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2018年5月10日更新

[彩職賢美]コトバグラフィッカーのちょこさん|議論を絵で見える化

会議や講義などの内容をリアルタイムで絵や図で記録する「グラフィックレコーディン(グラレコ)」やその場を促進させるために描く「ファシリテーショングラフィック(ファシグラ)」と呼ばれる手法が注目されている。県内でもフリーのコトバグラフィッカーちょこさん(30)の活躍に、「言葉や言語、障がいの有無を超える」と期待が寄せられている。


 

グラレコで情報も心も整理

コトバグラフィッカー
ちょこ さん

白シャツに紺色のオーバーオールと色とりどりのペンが入ったポシェット。いつもの仕事スタイルで壁に貼られた模造紙の前に立つ。会議が始まると、ちょこさんのペンも紙の上を走り出した。言葉は同時進行で絵や図へと変換されながら、色使い、ブロック、矢印などで、どんどん構造化されていく。視覚的に分かりやすく、参加者がリアルタイムで理解、共有でき、議論の活性化にもつながると期待されるグラレコやファシグラ。フリーグラフィッカーとして活躍するちょこさんは、「会議の後、私が描いたものを指差しながらみんなが話している姿を見るのがうれしい」と笑顔を見せる。

前職は障がい者の就労支援員。「利用者と同年代でいろいろ話しやすい分、ぶつかってうまくいかないときもあった」。あるとき絵を描きながら面談したら、感情的にならず、課題を整理しながら話が進んだ。言葉を見える化することの可能性に気付く。「障がいの有無、読むスピード、感じ方も人それぞれ。会議や講義の後、あれ、なんだったかなって思うことは誰だってあるはず。そのとき、グラレコは役立つ」と力強い。

心に残る現場の一つが、JICAのとある事業。沖縄の観光業に学ぶため視察に訪れたインドネシアの人々は現地語しか話せず、通訳者も不十分という状況だった。視察後の会議では、進行役のファシリテーターから「言葉の壁を超えるものが必要」とちょこさんに依頼がきた。「身ぶり手ぶりで伝えられるインドネシア語と英語からイメージを広げ、一緒に描いた」。言葉は通じなくても、絵を見てみんなで共有。インドネシアの人たちはさまざまな意見を出し、最後はグラレコの紙を見ながら、さらに話を深めていた。「その紙は現地で貼っていて、取り組みも進んでいるようです」と喜ぶ。

言葉を可視化する活動のきっかけは、沖縄大学時代に障がいのある学生の情報保障として、授業を要約筆記するノートテイク。ある先輩との出会いが大きく影響している。「病で聴覚、歩行、視覚と障がいが進行しても、彼女は学ぶことをあきらめなかった。伝達手段が最後は背中文字になり、情報量はものすごく少なくなったけど、それでも学びたいという思いが強く、それに応えたいと私も必死でした。彼女は同じ境遇にいる人たちのために本を書きたいという夢があった。27歳で亡くなったとき、彼女の言葉を一つも残してあげられなかったのが悔しかった。私には今、人の言葉や思いを引き出し、形にする方法がある。そんな言葉を一つでも多く残したい」。思いは深く強い。

ちょこさんは、個人対面の「グラフィックセッション」という独自プログラムも提供しており、「言葉や気持ちを見える化すると、その人の自信につながることもある」と話す。

「行動に優先順位をつけたり、時間の見通しをつけるのが苦手」と、自身も生きづらさを感じることがあるが、「前の職場の上司は自分と向き合うことの大切さを教えてくれた。パートナーは、私がどんなときも寄り添い、ありのままの私でいいと受け入れてくれる。そんな上司やパートナーのように、私も誰かを支える存在になりたい」と前を向く。




グラレコで島の未来考える
昨年度、うるま市の島しょ地域における移住定住促進に向けた「しまみらい会議」にグラフィックファシリテーターとして定期的に参加したちょこさん。左がその際に描いたもの。「島の人たち、行政担当者、プロジェクトメンバー、メインファシリテーターも一緒にみんなで描き上げたもの。グラレコで共通理解を持つことにつながった」と振り返る。

 



描くことで生まれる作用伝えたい
会議、講演会、セミナーなどでのグラレコ、ファシグラの他、手描き広報物の作成アドバイスやパートナー・牛木克彦さんと自然体験を通した人材開発プログラムなども展開中のちょこさん。県外では大手企業がグラレコの専門チームを作り、外部派遣も行うなど話題だが、沖縄での認知度は低い。ちなみに右はグラレコを説明するために自身が描いたもの。「描くことで生まれる作用、変わる世界があるのを伝えたい」と目を輝かせる。

「Re:find」(リファイン)
090-3072-8056




ちょこさんのハッピーの種

Q.幸せを感じるのは、どんな時?
人の役に立ててると感じるときがすごく幸せです。大学時代は要約筆記ノートテイクサークルに所属。20人くらいのメンバーとともに活動していました。そこで出会った先輩=写真左=から、「ちょこが一番うまいね」って言われたのがうれしくて続けられたから、今の仕事にもつながっている。先輩は「自分たちをサポートしてほしい」と自ら声を上げ、このサークルを立ち上げたメンバーの一人で、とても強くて魅力的な人だった。亡くなってしまったけど、私の人生においてとても大切な人です(写真はちょこさん提供)。



PROFILE
むろふし・ながこ
1988年、神奈川県出身。2007年、沖縄大学入学。在学中は聴覚障がい学生への要約筆記(ノートテイク)に取り組む。卒業後、県内飲食店、福祉事業所支援員を経て16年、コトバグラフィッカーちょことしてフリー活動開始。グラフィックレコーディング、ファシリテーショングラフィックで、うるま市島しょ地域移住定住促進業務、JICA草の根事業、沖縄大学地域研究所『土曜教養講座』に関わる



週刊ほーむぷらざ「彩職賢美」|輝く女性を応援!
今までの彩職賢美 一覧


撮影/比嘉秀明・ライター/赤嶺初美
撮影協力/沖縄大学

『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1299>
第1607号 2018年5月10日掲載

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