という現場の声から生まれたフェア」と説明する。

同財団はクロネコヤマト宅急便の生みの親である小倉昌男氏が障がい者の自立と社会参加の支援を目的に、個人資産を寄付して1993年に創設。全国で助成事業やフォーラムなどを開催している。早川雅人常務理事は「20年前から障がい者雇用に関わっているが、法律や意識の変化など取り巻く環境は良くなっている。障がいのある子の親にとって、10年、20年先はもっと良くなる、という希望の持てる取り組みになれば」と話す。

同フェアは、コンベンションセンター会議棟で午前10時~午後3時まで。合同企業説明会、職業体験、相談会を行う。

 

「働く」「雇う」をサポート​

働きたい障がい者や雇用企業をサポートする支援機関や福祉サービス、相談先を紹介する。

 ③就労系の福祉サービス 

就労系の障がい福祉サービスを紹介する。

●就労移行支援事業所
 仕事に関する知識や能力の向上を目指した訓練、職場実習や就職後の定着に関する支援をし、障がい者の一般企業への就職をサポートする。利用期間は基本的に2年。

●就労継続支援A型事業所
 雇用契約を結んで働く。2020年の県内の平均賃金は月額7万1951円。

●就労継続支援B型事業所
 企業などへの就労が難しい障がい者が、雇用契約を結ばずに働く。2020年の県内の平均工賃は月額1万5638円。

●就労定着支援事業所
 就労移行支援などを利用して一般企業などで働く障がい者が仕事を続けられるよう、関係者との連絡調整を行ったり、就労に関する課題について相談に乗ったりする。

 障がい者の雇用関連の関係機関 

ナカポツセンターは、障がい者や事業主に対して、就業面や生活面での相談・支援を行う。沖縄障害者職業センターは障がい者雇用の専門的機関として、障がい者と事業主を支援している。


参考:厚生労働省「就労系障害福祉サービスの概要」、厚生労働省「令和2年度工賃(賃金)の実績について」、沖縄県「障害のある方の雇用に取り組んでみませんか?」

取材/栄野川里奈子
『週刊ほ〜むぷらざ』一緒にSDGs!×働き方 障がい者と共に働く
第1824号・2022年7月21日掲載

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栄野川里奈子

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おいしいものに目がないガチマヤー(くいしんぼう)。2016年に国際中医薬膳師の資格をとりました。おいしく健康に!が日々のテーマ。

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