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2016年10月20日更新
世界と繋がるウチナーンチュ 2016|県人大会特集
海外で暮らす県系人は約42万人。26日からは「第6回世界のウチナーンチュ大会」も始まる。これを機に、世界と繋がるウチナーンチュのことを知り、大会に来る人を温かく迎えませんか。
県人大会特集
世界と繋がるウチナーンチュ
海外で暮らす県系人は約42万人。26日からは「第6回世界のウチナーンチュ大会」も始まる。これを機に、世界と繋がるウチナーンチュのことを知り、大会に来る人を温かく迎えませんか
人・食・文化 沖縄がルーツ
"ウチナーンチュ"を介せば、世界はもっと身近になる! 意外と知る機会の少ない海外のこと、移民のこと。県系の女性たちに、移民先や海外での生活、各国の女性事情、沖縄との共通点などを聞いた。
与古田 悦子さん(55)
英語教室主宰
ボリビア多民族国
南アメリカに位置する。面積110万K㎡、人口1082万5000人、首都ラパス。言語はスペイン語及び先住民言語36言語。民族は、先住民41%と非先住民59%。
コロニア内は沖縄だった
与古田悦子さんは父が恩納村、母は名護市出身で、第一次移民として1954年にボリビアへ渡った。両親はボリビアで結婚。5男1女をもうけた。
居住地はウチナーンチュが集う「コロニア・オキナワ」。「コロニア内は、"沖縄"だった」。大人は模合をし、十三祝いなどトゥシビーがあり、天ぷらや豚肉料理も並んだ。行事や運動会には地域みんなが集い、婦人会がごちそうを作る。「地域の人はみんな兄弟、家族だった」と懐かしむ。言葉はウチナーグチ。「今でも全部聞けますよ」と笑う。
与古田さんが子どものころ、水道やテレビ、電気はなく、水はポンプで井戸からくみ上げた。周囲には原生林が残り、ナマケモノやオウムがいて、サルの鳴き声も聞こえた。「まるでジャングル。移民当時は、本当に大変だったでしょう。みんな必死で働いていました」。
与古田さんはブラジルの大学へ進学し、卒業後、沖縄に移住した。「コミュニティーに溶け込めば、どこでも生活できる。海外のウチナーンチュは苦労しながらも子どもたちに教育を受けさせ、各界で活躍する2世、3世も多い。成功するには頑張るしかないという精神を、親から受け継いでいると思う」。
現在も家族がボリビアにいて、行き来をする与古田さん。ボリビアの女性は、働いている間の家事や育児をハウスキーパーやベビーシッターに手伝ってもらう。「子育てを一人で抱え込まない分、母親は気持ち的に楽だと思います」。ボリビアのいいところは「みんなファミリー感覚で、温かい。沖縄にも通じるところがある」。
3カ国に暮らした経験から、コミュニケーションと言語の大切さを実感。恩納村で英語教室を開いている。「沖縄の子どもたちにも、県外、海外で活躍してほしい」と期待する。
ライオンズ ナンシーさん(55)
ALT(英語教師)
フィリピン共和国
面積29万9404K㎡、7109の島々がある。人口約1億98万人。首都マニラ。民族はマレー系が主体。言語は国語フィリピノ語。公用語はフィリピノ語及び英語。
空手は国境を超える
母がウチナーンチュで2世のナンシーさん。フィリピンに住んでいたが、30年前に家族で沖縄に引っ越した。
現在5段の空手を始めたのは、40歳のとき。ぜんそくを治すために運動をしようと思ったのが、きっかけだった。「深く呼吸をする空手のおかげか、ぜんそくは1年で治まりました。空手を通じて、国境は超えられる。世界中の人とつながり、盛り上がれます」。今は米軍基地内で、アメリカ人の子どもたちに空手を教えている。
出身地フィリピンと沖縄は気候や食べ物で共通点が多く、ゴーヤーやマンゴー、パパイアなども身近だという。「ほかに、人の明るさや、助け合う心も似ていて、なじみやすかった」。ナンシーさんは小さなころから、母に「沖縄の習慣は、人を大切にすること」と教わってきた。初めて沖縄に来たときに、母の親戚に迎えられてうれしかったことを今も覚えている。
照屋 ブルーナ ちえりさん(20)/写真右
大学生
ブラジル連邦共和国
南アメリカに位置し、面積は851.2万k㎡。人口約2億40万人、首都ブラジリア。民族は欧州系、アフリカ系、東洋系、混血、先住民。言語はポルトガル語。
ミックスな文化共通
父が県系3世、母が県系2世のちえりさんは、ウチナーンチュ子弟等留学生で、1年間留学中。母国ブラジルの県人会で、琉球舞踊を習っていた。
ブラジルは多国籍な国で、友人もスペインやポルトガル、イタリア、アフリカなどさまざまな国の出身者が多く、文化も食事も多様だという。「ミックスな文化が、沖縄と似ている」とちえりさん。毎年、「沖縄祭り」があり、沖縄料理の出店や、舞台でエイサーや琉球舞踊などが披露される。サンパウロ市公認の「とても大きな祭り」だ。
ブラジルの若者にとって、関心が高いのは経済問題。失業者が多く、大学生もデモに参加する人が多いという。
「夢や目的を持ち、勉強や仕事を一番に考える人が増えています。女性は以前は家族のために生きていましたが、現代では仕事をし、自由で独立した生活をしたい人が多いです」。
沖縄の好きなところに、伝統芸能・芸術・文化、国際交流が盛んで、自然が豊かなこと、と話した。
モレノ マリア フロレンシアさん(33)/写真左
イラストレーター
アルゼンチン共和国
南アメリカに位置し、面積278万k㎡。人口4298万人。首都ブエノスアイレス。民族欧州系、先住民系。言語はスペイン語。
祖父母の故郷を見たい
祖父母がウチナーンチュのフロレンシアさん。ウチナーンチュ子弟等留学生として、アルゼンチンから留学中だ。きっかけは、「祖父母の故郷を見たい。家族に会いたい。沖縄の工芸を習いたい」という思い。母国の県人会で琉球舞踊や三線に触れ、沖縄の文化に興味を持った。
現在、県立芸術大学に通い、紅型や織物、工芸を学び、放課後、琉球舞踊を習う。芸術づけの日々だ。「歴史がある沖縄の伝統芸能はすばらしい」と目を輝かせる。4月のシーミーには親戚たちとも会った。「みんな親切」と楽しげだ。アルゼンチンでは、イラストレーターとして働く。「以前より良くなったけれど、まだ男女平等とは言えないところも。仕事を続け、主体的に生きたい」と話した。
琉球舞踊の教室で、かぎやで風をマスターしたフロレンシアさん。現在、瓦屋節を練習中。師匠の安座間明美さんは「練習熱心で覚えが早い」と話す
<うとぅいむちの心で交流を>
編集/栄野川里奈子・安里則哉
『週刊ほーむぷらざ』第1527号 2016年10月20日掲載
[世界と繋がるウチナーンチュ・特集]