介護
2025年9月18日更新
足元から始める介護予防|正しい靴選びのポイント|つらくない介護を⑮
「介護保険制度は維持できるのか」。そんな危機感の高まりと共に介護予防の重要性が叫ばれている。「介護予防は足元から」と話す予防フットケア専門家の新城馨さんに話を聞いた。

足元から始める介護予防
正しい靴選びのポイント
足トラブルは悪循環
認知機能にも影響

◆新城馨さん/
「介護タクシー&予防フットケアかおり」代表。介護タクシー事業、フットケアとフットヘルパーの育成に力を注ぐ
-足のケアが介護予防で注目される理由は?
共同通信社のアンケートで介護保険制度の維持に危機感を持つ自治体が多いことが分かりました。沖縄では2050年に75歳以上の人口が約28万人に達し、全国でも突出した増加率となる見込みで、現在、健康状態の悪化から重度介護が必要な高齢者も増加しています。そのような状況下で、介護予防の推進が重視され、足のトラブルを防ぎ、歩行機能を維持することが健康寿命を延ばす鍵になると注目されています。
-足のトラブルはどのような過程で起こるのですか?
足の変形は人生の節目で起こりやすいとされます。高校や大学で運動をやめたり、成人後、歩行機会が減少したり、退職後に運動習慣がないと筋力は衰えます。筋力低下で体を支えきれなくなると、立つ姿勢、座る姿勢の癖で体はゆがんできます。そんな体を支えることが靴の役割ですが、間違った靴選びや履き方は巻き爪や外反母趾(ぼし)などのトラブルを発生させてしまいます。
足に痛みがあると、すり足になるなど歩行が困難になり、つまずきや転倒のリスクが高まります。転倒で骨折すると、入院や寝たきりになって認知機能が低下するという悪循環に陥りやすいんです。
-いつまでも歩ける足をつくるために大切なこととは?
「体をほぐす」「爪のケアをする」「靴を正しく履く」の三つです。体ほぐしは、在宅でできる簡単なものがあり=下イラスト、週1回、疲れたときに行うだけでも十分です。

ストレッチボードにはだしで立ち、首、背骨、腰と曲げながら、骨と骨を一つずつ離していくイメージでゆっくりと前屈し、今度は腰からゆっくり起き上がり、最後に頭を上げる。お尻は突き出さないこと。1日に1回、もしくは疲れたときに、3セット行う。
・足指のグーパー運動
足指でグーをするように曲げる。その際、足の甲の骨がはっきり見えるくらいまでしっかり曲げ、パーのときは、中指などが浮かないよう、全ての指を床につけたままでしっかりと広げる
足は建物で言えば基礎と同じ。足首の中央にある距骨という骨が人間のバランスを取る耐震機能の役割を果たしています。足には片足28本の骨があり、これらが複合的に動いて歩行を支えています。複雑な足の動きを適切にサポートするために、正しい靴を選び、正しく履くこと=下イラスト、巻き爪などのトラブルを予防する爪の切り方、育て方が重要です。すり足の原因となる足が上がらない状態や前かがみの姿勢も、体をしっかり立てて歩くことで改善され、認知機能の維持にもつながります。

かかとがしっかりしている靴を選び、正しく履くことで、足の28本の骨を適切に支え、足のトラブルを防ぎ、歩行機能の維持につながる
-今後、力を注ぎたいことは?
靴を履いた時のちゃんとした感覚を子どものころから覚えさせることが重要です。そのため、正しい靴の履き方を保育士に広め、園でチェックできるようにしたい。そこで、子どもたちにも伝えることが、将来の介護予防につながると考えています。
取材/赤嶺初美(ライター)
毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざ
「第1988号 2025年09月18日紙面から掲載」