彩職賢美リターンズ
2022年3月17日更新
[沖縄・輝く女性を紹介]彩職賢美リターンズ|株式会社茉莉花(まつりか)代表取締役の新屋吾由美(あゆみ)さん|アロマケアで医療と地域支え
彩職賢美に出た人が再登場する「彩職賢美リターンズ」。看護師の経験を生かし、メディカルアロマセラピーで多くの人の心と体を癒やしている新屋吾由美さん(57)。「これからはセルフメディケーションの時代。アロマを通して、すべての人が健康で、生きがいを持って人生を楽しむお手伝いがしたい」。自身のサロンに加え、県内の医療機関で、延べ6千人以上をケア。医療レベルのアロマセラピーの普及と人材育成に力を注ぐ。
株式会社茉莉花
代表取締役
新屋 吾由美さん
自分たちの手で心と体を守る
芳香植物から抽出された精油を使って、心身のバランスを整えるアロマセラピー。ナイチンゲールも、クリミア戦争で傷ついた兵士にラベンダーを用いて、心と傷を癒やしたそうです。
香りのリラックス効果はもちろん、精油の成分を皮膚から吸収させて体内に取り込むアロマトリートメントは、免疫系や内分泌系、自律神経に働きかけ、人間が持っている自然治癒力を引き出し高めます。日々の健康サポートにアロマは有効。家庭や地域で健康を支え合う手助けになればと、学びの場の提供に力を入れています。
病気で出合ったアロマ 一人ひとりに寄り添う
看護師として横浜の病院に勤務していた頃、私自身が病気になったのをきっかけに出合ったのがアロマセラピー。セルフケアの一環として始めたのですが、先が見えない治療で抱える不安やストレスを和らげるのに役に立ちました。
「アロマを取り入れることで、もっと患者さんの心と体に寄り添ったケアができるのでは」。そう考え、アロマの本場、英国認定のセラピスト養成校へ通い、資格を取得。中医師から人体の経絡についても学び、ツボやリンパの流れも意識したトリートメントの方法を研究しました。勤めていた病院で、看護師の立場から具体的な取り入れ方を提案。患者さんにもスタッフにも喜ばれました。
その後、沖縄に戻り、統合医療クリニックの立ち上げに関わった後、独立。「幅広い分野にアロマセラピーを浸透させたい」という思いで、2003年にアロマルーム茉莉花(まつりか)を開業しました。来店されるお客さまは仕事を抱える女性や医療従事者が中心。服薬中や術後の方、妊産婦、メンタル疾患など医療的配慮が必要な方も多く一人一人の状況やお悩みに寄り添い、丁寧にお話を聞き、日常生活での正しい取り入れ方もお伝えします。
サロンと並行し、心療内科や総合病院の産婦人科での出張トリートメントを行い、講師として病院看護師や看護学生などにアロマの具体的な取り入れ方も指導。活動の幅が広がったころ、この「彩職賢美」で取り上げていただきました。取材を機に、週刊ほーむぷらざでメディカルアロマを紹介する連載も執筆。自分や家族の病気の予防、健康維持のために自宅で手軽にアロマを役立ていただく方法をお伝えする機会になりました。
スクール事業に力 コロナで新たな展開
11年には法人化し医療従事者向けに茉莉花認定アロマセラピストを養成するスクール事業も開始。人材育成にも力を入れ、15年にはサロンを中城村に移転しました。
医療機関での出張アロマトリートメントは患者さん、妊産婦さんに好評で、18年間で延べ6千人以上をケアしました。多い時は1週間で30人を施術。サロンでゆっくりお客さまと向き合う時間が取れず、もどかしさを感じるように。サロンとの両立を考えた末、病院出張を卒業。サロンを拠点に医療レベルのアロマセラピーの普及と育成に力を入れようと決めました。
そんな中、新型コロナの流行。人との交流、触れ合いが制限され、肌に直接触れるアロマトリートメントは必要とされないのではないかと悩みました。でも、施術の希望や、身近な人をケアするために学びたいというご要望が増え、「やっていいんだ」と思えるように。アロマセラピーを通して、健康づくりを地域でサポートするつながりを作りたいと、21年に「沖縄メディカルアロマセラピー融和研究会(沖縄マスト)」を立ち上げました。
個人・地域へ波及 持続可能な健康を
沖縄マストでは、初心者からプロまでを対象にアロマの基礎からトリートメントの手技までを学べるセミナーを定期的に開催。介護や出産を控えた方のご家族向けに、リモートでケア方法のレクチャーも行っています。
医療従事者だけだったスクールも一般の方の受講も可能に。一般の方を教え始めて、体の構造を知っていないと、私の説明を聞いても分かりづらく、質問すらできないことに気づかされ、カリキュラムに解剖学をプラス。テキストを作るため私も一から学び直しました。真剣に学ぶ受講生を見て、プロにならなくても、仕事でなくてもアロマが生かせることを実感。大きなやりがいを感じています。
家から出られなくても学び続けられるよう、セミナーもスクールも対面、オンラインの組み合わせで受講できる仕組みを整えました。コロナ禍で、自分たちで心身の健康を守る「セルフメディケーション」の時代への移行が早まったと感じます。アロマセラピーの考え方と技術を伝え、広めること。それが私の役目なのかなと思っています。
実技指導も感染対策を徹底
スクール事業では、認定アロマセラピスト養成も行う。通常はモデルにじかに施術してもらい指導するが、コロナ禍では難しく「受講生が安心して実技学習が行えるように」と、新屋さんが考え抜いて見いだした方法が、リアルなマネキンを使うことだった。「ボディー用のマネキンは、腕の関節が人と同じように動きます。脚のパーツは触れた感触がリアル。プラスチックやシリコンでできているので、1回ごとにアルコール消毒できるから衛生的」と新屋さん。どんな状況でも学びを止めない工夫で、家庭や地域で支えるセラピストの育成を目指す。
新屋さんのハッピーの種
Q.日々の楽しみ、癒やしは?
愛犬のココ=写真左=とセナ=同右=と過ごす時間です。スクールのレッスンは自宅のリビングで行うのですが、講義など、低い声で真剣な話をしているときは、隣の部屋で静かにしているココ。でも、笑い声が聞こえたり、少し和んだ雰囲気を感じ取ると「自分も混ぜて~」といわんばかりに、ワンワンとアピールしてくる、甘えん坊です。セナは、好き好きアピールがすごい子。日中ほとんど寝ていて、夕食どきになると「自分の時間だー」と騒ぎ出します。先代犬が亡くなった後、新たに迎え入れたこの2匹。かわいくて仕方ないです。
■アロマルーム茉莉花 http://www.aromatsurika.com
プロフィル
しんや・あゆみ
1964年生まれ、南大東島生まれ。看護学校を卒業後、神奈川県で看護師として勤務。病気を機にアロマセラピーと出合い、英国IFA認定アロマセラピストの資格を取得する。01年に帰郷し、統合医療クリニック勤務を経て、03年にアロマルーム茉莉花を設立。21年、沖縄メディカルアロマセラピー融和研究会(沖縄マスト)を設立。看護師、救急救命士。
初登場の紙面(2007年4月19日号に掲載)
撮影/比嘉秀明 文/比嘉千賀子(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美リターンズ<17>
第1806号 2022年3月17日掲載