2020年12月17日更新
不妊治療のイマ⑥|治療や検査、どう選ぶ
文・大嶺美幸(不妊症看護認定看護師)
不妊治療中、どう選択していいか分からない、という声をよく聞きます。選択肢を決める時には、信頼できる情報を入手し、理解し、選択をすることが大切です。
信頼できる情報入手して
不妊治療では、選択する場面が多く出てきます。治療や検査を受けるか受けないか、ステップアップをするか、続けるか、やめるか。そうした選択をする際に、「ヘルスリテラシー」という考え方を知っておくといいと思います。ヘルスリテラシーとは、信頼できる情報(産科婦人科学会や、生殖医学会のホームページがお薦めです)を入手、理解し、それが自分にとってどうかを評価して選択をし、行動をすることです。「ヘルスリテラシー 健康を決める力」というサイトをご参照ください。
その際に、一人で抱え込むと苦しくなってしまうので、サポートする医療機関や施設を探したり、周囲とつながってサポートを得ていただけるといいと思います。
医療者へ思いを伝える
カップルの価値観や希望は治療の経過や状況によって変わるため、医療者とのコミュニケーションでは、その時々において、医療者へカップルの思いをはっきり伝えていく努力も求められます。何を大切に考えているのか、何に困っているのかを知ると、医療者は、具体的な提案の準備ができます。そこで、より治療について具体性が増し、見通しが得られます。
大切にしたいことは何か
例えば性交障害の場合、現時点では不妊治療をしないという選択や、性交障害(EDなど)の治療を希望するのか、性交を介さない人工授精方法でいきたいのか。男性不妊の際は、精査・治療を希望するのか、現状で対応可能な人工授精をするのかなど、カップルによって、大切にしたい価値観や思いは異なります。
多様な性・多様な生き方、その人らしい人生があります。治療する・しない・やめる、どういった選択であっても尊重され、保障される社会であってほしいと思います。
不妊治療の主な治療法
不妊症検査で原因が分かる場合と分からない場合があり、状況に応じて最適な治療法を選択して行う。選択した治療法で妊娠が得られない場合、必要に応じて高度な治療へステップアップすることが勧められる。
【タイミング法】 排卵日を予測して性交のタイミングを合わせる治療。超音波検査による卵胞の計測やホルモン採血検査などで排卵日を予測し、妊娠率の高い性交の時期を伝える。
【排卵誘発法】 内服薬や注射薬によって卵巣を刺激して排卵を起こさせる方法。通常、排卵のない人や排卵が起こりにくい人に行うが、タイミング法や人工授精の妊娠率を高めるため、あるいは体外受精などの生殖補助医療の際に使用される。
【腹腔鏡検査】 卵管周囲の癒着の改善や、子宮鏡手術で妊娠の妨げになるような子宮内のポリープや子宮筋腫を切除できる。卵管鏡手術では、閉塞している卵管を開通させ、自然妊娠する可能性を高められる。
【人工授精】 対象は、精子に問題がある男性不妊症、性交障害や原因不明な場合など。採取した精液から運動している成熟精子を洗浄・回収し、排卵の時期に合わせて細いチューブを用いて子宮内に注入し、妊娠を試みる。
【生殖補助医療】 他の治療によって妊娠が得られない難治性不妊症が対象。体外受精と顕微授精がある。いずれも腟から卵巣に針を刺して卵子を取り出し(採卵)、体外で精子と受精させて、後日受精卵を子宮内に返す(胚移植)。顕微授精は、卵子の中に直接一つの精子を注入して受精させる。
※日本生殖医学会ホームページ参照
おおみね・みゆき。不妊症看護認定看護師。日本不妊カウンセリング学会不妊カウンセラー。友愛医療センター不妊外来に在勤。
毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざ
「第1741号 2020年12月17日紙面から掲載」