健康
2024年7月18日更新
眠れないときは 遅寝、早起き|続けてハッピー‼︎健康習慣④
寝付けない、夜中に目が覚める、熟睡感がないなどの不眠症状に悩まされることはありませんか? そんな時は「遅寝早起き」を意識しましょう。眠くなってから床に就くことで、ベッドで眠れないまま過ごす時間を減らしつつ、朝は一定の時間に起きることが不眠の改善につながります。専門家に適切な睡眠時間についての考え方や入眠しやすい環境を整える方法を聞きました。
眠れないときは『遅寝、早起き』
睡眠環境を整え 必要な時間確保
加齢とともに一晩に眠ることができる時間は減っていく。必要な睡眠時間も日中の活動量などによって個人差があるという。琉球大学病院精神科神経科の普天間国博医師は「年とともに睡眠時間が多少短くなっても、睡眠によって休息感が得られて日中に眠気や倦怠感がなければ問題ありません。自分にとって必要な睡眠時間を把握して、寝室の光量や温度など睡眠環境と整えることが大事です」と話す。
実際に寝る時間とベッドに居る時間を近づける
眠れずにベッドで横になっている時間が長くなると寝れない時間がストレスになって眠りが浅くなり、夜中に目が覚めるようになる。眠くなってから床に就くことで眠れないストレスを緩和しつつ、眠気をためることにつながる。
教えてくれたのは
琉球大学病院精神科神経科
医師 普天間国博さん
入眠できない時は寝室を出る
睡眠時間が不足したり、質が悪くなると健康や日常生活に支障をきたす。普天間医師は「不眠が慢性化するとうつ病のリスクが高まります。コルチゾール※というホルモンが過剰に分泌されて、太りやすくなり、高血圧や糖尿病、脳卒中、心疾患などの発症につながります」と注意を促す。
一日に必要な睡眠時間は、日中の活動量などによって個人差があり、季節によっても変わるという。また、加齢とともに一晩に眠ることができる時間は減っていく。10・20代で7、8時間、45歳で約6.5時間、65歳で約6時間といわれている。「日中に眠気や疲労感、倦怠感がなく、元気に過ごせていれば必要な睡眠時間はとれていると考えられます。睡眠時間の目安としては、成人の場合は7時間以上。ただし、65歳以上の高齢者はあまり長い時間床に着いていると生活のメリハリが崩れるので、自分に必要な睡眠時間とベッドで横になっている時間を近づけるようにしましょう」。
不眠症状がある時の対処法については、「床に着いて15分ほどたっても入眠できないならいったん寝室から離れて、ストレッチで体をほぐしたり落ち着いた音楽を聴いたりして、眠くなるまでリラックスした時間を過ごしましょう」とアドバイス。
※コルチゾールは生命維持に必要なホルモンで、朝に多く分泌されて夜は少なくなるが、不眠が続くと夜も分泌量が低下ぜず、体に悪影響を与えるという。心身にストレスを受けると分泌が増えることからストレスホルモンとも呼ばれる
◎睡眠環境を見直そう!◎
強い光やブルーライトは睡眠を促すホルモンであるメラトニンを抑制する。普段の就寝時刻の約2時間ほど前からメラトニンの分泌が始まるので、それ以降は明る過ぎないよう室内の照明を調整しよう。近年の照明器具にはブルーライトを多く含むLEDが使用されているが、寝室の照明にはなるべく波長が長い暖色系の光を選ぼう。
寝室や寝床の温度と湿度は高くても低くても体温調整がうまくいかずに寝つきが悪くなる。エアコンや寝具で心地よいと感じられる範囲に調整を。
コーヒーなどに含まれるカフェインを摂取すると入眠を妨げ、眠りが浅くなるので、就寝の4時間前から控えるといい。1日のカフェイン摂取量は400㍉㌘(コーヒー700㍉㍑程度)を超えないように。たばこのニコチンも覚醒作用があり交感神経が刺激され入眠を妨げ、睡りが浅くなる。アルコールには深い睡眠を妨げる働きがあり、中途覚醒が増える。利尿作用もあるので、トイレに行きたくなって夜中に目が覚めやすい。
スマートフォンを使う時は画面に顔を近づけることが多いので少量のブルーライトでも影響を受けやすい。就寝前は使用を控えよう。
◎専門的な治療を要する睡眠障害◎
不眠症
眠る機会や環境が適切であるにもかかわらず、なかなか寝付けない、夜間に途中で何度も起きる、朝早く目が覚めるなどの症状があり、それによって日常生活に何らかの支障を来たす疾患。
むずむず脚症候群
「むずむず」「虫が這う」などの不快な感覚が生じて、四肢を動かさずにいられない衝動に駆られる疾患。眠気があるにもかかわらず症状によってうまく寝つけなくなる。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群
加齢や肥満などの要因で睡眠中に気道が狭まることによって呼吸がしづらくなり、血液中の酸素が不足する疾患。酸素不足によって夜中に目が覚めたり、眠りが浅くなる。
周期性四肢運動障害
四肢の筋肉のピクつきが繰り返し生じて、中途覚醒が増え、深い睡眠が妨げられる。
近年の研究では、不眠は認知症と関わりがあることが分かっている。普天間医師は「アルツハイマー型の認知症は脳内に老廃物が蓄積することが原因ですが、不眠が続くと老廃物の排出が不十分になります」と説明する |
寝室の室温や光量を調整 寝酒はNG
入眠を促し睡眠の質を高めるためには寝室の温度など睡眠環境を整えることが大事と普天間医師は説く。「寝室や寝床の温度・湿度は寝つきや睡眠の深さに影響します。季節に応じてエアコンや寝具で心地よいと感じられる範囲に調整を」。明るい光も目を覚ます作用があるので、寝室はできるだけ暗くして寝よう。「特にブルーライトなどの波長の短い光は睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑制します」
スムーズに入眠するためには、脳の興奮を鎮めることも大切。就寝の1時間前はリラックスした時間を設けよう。悩みやストレスも不眠の要因になるので悩みごとはいったん忘れて寝床まで持ち込まないようにして。また、コーヒーやたばこ、お酒などの嗜好品は睡眠を妨げる。アルコールはリラックスさせる効果があるので一時的に入眠を促すが、深い睡眠を妨げる働きがある。「筋弛緩作用もあり、就寝中に舌のつけ根がのど奥に沈みやすくなることから、睡眠障害である睡眠時無呼吸症候群を発症しやすくなります。飲酒は適量を心掛けて寝酒や深酒は控えましょう」
起床後はしっかり朝日を浴びると睡眠のリズムが整う。日中もできるだけ日光を浴びるとメラトニンが夜間に出やすくなり、スムーズな入眠が期待できる。「朝食をしっかり食べることも睡眠のリズムを整えるのに大事。一方で夜食の食べ過ぎは睡眠リズムの乱れにつながります」
適度な運動習慣は入眠を促し、睡眠の質を高めることにつながる。「有酸素運動や筋トレが効果的といわれています。ただし、就寝前に筋トレなどの激しい運動は睡眠を妨げるのでNG」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
不眠の予防・改善のポイント
①寝付けない時は寝室を出て眠くなるまでゆったり過ごす
②寝室では強い光やブルーライトを避け、快適な室温に
③睡眠を妨げるお酒やコーヒーなどの嗜好品はほどほどに
②寝室では強い光やブルーライトを避け、快適な室温に
③睡眠を妨げるお酒やコーヒーなどの嗜好品はほどほどに
取材/池原拓
毎週木曜日発行「週刊ほ〜むぷらざ」続けてハッピー‼︎健康習慣④
第1928号 2024年07月18日紙面から掲載