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COLUMN

ぎだちゃん

2018年5月3日更新

行き先の決め手|ぱん工房おとなりや

#読谷村1
読谷村瀬名波にある「ぱん工房おとなりや」。10年目を迎え、ますます地元から愛されるパン屋さんへ。最近は観光で訪れた人が立ち寄ることも増えたとか。南部や北部からのドライブを考えるなら、おとなりやを目的地に読谷に遊びに来てみてはいかが。

ソフトからハードまで 種類豊富


10年目を迎えた読谷村瀬名波の「パン工房 おとなりや」。
天然酵母を使ったふわふわのソフト系を中心に、ハード系のパンまで豊富にそろう。

オーナーの齊藤隆之さん(35)に話を聞いた。
天然酵母系のパンを扱っているので 頑固なこだわりがあるのかと思いきや、「パンは多くの方においしく食べていただけるように作っています」とさらり。店頭には“インスタ映え”すると話題の、見た目にもかわいい「ゆきだるま」や総菜パンの数々、紅芋を生かしてマーブル模様になっている食パンなどキャッチーな商品もならぶ。また、時には地元で取れた無農薬の野菜が並ぶことも。





粉の香りを楽しむために強めの焼きにしているクロワッサン


言葉を続け、「...でも店でかける音楽と音量には頑固ですよ」と笑う。齊藤さんは大のブラックミュージック好き。初めて店を訪れた時に驚いた空間に対して大きすぎるほどのスピーカー、パン棚の上に見つけた円筒形のうつくしい木製のスピーカー、出入り口のドアの上に飾ってあるマイルスデイビスのLP。すべての答えをもらった気がした。



店名の「おとなりや」には、みんなの「お隣り(身近に)」という願いと、音を楽しむ「音鳴り」というダブルミーニングがある。意味を重ねる辺りはブラックミュージックの歌詞の様。
 


おいしさの秘訣 鍵はバランス


とは言うものの、マーガリン不使用やグルテンフリーのパン、アレルギー対応、オーガニック野菜を使ったベジタリアン仕様など、店頭にならぶパンから素材に気をつけていることがよく伝わってくる。

小麦粉はポストハーベストを避けるために九州産を使い、5月中頃には期間限定で沖縄県産の無農薬小麦を使ったパンも登場する。



そのきっかけは自身のお子さんが2歳を迎えたときに、小麦粉・乳製品・卵のアレルギーがあったこと。「自分の焼いたパンを食べてもらいたい」という思いから、当たり前だったパン作りを素材から見直すことに。

「おいしければいいのではなく、アレルギーのある子どもも安心して食べられるようにしたい」と真剣な眼差し。そして「安全を優先し過ぎて味気なくならないように、安全だからといって価格が高くならないように、味も価格も含めてバランスを大切」にしている。

買いやすい様に、売り場への工夫も。
商品のポップを色分けしたり、特徴や材料も明記し、分かりやすい。



10歳になるお子さんのアレルギーは、「今ではよくなりました」と安堵の表情。
「今でもお店にはアレルギーがあるお子さんを持つお母さんたちが買いに来ます。これからも安心して買ってもらえる様にパンを提供して行きます」とにっこり。

 

10年目を迎えて これからの目標



10年という節目を迎え、「あこがれのアーティストを招いて音楽イベントを開くことも一つの目標」と茶目っ気たっぷりな表情。真剣でいて、どこか遊び心があります。パン作りにつながるものを見たようでした。

今後の目標について尋ねた。
「昔はベーカリー・ワールドカップであるフランスで開催されるクープ・デュ・モンドに出たいと思ったことも」と職人としての高嶺を目指していたこともあるそうだ。
しかし、今は「オープン当時に小学生だった子が、10年経って成人し、久しぶりにお店に来てくれた時に、その年月の重みを感じました。また来てくれたことが嬉しくて。これからも一人一人の記憶に残るパンを作り続けて行きたいですね」と話した。





〜番外編〜
インタビュー記事をまとめたくても、ユニークな経歴があり、パンを軸にまとめようと書く中では、こぼれてしまったけれど、どうしても残したくて、、、と、番外編を綴ります。


齊藤さんは自分と同年代ということもあり、パン職人である生き方への興味があった。どんな人生観を持っているのだろうと話を聞くと、「普通」であることの型にはまらない姿が見えて来た。

今でこそバックパッカーとか民泊とか、さまざまな旅の方法が一般化したが、1980年代に沖縄の恩納村で「ユースホステル」を営む両親のもとで育つ。その時代にこの仕事を選んだご両親の価値観を考えると、きっと子育てへの考え方も生き方への考え方も、前衛的だったのではないだろうか、と感じた。
高校は読谷高校へ進学し、ラグビー部に所属。この頃からスティービーワンダーを聴き始める。部活を引退後、プロボクサーになろう2年ほどボクシングジムに通ったこともあるそうだ。その傍ら、ずっと続けていたパン作り。北海道へ渡り、旭川、札幌、千歳などその土地土地で暮らしながら7年間を過ごし、自身のお店「ぱん工房おとなりや」をオープンさせるにあたって沖縄へ戻る。

ブラックミュージックには自由への憧れ、束縛への批判を隠さないメッセージ性から、反社会的なものというレッテルを貼られることもある。しかし、その音楽を歌っている一人一人の置かれていたその時代、社会情勢から見ていくと、現代に生きる自分たちの日常への考え方やものごとの受け取り方のヒントがあるように思う。

ブラックミュージックが好きな齊藤さんは、「バランスを取る」という言葉で表現していたが、その日常が凝り固まらないように生きているように思えた。
沖縄という複雑な政治的な状況、開発という形で失われていく土地の形や自然、そのなかで何が正しいのか、何が間違っているのか。それは、時に壮大に、また目の前のピンポイントな状況にフォーカスしながら、自分にできることを精一杯取り組んでいくこと。
沖縄県での無農薬小麦の栽培への取り組みや、おとなりやのパンを子ども食堂に提供しているのもその一つだろう。子どもたちの未来への意識も、決して飾らない。
これからも、おいしいパンを待ってます!

ぎだちゃん

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