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2021年12月23日更新

[沖縄・輝く女性を紹介]彩職賢美リターンズ|NPO法人フードバンクセカンドハーベスト沖縄 代表理事 奥平 智子さん|フードバンクは相互扶助の心

彩職賢美に出た人が再登場する「彩職賢美リターンズ」。企業や家庭から寄贈された食品を、福祉施設や生活困窮者へ無償で提供するフードバンクに取り組むNPO法人フードバンクセカンドハーベスト沖縄代表理事の奥平智子さん(48)。活動を続けて15年。コロナ禍で食料支援が増え、再び注目が集まる中、「相互扶助の精神を大切に、食べもので人と地域をつなぎたい」と話す。


NPO法人フードバンクセカンドハーベスト沖縄 
代表理事  奥平 智子さん


コロナ禍で増加
食料支援に尽力


食品会社や家庭から寄贈された食品を福祉施設や生活困窮者へ無償で提供するアメリカ発祥の取り組み「フードバンク」。沖縄でも取り組みたいと任意団体を設立したのが2007年。当時は、専業主婦だった私が一人で立ち上げた沖縄初の活動ということで注目され、08年に「彩職賢美」にも取り上げてもらいました。多くの人に支えてもらいながら、今年、15周年を迎え、活動も今では広く知られるようになりましたが、コロナ禍で食料支援の必要性が増し、再びクローズアップされています。

当団体への食品受け取り希望世帯数は、コロナ流行前に比べ約3倍に増加しました。「コロナウイルス感染症の濃厚接触者になった」、「コロナ禍の影響で失業した」、「電気や水道を止められてしまった」という世帯からの依頼が増えています。

県内でも食料支援を行う団体が増え、食品を受け取れる場所や機会が広がるなど、社会全体の食料支援への関心が深まってきた印象はありますが、十分な量を配布するには至っておらず、より一層食品を確保していく必要があると痛感しています。

コロナ禍の協働から新しい気付きと発見

以前は企業や個人から寄贈された食品だけを配布していましたが、それだけではバランスが良くない。足りないお米やおかずなどは、寄付金などで当団体が購入して足しています。

コロナ禍で、他の団体と連携した新しい取り組みも始めました。2020年7月から来年2月まで、認定NPO法人セカンドハーベスト・ジャパンとの協同事業として取り組む「うさがみそーれープロジェクト」では、インターネットの活用など、これまでにない仕組みに挑戦しています。難しさもありますが、スタッフや協力者のおかげでなんとか乗り越え、今後の活動へのヒントとなる発見や気付きもありました。

私たちがお渡ししてきた食品は、受け取った家庭にとって決して十分とはいえません。食品を通して人とつながり、相談するところがあるというのを知ってもらったり、心のぬくもりが伝われば、癒やしになるかもしれない。ただそれだけです。貧困対策や解決につながるものではありません。


初心忘れず胸に刻む「相互扶助」の精神

コロナ禍で、フードバンクの活動がさらに注目を集める中、皆さんにも改めて考えてほしいことがあります。それは、食品ロスや貧困問題など社会課題の解決にフードバンクが大きく貢献するのは難しいということです。

団体設立当時、初めて新聞に掲載されて最初にいただいた読者からの反響の電話は、「活動を今すぐやめなさい」というお叱りでした。「人はみんな同じ。食べ物を『あげる』とか、上から下へ見下すように人を見たら絶対にダメ。あたなのために伝えたかった」と。すごくびっくりしましたが、最初に言われて良かったと心から思っています。以来、ずっと肝に銘じ、最近は何度も思い返しています。
 11月には多くの食品が保管できる豊見城市の事務所兼倉庫に移転。地域の企業や学校が食品を寄贈してくれるなど新しいつながりも生まれました。先日も近くに住む女性が5歳の子どもを連れ、食品の寄贈に来てくれました。「子どもに見てほしいと思った」と話してくれてうれしかったです。

約7年前から、いなりを寄贈してくれている「オイナリアン」の吉里時浩代表は、常温で長期間保存できる、パウダー化したおからの提供を進めながら、おからのレシピ開発コンテストも企画されており、今後の食品利用にも期待しています。

また、約4千人のスタッフがいるというトランスコスモス(株)は、お米やそうめんを購入し、寄贈してくれました。コロナ禍で中止になった従業員の交流会の予算を購入費に充てたそうです。さらに、今後もできる範囲で支援を継続したいと話してくださいました。

基金設立し団体の基盤強化も

当団体の次の課題は活動の継続。その中、活動を理解し、支援してくださる企業が増えているのは、すごく心強い。基金も設立し=上囲み、団体の基盤強化も図っていきたいと思っています。

私が作った団体ですが、もはや私のものではなく社会のもの。社会や行政、みんなで考えないといけない。本当は食品ロスがなくなり、貧困問題もなければ、この活動はいらない。だから、活動の継続を目指してはいけないのではないかという思いもあります。ただ、今は必要な活動であることは間違いない。食べ物で人がつながりあえる、その一助を担っていきたいです。
 
事務所兼倉庫を豊見城市に移転

フードバンクセカンドハーベスト沖縄は、11月に豊見城市へ移転。以前は食料を保管するスペースが狭いことが課題だったが、新しい事務所兼倉庫は5倍の広さがあり、冷凍庫、冷蔵庫、車両も整備された。「その分、経費も掛かる。安定した運営のため、団体の基盤強化が必要」と、公益社団法人「みらいファンド沖縄」で基金を設置。同基金は寄付控除が受けられ、寄付した側は税金が控除される。より活発な寄付につながればと、奥平さんも期待を寄せる。

また、同団体から個人への食料提供は同団体から直接行っていないため、「窓口となる市町村役所や社会福祉協議会などに問い合わせてほしい」と呼び掛ける。ボランティアスタッフも募集中。

■フードバンク沖縄 電話098(851)3400

新しい事務所兼倉庫で食品を仕分けるスタッフら



プロフィル
おくひら・さとこ
1973年、浦添市出身。2007年、任意団体としてフードバンク沖縄を設立。12年、団体をNPO法人格にし、代表理事に就任。21年11月、豊見城市に事務所兼倉庫を移転。家庭や企業から寄贈された食品を生活困窮者へ無償で提供している。


初登場の紙面(2008年7月24日号に掲載)


撮影/比嘉秀明 文/赤嶺初美(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美リターンズ<15>
第1794号 2021年12月23日掲載

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