(株)GEMINI(ジェミニ)広告担当・グラフィックデザイナーの比嘉直子さん|働く環境整え 良い家を皆に[彩職賢美]|fun okinawa~ほーむぷらざ~

沖縄で暮らす・食べる
遊ぶ・キレイになる。
fun okinawa 〜ほーむぷらざ〜

沖縄の魅力|スマイリー矯正歯科

もっと美しく

彩職賢美

2025年9月18日更新

(株)GEMINI(ジェミニ)広告担当・グラフィックデザイナーの比嘉直子さん|働く環境整え 良い家を皆に[彩職賢美]

義父の経営する一級建築士事務所・総合建設業で働く比嘉直子さん。沖縄の若い世代に「良い家を手の届く価格で提供する」という会社の理念に共感し、広告・ブランディング全般を一手に担う。4人の子育ても仕事も、環境を整えることで「心身のバランスが取れ、私らしく生きていける」と笑顔を見せる。

社の理念をデザインで支え貢献

(株)GEMINI
広告担当・グラフィックデザイナー
比嘉直子さん

 

音の理解にハンデ
仕事も育児も両立

 4 人の子育てに専念するため、10年間は専業主婦だった比嘉直子さん(46)。幼児期に「保育園に預けられるのが嫌で毎日泣いていた」経験からだった。

そんな中、大手印刷会社での経験を買われ、義父である社長からロゴ制作を頼まれた。「会社の理念を何度も聞くうち、手伝わないといけないかもという気持ちになった」と入社のきっかけを語る。

入社時は「社の封筒やパンフレットが一つもない状態」で、分譲マンション事業の展開に合わせ、比嘉さんはブランディングを一から手掛けた。しかし建築業界は未経験。会議中に出る言葉が全く分からない。本を買い、建築用語を調べ、必死で知識を習得した。

同社は「外内断熱遮音工法」という建築技術に力を注ぐ。寒冷地で使われることの多い工法だが、「沖縄にマッチする」と導入。実際に比嘉さん家族も3年前から同社の物件に住んでおり、「赤ちゃんの泣き声もペットの鳴き声も全く気にならない。とても静かで遮熱性があり、冷房もよく効く」と効果を実感している。型枠と断熱を同時施工するなど、作業の効率化で大幅なコスト削減も実現。さらにパンフレット作成やインテリアコーディネートなど、広告関連業務も外注せず、ほとんどを比嘉さんが担当している。「その分を内装設備費に充てているので、お客さまが即決、または他社物件をぐるっと回って戻ってくるパターンがとても多いんですよ」と胸を張る。

パンフレットを作成するとき、「住む側の視点」を重視している。「もし私が買う側だったら、きれいなパースよりも設備について知りたい」と、スペースを大きく使って説明。間取りイラストは実際の生活をイメージしやすいよう家具を配置して描く。「以前は私自身、図面を見てもよくイメージできなかった。自分ならここまで描かれている方が生活が想像できる」と細部までこだわる。
 
●  ●    ●  ●  

主にパソコン作業が多く、基本的に在宅勤務で子育てと仕事を両立している。在宅勤務は「静かな環境で仕事ができる」のも大きな利点だ。幼いころから聴力は正常だが、音声を言葉として認識するのが苦手だった。小学生のころ先生が言っていることが分からず、忘れ物をすることがあった。「聞き取れなくてもう一度教えてくださいと言っても、ちゃんと聞いていないと責められた」。大人になって自分で調べて「聴覚情報処理障がい」という障がいがあることを知り、自分もそうじゃないかと自覚した。障がいについての認知度はまだ低い。「障がいに気付かず、悩んでいる人も多いのでは」と話す。

いまだ治療法がなく、周囲の理解と協力に支えられている。比嘉さんの場合は電話対応が困難で、やりとりは基本的にメールで行う。「出社が必要なとき、職場ではラジオの音を小さくしたり、ゆっくり話してくれたりと、配慮してくれる」と、環境を整えてくれる会社に感謝する。

「沖縄の若い世代も良い家を持てるようにしたい。得意なことでそのお手伝いができることが喜び」と比嘉さん。「専業主婦時代と比べ、社会と関わりながら仕事している方が、心身のバランスが取れて穏やかでやる気が出る」と語る。「子どもたちも、前はすぐ『お母さん』と言ってきたのに、問題があってもきょうだいで解決しようとするんです。その姿が新鮮でいい」と目を細める。

今後はコンピューター利用設計システム(CAD)やインテリアの資格取得など、専門外の分野にも挑戦していきたいと考えている比嘉さん。「もっと役に立てる人になりたい」と凜(りん)とした表情で語る。これからの活躍がますます楽しみだ。


 思いを形に込めたロゴデザイン 

事務所入り口にあるロゴは比嘉さんが作成した

会社のロゴデザインは、「社名の『GEMINI』が双子座を意味することから着想を得た」と比嘉さん。

会社を立ち上げた義父である社長といとこの専務、2人で頑張っていく気持ちと、外内断熱遮音工法の「両側から挟む構造」を重ね合わせたデザインという。色は社長の情熱を表す赤と、専務のバランス感覚を表す緑で調和を表現。「社長の話を200~300時間は聞いた」というほど理念を深く理解して制作したロゴは、ある医師から「開院するとき自分も頼みたいから教えてほしい」と問い合わせが来るほど評価された。比嘉さんも「大きな自信になった」と喜ぶ。

■株式会社GEMINI
 電話=098・988・5228

 親子で始めた音楽の時間 

週1回、末娘とバイオリン教室へ。(写真は2枚とも比嘉さん提供)

仕事の息抜きとして、2年前から一番下の子どもと一緒にバイオリンを習っている。「子どもがバイオリンを習いたがっている」と周りに話していたところ、友人から公民館での教室を紹介された。

「お母さんも一緒にやった方が長く続く」という方針で、子ども料金のみで親も参加できる。月謝は3千円、楽器も先生が中古を調整して低価格で提供してくれる。

レッスンは好きな曲を先生が譜面にしてくれたもので練習するスタイル。「親も子も楽しみながらできるのがいい」と話す。「仕事終わりの30~40分、子どもとの練習時間がとてもリフレッシュになる」と声を弾ませる。

 「聴覚情報処理障害(APD)」とは 
聴力検査に異常がなくても、耳から入った音を脳で処理して理解することに困難がある状態。音は聞こえているものの言葉の内容が分かりにくく、聞き間違いも生じやすいのが特徴。騒がしい場所や複数人の会話、早口の場面では理解がさらに難しくなる。背景には脳の特性や外傷、発達障がいの併存など多様な要因が関わるとされ、学習や仕事の障壁となる場合もある。治療法はまだ確立されていない。周囲の理解が得にくく本人が深く悩むこともあり、静かな環境や話し方の工夫など周りの配慮が欠かせない。

比嘉さんは幼少期から症状があったが、耳鼻科で検査を受けても「聴覚に異常なし」と診断されていた。「自分なりに調べてやっとAPDのことを知り、自分もそうじゃないかと自覚した」と語る。認知度は全国的にもまだ低いという。

 
●  ●    ●  ●  



プロフィル/ひが・なおこ
1979年生まれ。大分県出身。21歳で沖縄県内の大手印刷会社に入社。グラフィックデザイナーとして10年間勤務。30歳で第1子出産を機に退職し、10年間、専業主婦として4人の子育てに専念。2019年、40歳で義父が経営する一級建築士事務所・総合建設業「(株)GEMINI」に入社。広告・ブランディング全般を担当し、在宅勤務で子育てと仕事を両立している。趣味はバイオリン。



今までの彩職賢美 一覧
撮影/比嘉秀明 取材/赤嶺初美(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1450>
第1988号 2025年09月18日掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
funokinawa編集部

これまでに書いた記事:4772

沖縄の大人女子を応援します。

TOPへ戻る