健康
2025年1月16日更新
CM関節症(親指付け根の変形性関節症)|親指の付け根腫れ、骨が変形[新治療で長引く痛み改善⑫]
文・佐久川貴行(さくがわクリニック院長)
絞る・回す・道具を使う動作で痛み
CM関節症は、親指付け根(手首の近く)にある関節の軟骨がすり減って、骨にトゲができ、痛みを生じる疾患です。親指付け根の関節をCarpoMetacarpal関節と言うので、CM関節症と呼ばれています。へバーデン結節と同様、骨の変形を来す疾患です。原因は加齢、遺伝、更年期障害、親指の使い過ぎ、外傷(骨折や脱臼)の既往などさまざまな要因が考えられており、40歳以上の女性に多く見られるとされています。親指は物をつかむ・つまむ動作で重要な役割を担うため、CM関節症では、この機能に支障を来します。物がつかめなくなる
症状は、親指付け根に生じる痛みで、ペットボトルやビンのふたを開ける、雑巾やタオルを絞る、ドアノブを回す、ハサミ・ホチキス・爪切りなどの道具を使う動作で痛みが生じやすいです。また、親指付け根を押す、親指をひねるようにすると強い痛みが出ることもあります。痛みが強くなると握力の低下や動かしにくさで物がつかめなくなるので、日常生活の質が著しく低下。痛みが出てから数年かけて骨の変形が進行すると、親指の付け根が赤く腫れ、骨の出っ張りに触れることもあります。
一般的な治療法として安静、湿布、鎮痛薬内服、テーピングによる固定、関節内ステロイド注射が有効とされています。変形が強く、痛みが改善しない場合は手術が考慮されます。
麻酔後はほぼ痛みなし
前述の治療法で痛みが改善しない、もしくは手術は避けたい場合、動注治療を検討してもよいと思います。変形した親指付け根の周囲には異常血管(モヤモヤ血管)が増えており、腫れや痛みの原因になることが分かってきました。
動注治療では手首またはひじの脈を触れる動脈の中に、点滴で使うよりもさらに細いチューブを入れます。その細いチューブの中から治療薬を注入すると、血液の流れに乗って親指付け根に生じたモヤモヤ血管に作用し、痛みを軽減させることができます。変形した骨の形を元に戻すことはできませんが、変形前に治療を始めれば、変形の進行を遅らせる可能性があります。
動注治療は片手なら通常5分程度で治療可能です。局所麻酔のみチクッとした痛みはありますが、それ以降に痛みを感じることはほとんどありません。初診の方でも当日治療を受け、ご帰宅可能です。その後の日常生活はいつも通りで構いません。
CM関節症による長引く痛みで悩んでいる患者さんは多数いらっしゃいます。痛みが改善しない、加齢や痛みと付き合っていくしかないと治療をあきらめている多くの患者さんに届くよう願っています。
※動注治療は、オクノクリニック(表参道・銀座・横浜)の奥野先生が2014年に開発された治療で、年間4,000件の治療実績があります。
執筆者
さくがわ・たかゆき/宜野湾市出身。放射線診断専門医。IVR(画像下治療)専門医・指導医。運動器カテーテル治療研究会・監事。2021年9月浦添市前田にさくがわクリニックを開院
↓画像をクリックすると、さくがわクリニックのホームページに移動します
毎週木曜日発行・週刊「ほ〜むぷらざ」
第1953号 2025年01月16日掲載