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2021年9月30日更新
[沖縄]10月は臓器移植普及推進月間|家族で話そう意思表示
誰かが臓器を提供することによって、別の誰かの命が救われる臓器移植。あらかじめ意思表示をしておくことで、救われる命が増える可能性がある。普段は話しづらいテーマを、この機会に家族と話してみませんか。
保険証や免許証で思いを示そう
腎臓移植を待っている人が県内でも200人以上いる。普段から私たちができることについて、沖縄県移植コーディネーターの仲間貴享さんと勝連知治さんは「意思表示をして、その思いを家族で話してほしい」と呼び掛ける。意思表示のPR動画を制作した山城竹識さんは「沖縄らしい演出で県民に響くよう工夫した」と力を込める。Q 臓器移植の現状は?
A 県内では移植希望者のわずか2%しか受けられない
【仲間さん】 臓器移植とは、他の人の健康な臓器を移植して機能を回復させる医療です。通常の医療とは違い、臓器提供者(ドナー)やそのご家族はもとより、広く社会の理解と支援があってはじめて成り立ちます。
ちなみに県内では、1987年から2021年9月22日までに84人からの臓器提供があります。現在は県内で200人以上の方が献腎移植を希望していますが、年間で約2%の人しか移植を受けられず、平均で14年半も待っているのが現状です。
このため、国や県では、毎年10月を「臓器移植普及推進月間」と定め、移植医療への理解促進と普及、および啓発につながる取り組みをグリーンリボンキャンペーンと名付けて取り組んでいます。今年、県では「幅広い年代の県民の皆さんに臓器移植について考えるきっかけになってほしい」との思いを込めて、初めてショートムービーを制作しました=下囲み関連。
同キャンペーンを通して、「臓器を提供してもいいという人」と「移植を受けたい人」が結ばれ、よりたくさんの命が救われる社会の実現を目指しています。
Q 意思表示したら必ず臓器提供するの?
A そうではありません。意思表示はあくまで個人の思いを記すだけ
【仲間さん】 「提供する」「提供しない」という選択は、一人一人の自由であり、どちらも尊重されるべきです。その選択について誰かが「間違っている」と指摘するものであってはいけません。私たちができる1番身近なことは「提供する・しない」にかかわらず、意思表示を行うこと。県内で意思表示している人はまだまだ少ないのが現状です。また、私たちの誰もがいつ移植を必要とするかは分かりません。より多くの人が意思表示をしておくことで、移植を必要とする人を救える可能性が高まります。
意思表示は、身近にある健康保険証や運転免許証、マイナンバーカードなどに記すことができます。いくつかの質問に答えて署名するだけで、誰でも簡単にできますので、ぜひ一度内容を確認し、意思表示をしてほしいと思います。
仲間貴享さん
なかま・たかゆき/公益財団法人沖縄県保健医療福祉事業団臓器移植コーディネーター
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Q 意思表示の内容は家族にも伝えるべき?
A 家族に話しておくと万が一の際に家族が判断しやすい
【勝連さん】 「臓器を提供する・しない」という最後の判断は家族が行います。「提供したくない」と意思表示していれば、もちろん本人のその思いが最優先され、提供されることはありません。しかし、「提供したい」と思っていても家族が承諾しなければ、本人のその思いはかなわない仕組みになっています。
自身の思いを尊重してもらうには、「臓器提供についてどう考えているか」を日頃から家族に伝えておくことが必要。臓器提供の意思表示に関しては口頭意思も有効とされているため、健康保険証などにサインをすることに抵抗がある場合は、家族に伝えておくのもOKです。
臓器提供は、心停止後と脳死(脳全体の働きがなく、人工呼吸器などの助けが必要でどんな治療を行っても回復することがなく、いつかは心停止する)と判定された後に行うことができます。いずれも最善の治療を尽くしたものの、残念ながら回復の見込みがないと判断された後の行為です。家族は、残された時間の中でどうしたいのか決める必要があります。臓器提供はその選択肢の一つです。
このような話題は話づらいかもしれません。しかし、自分の考えを家族に伝えておけば、家族は判断を迫られた際に「日頃からそう言っていたよね」「本人らしいよね」と、決めやすく、精神的な負担を軽減できるのです。この紙面がきっかけとなり、臓器提供の意思表示について話す家庭が増えることを願っています。
勝連知治さん
かつれん・ともはる/公益財団法人沖縄県保健医療福祉事業団臓器移植コーディネーター
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県民に響くよう
演出に「沖縄らしさ」
山城竹識さん
グリーンリボンキャンペーンの一環として、沖縄県保健医療福祉事業団から依頼を受け、ショートムービー「あなたのこと」で監督を務めました。
まずは私が臓器移植について理解しなければと思い、仲間さんと勝連さんにお願いして数日かけて学び、理解を深めて作った思い入れのある作品です。
難しかったのは、「『提供する・しない』はどちらも正解である」というメッセージをどう伝えるかということ。沖縄の家庭で実際に行われたという家族の会話や、沖縄ならではの行事を絡め、より県民の皆さんにこのテーマを身近に感じてもらえるよう工夫しました。
まずは、多くの人に見てもらいたい。そして、このムービーが家族と臓器移植について考え、意思表示のきっかけになればうれしいです。
CHECK!
動画の視聴はこちらから! ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
社会の雰囲気作りはメディアの役割
仲宗根朝治さん
株式会社FMよみたん代表取締役社長
ほーむぷらざでは、10月7日発行号から10月28日発行号の4週にわたり、FMよみたんのラジオパーソナリティーに臓器提供について聞いたインタビューを紹介する。同局の仲宗根朝治社長は、「各パーソナリティーには担当するラジオ番組内でも自身の考えを話してもらう。異なる媒体が力を合わせて情報を発信することで1人でも多くの人に考える機会を作れる」と話す。また、「現在は臓器提供の意思表示について日頃から家族や友人と話す雰囲気が社会の中にできあがっていない。身近な話題として話せる社会を作るの
は、メディアの役割の一つ」と語った。
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『週刊ほ〜むぷらざ』
第1782号 2021年9月30日掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 比嘉知可乃
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新人プランナー(企画・編集)
1990年生まれ、うるま市出身。365日ダイエット中。
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