彩職賢美
2016年3月10日更新
被災地に寄り添い すき間を支援|玉木千春さん
今週の彩職賢美は、東北ツアーをコーディネート 玉木千春さん
才色兼備『沖縄で働く女性は、強く、美しい』
集落や離島、子どもに目を向け
沖縄と東北 人と人結ぶ
東北ツアーをコーディネート
玉木 千春さん
仙台出身の玉木千春さん(48)は東日本大震災後、小さな集落や離島、アレルギーの子どもたちなど見落とされがちな「すき間」を支援。義援金の送付や東北応援ツアーの企画など、さまざまな活動を続けてきた。震災から5年。「今後は支援よりも交流。現地に行き友だちをつくってほしい」と、ツアーのコーディネートを手掛ける。
震災後、70を超える支援活動に携わってきた玉木さん。あえて団体に所属せず、支援を続けた。「手が届いているところではなく、すき間を埋めたかった」。
宮城県石巻市の蛤浜という29人の小さな集落へ物資を送付し、「4日ぶりの食事」と喜ばれた。ほかにも病気を抱える人や精神病棟の患者など、さまざまな人たちに向け、寝ずに物資を集めて送った。
「生まれ育った場所だから、情報は早かった」。沖縄に住む玉木さんのもとへ、東北で支援を求める情報が家族や友人、知人から次々に寄せられた。ニーズに応え、パーソナリティーを務めていたラジオや新聞、インターネットで呼びかけ、資金や物資を集めた。「支援したいけれど、どうしたらいいか分からない」という県内外、海外の知人から義援金を預かったことも。これまで培った縁が、支援に生きた。
「誰かの役に立つなら」と、自然と体が動く。学生時代からいじめられっ子を助けたり、海外でボランティアをしたり、困っている人を見ると放っておけないという。
影響を受けたのが、実家で同居していた伯父だ。病気で寝たきり。学校へ通えなかったが博識で、大学を卒業するまで勉強を教えてくれた。「伯父は一度も、何で自分が…と言わなかった。体が動く私は、その分精一杯やらないと。共に社会で生きる人と補い合うのは当たり前」とさらりと笑う。
明るい笑顔が印象的だが、思い立った時の行動力は、並ではない。沖縄への移住は31歳。旅行で訪れ、沖縄戦に触れたことがきっかけだった。「何も知らなかったことに呆然とした。どうせなら1年、現地で学ぼう」と、東京の大手企業を辞めて来沖。1年のつもりが、「お世話になった沖縄に恩返しがしたい」と旅行会社で働く。その後、沖縄出身の夫と出会い結婚。沖縄に住み19年、「読谷だね」と言われるほど、言葉もなじんだ。
震災から5年。知り合った被災者と、今も連絡を取り合う。つい最近、岩手の70代の女性から電話で「まだ5年だっちゃ。みんなが振り向かなくなるんじゃないか」と言われた。玉木さんは「仮設住宅は孤立化が進み、寂しさを抱える被災者が増えている」と危惧。「遠くにいるから、遠慮せず話してもらえる」と、声に耳を傾け続ける。
今、必要性を感じているのが「現地との交流」だ。「被災地に友だちをつくってほしい。そうすると、どうしているか気になるでしょ。互いに思い合える環境を増やしたい」。
旅行社での経験を生かし、沖縄から東北、東北から沖縄のツアーを15本コーディネートしてきた。ことし5月には、恩納村文化協会主催で宮城県を訪ねる。「大変なことを乗り越えた人に触れると、前に進む力をもえらる。特に子どもたちに、被災地の子たちと交流をしてほしい」。ツアーを通して沖縄と東北をつなぎ、人と人を結ぶ。
2012年3月26日、宮城県気仙沼にて(右から3人目が玉木さん)。東北のツアーを企画し、被災した漁師が営む居酒屋を訪れた=玉木さん提供
玉木さんのハッピーの種
Q.心掛けていることはありますか?あいさつも笑顔も自分から! 先に笑うと相手も笑顔になってくれる。会う人一人一人に意味があると思うので、出会いとつながりの継続を大切にしています。被災地の方も含め、毎年400通の年賀状をやりとりしています。筆まめは、母から習ったこと。
周囲の人との距離の近さが、東北と沖縄は似ていると感じます。
Q.支援活動の支えとなったのは?
活動を続けられたのは、周囲のおかげです。読谷村や恩納村、(株)okicom、(有)沖縄スカイ観光サービス、FMよみたん、個人の方々など、さまざまな方に協力していただきました。
家族の理解もあってこそ。夫は快く理解してくれ、幼稚園生だった息子にも「大変な時だからお母さんは忙しくなるよ」と説明しました。
Q.今後の活動は?
3月10日(木)11時~FMよみたん(78.6MHz)「ラジオが発信した5年」という震災特別番組に出演します。私が支援先を紹介した、読谷村サッカー協会主催の第6回復興支援チャリティーサッカー大会が4月26日(火)に開かれます。
ツアーの問い合わせ
ウキウキおきなわ
TEL.090-8720-8066
ukiuki_okinawa_k3c2@nifty.com
PROFILE
玉木千春(たまき・ちはる)1968年宮城県仙台市出身。東北学院大学在学中、タイでボランティア活動。大学を中退しスイスへ。復学し卒業後、東京で就職。マーケティングや企画に携わる。1998年来沖。旅行会社や塾勤務を経てイベント企画や司会を行う。東日本大震災以降復興支援を続け、ツアーをコーディネート。一般旅程管理者、沖縄県観光危機管理指導員。
[今までの彩職賢美 一覧]
撮影/比嘉秀明・編集/栄野川里奈子
『週刊ほーむぷらざ』彩職賢美<1208>・第1495号 2016年3月10日掲載