彩職賢美
2021年9月16日更新
[沖縄・輝く女性を紹介]彩職賢美|ライター、プロデューサーの普天間伊織さん|人、モノの魅力 多角的にPR
子どもの頃から書くことが得意で、ライターになりました。10年ほど前からはプロデューサーとして、企業などのプロモーションに関わり、演劇の企画・制作も手掛けています。人やモノの魅力を伝えることが、全ての仕事の共通点。さまざまな人、モノをつなげ、広げていくことで、人材や事業を育てるお手伝いをしていきたい。
好きなものが永久に語れる
ライター、プロデューサー
普天間 伊織 さん
農産物から社会問題まで 新たな表現、議論の場作る
鮮やかな青色が特徴で「SNS映えする」と、若い世代を中心に注目されているハーブの一種、バタフライピー。現在、普天間さんがプロデュースする商品の一つだ。タイなど、海外産が主流だが、「実は沖縄に昔から自生していた植物。野ざらしでもたくましく育つので、生産農家も増えてきています。マンゴーやシークヮーサーに次ぐ、新たな県産品になれると考えています」
バタフライピーのプロデュースでは、一次産業の農業から加工、サービス・販売までをトータルでつなげ、産業の可能性を広げる六次産業の視点でプロモーションを展開。「バタフライピーは花を摘んだ後、乾燥させ粉末として保管が可能。採れ過ぎても無駄にならず、生産者の労力的負担も少ないので障がい者雇用にも生かせる」。県の障がい者雇用促進情報誌「まじゅんワーク」の編集に携わってきた経験から生まれた発想だ。
県内の大型ショッピングセンターを皮切りに、7月からカフェスタイルのバタフライピー専門店を県内各所に期間限定で出店。「プロモーション計画の下絵を描きスケジュールを組み、必要なツールをクリエーターと一緒に制作し発信、PRするのが私の役割」。商品のパッケージデザインから店舗ディスプレー、カフェスタッフの手配までトータルで担う。
カフェでは、県内企業と連携し、バタフライピー粉末を使った青いスイーツも提供する。「コロナ禍で集客や売り上げが落ち込む観光産業や農家を盛り立てたい」と、力を込める。
子どもの頃から作文が得意で、友人たちの代わりに読書感想文を書いたことも。「得意なことで、楽しく仕事ができたら」と、ライターを目指し、高校卒業後、東京の専門学校に進学した。東京では「セブンティーン」「ニコラ」などのファッション誌でアシスタントとして経験を積み、小説も執筆した。「ファッション誌の現場は厳しく、よく怒鳴られましたが、業界での振る舞い方や、ビジネスマナーも身につけさせてもらえたので、とてもありがたかった」
23歳で沖縄に戻り、ライターとして、ファッション・ビューティー系をはじめ、音楽、タウン情報、観光、スポーツと幅広いジャンルで執筆する。「表現の仕方、伝え方一つで広まり方も変わるので、言葉の使い方を特に大切にしています」
企業からセールスプロモーションの相談が増えたことを機に、2010年から広報や商品開発のプロデュースを手掛ける。17年からは演劇の企画・制作にも携わり不登校やネグレクト、ジェンダーなど、格差社会をテーマにした作品作りに取り組む。
「10代、20代が経験を積める場を作りたい」と、出演者は若手が中心。脚本も手掛ける。「父が社会問題や国際情勢に関心が高く、学生時代からよく親子でディスカッションしていた。演劇を通して、若い世代が社会で起こっている出来事を話したり、考えるきっかけになれば」
コロナ禍で舞台公演が難しい状況が続く。「エンタメ界は今、転換期に立っています。10年先まで見据えて、取り組みを考えていく必要がある」。舞台のオンライン配信など、ITやSNSを活用した新しい手法にも積極的にトライ。演者や舞台関係者の夢を応援するため、収益化の手法を模索する。「常に新しいものを探して、アンテナを張っています」
来年から、大手芸能事務所が沖縄に開校する芸能養成所で人材育成や発掘にも携わる。「手掛ける仕事、全てに共通するのは、人やモノの魅力を伝えること。自分の好きなモノ、大切にしていることを永久に語り続ける思いで伝えることで、沖縄の活性化、新しい人材や事業が育つお手伝いができれば」と、新たな挑戦を楽しむ。
10代、20代が中心の舞台 個性発揮できる環境づくり
普天間さんはこれまで、10本以上の演劇を企画・制作する。今年7月には、格差と差別をテーマに、生きにくい世の中で政府と制度に立ち向かう若者たちを描いたミュージカル「ライオットキング」を上演した=写真。
どの作品も、出演者は10代から20代が中心。「若手が主体なので、つたない部分もありますが、一生懸命やっている熱意がお客さまに伝わって、感動を与えていると思っています」と普天間さん。
若手が伸び伸びと力を発揮できるよう、「稽古場では、明るい雰囲気を作るように心がけています。なるべくキャスト同士で話し合えることを大切にしているので、あまり口出しし過ぎないようにもしています」。コロナ以前は、稽古場でキャストの誕生日祝いなども行っていたそう。
コロナ禍でリアルな舞台公演が難しい状況が続く中、演劇活動を続けていけるのか、キャストからは不安や戸惑いの声もあるという。自身がバタフライピーのプロデュースを手掛けていることから、希望者には、出店するカフェでアルバイトできる環境も整えた。
「稽古や出演がある日は優先的にお休み。本業を持ちながら第二の仕事を築く、パラレルキャリアが、新しい働き方として必要」。異なるジャンルを結びつけることで、新たな相乗効果も生まれている(写真は普天間さん提供)。
■問い合わせ先 https://www.instagram.com/iorifutenma/
普天間さんのハッピーの種
Q.日々の癒やし、エネルギーの源は?
好きなアイドルです。新しもの好きで、Kポップは20年前からハマっているのですが、今は中国のCポップにも注目しています。
今、一番の推しは、韓国のアイドルグループONF(オネノプ)のワイアット君。1995年生まれで、私よりひと回りも年下なのですが、人間性がとても素晴らしく、リーダーシップや人との接し方、ものの考え方のお手本にしています。
アイドル自身がSNSを発信する時代になり、発信を通してその人の人柄や考え方がリアルに伝わるようになりました。人間性が良くないと、社会でもエンタメ界でも生き残れないなと感じています。
プロフィル
ふてんま・いおり
1983年生まれ、中城村出身。バンタンデザイン研究所卒業。専門学校時代に、ファッション誌の編集アシスタントとして経験を積み、沖縄に戻り、ライターとしてさまざまな媒体で執筆。2010年からプロデューサーとして、企業等のセールスプロモーションに携わるほか、17年からは舞台プロデューサーとしても活躍する。オフィス・ダッフォ代表、株式会社バタフライピー研究所取締役。
[今までの彩職賢美 一覧]
撮影/比嘉秀明 文/比嘉千賀子(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1388>
第1780号 2021年9月16日掲載