[彩職賢美リターンズ]薬膳琉花 代表講師、栄養士、国際中医薬膳師の宮國由紀江さん|日々の食事をクスイムンに|fun okinawa~ほーむぷらざ~

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彩職賢美リターンズ

2019年11月21日更新

[彩職賢美リターンズ]薬膳琉花 代表講師、栄養士、国際中医薬膳師の宮國由紀江さん|日々の食事をクスイムンに

彩職賢美に出た人が再登場する「彩職賢美リターンズ」。3回目は、薬膳教室「薬膳琉花」代表講師の宮國由紀江さん(49)。東京で薬膳を学んで気付いたのは、沖縄の食の素晴らしさだった。「沖縄にはクスイムン(医食同源)の考え方が根付いていて、琉球料理の食材の組み合わせは、薬膳的にも理にかなっている。健康長寿を取り戻すには、日々の食事から」。シンガポールでの講演、本の出版など、活動の幅は広がっている。

薬膳琉花 代表講師
栄養士
国際中医薬膳師
宮國由紀江 
さん

ガン患者に関わって痛感
食べることは生きること


「食べることは生きること」。今に通じる私の原点は、大学卒業後の病院勤務で生まれました。末期ガンや難病指定の患者さんに関わり、毎朝様子を見に行って一人一人の好みに合わせて味付けを調整。「ここまでしなくても」と先輩に注意されることもあったけれど、とにかく夢中で。おいしいものを食べた時の「あぁ~」という声を聞けるのが、何よりもうれしかった。

食べることは楽しみになり、生きる意欲になる。患者さんがご飯を食べられると、それが自信になり、食べる量が増えて治療がうまくいった、という症例もいくつもありました。亡くなった患者さんが紙袋の裏に書いてくれた手紙は、今も心の支えになっています。

この仕事を一生続けようと思っていたのですが、出産後、子育てで休むことが増えて心苦しくなり辞めました。とても悔しくて。家で病院と同じようなことができないかと、通院患者や一般の人向けに栄養バランスやカロリーに配慮した弁当の製作・販売・宅配を始めました。

近しい人をがんで亡くしたことがあり、病気と闘うことや生活の大変さが身に沁(し)みていたので、価格は抑えて彩りを良くし、食べたくなる弁当に。最初は一人で配達をし、食が進まない人のものは軟らかくしたり食材を変えたりしていたのですが、彩職賢美に出たこともあり、想定以上に注文が増えていって。一人一人に関わることが難しくなり、これが本当にやりたかったことかな、と疑問が出てきたんです。


オジィ、オバァの話が東京で学んだ薬膳と一致

そんな時、栄養士会から薬膳講座の案内がきました。もともと栄養学を学んでいて、データ主義で薬膳とは真逆の考え方。ただ、病院から家に戻った患者さんが栄養学的な数値や理論通りにいかない現実を知り、薬膳でそのサポートができないかと考えました。

当時、2人の子どものうち下の息子は0歳。迷っていたのですが、夫が後押しをしてくれたんです。「育休中の今しかない」と、2週間に1回東京へ通うことに。

授業の初日、オジィ、オバァに言われたことと一致することが多くてびっくりしました。

病院で栄養士をしていたころ、高齢の患者さんへ手術後に田イモを出したら、「もっと勉強しなさい」とひどく怒られたことがあって。栄養学的にはそういうことは言われていないし、何だろうとずっと疑問に思っていたんです。薬膳を学んで、田イモは傷があるときは避けた方がいいと知り、長年の疑問が解けました。

授業の後、すぐに沖縄にも文献があるんじゃないかと調べて、琉球王朝時代に出された食養生本「御膳本草」にたどり着いて。ほどなく訳してくれる方や研究者に出会い、今も研究を続けています。


病気のために通う生徒 責任の重さを実感

38歳、薬膳の面白さを共有したいと教室をスタート。自分や家族の病気のために通う人も多く、きちんと教えないといけないと責任の重さを実感。最初のころは授業前に徹夜で本を読み込み、その後もさらに知識を増やすために東京の大学に3年通いました。

生徒が集まらなかったり、学ぶ費用がかさんだり、経済的に苦しい時期も多かった。でも、病名ではなく、季節や体の変化に合わせて食材を取り入れ、体調を整える薬膳の考え方が面白くて。長寿が危うくなっている沖縄で絶対に必要だと自信があったので、やめようと思ったことはありません。


講演前は冷や汗、腹痛 それでも伝えたい

薬膳を学んで、足元にある琉球料理の食材の使い方の素晴らしさに気付き、琉球料理伝承人となり学びを深めました。沖縄に根付いていた「食はクスイムン」を、取り戻したい。

力を入れているのは、得た知識を伝えること。人前で話すことは得意じゃなくて、今も講演前は冷や汗が出ておなかも痛くなります。でも、いざその場に立ってお客さんに伝わったと感じられると、楽しい! 時々、御膳本草を描いた渡嘉敷親雲上通寛(とかしきぺーちんつうかん)が降りてきてるんじゃないかと思うことも(笑)。

人に関わることが好きなんですよね。家族が元気になった、体調が整って仕事を楽しめるようになった、という声をいただくと、やっていてよかったなぁと感じます。

もともと目標に向かって突っ走るタイプなのですが、薬膳に関わって、自分のペースを知って時には力を抜くことが大切なんだと気付きました。実際にひどかった片頭痛がなくなり、気持ちも穏やかになっています。
 
薬膳は、苦い、特別と誤解されがちですが、そうではありません。普通の材料で作れる、毎日のおいしい料理。自分や家族と向き合い、上手に付き合うために、取り入れていただけたらと思います。


近日発売 「薬膳でメンテ」

本紙で宮國さんが連載していた「薬膳でメンテ」が本となり、2019年11月下旬に発売される=左写真。不眠、便秘、月経痛などの症状別に、レシピや適した食材を紹介している。県内各書店で発売。1500円(税別)。タイムス住宅新聞社発行。問い合わせは、弊社098‐862‐1155。

息抜きはパッチワーク

宮國さん提供

多忙な宮國さんの息抜きは手芸。パッチワークが主で、これまでに、かばんやひざ掛けなどを作ってきた=左写真。「生地の組み合わせを考えていると、いろいろなことを忘れられる。いつもパタパタしているので、集中できる静かな時間は貴重です」


薬膳琉花
098‐974‐8183



プロフィル
みやぐに・ゆきえ

1970年うるま市生まれ。90年瀬戸内短期大学食物栄養学科を卒業。91年~2002年中頭病院で患者に食事提供、食事指導をする。03年通院患者などへ弁当販売・宅配を行う「健美弁当」をオープン。08年「薬膳琉花」を設立。国内外で講演、冷凍スープを販売。栄養士。国際中医薬膳師。琉球料理伝承人。私生活では2児の母。
 


初登場の紙面(2006年11月9日掲載)


撮影/比嘉秀明 編集/栄野川里奈子
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美リターンズ<3>
第1686号 2019年11月21日掲載

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おいしいものに目がないガチマヤー(くいしんぼう)。2016年に国際中医薬膳師の資格をとりました。おいしく健康に!が日々のテーマ。

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