健康
2023年11月23日更新
頸肩腕症候群・五十肩 肩があがらない!|慢性の痛み こりに直接アプローチ|鈴木先生が解説 なるほど鍼灸①
体を各パーツに分けて診る西洋医学と異なり、全身を診る東洋医学の鍼灸は、西洋医学だけでは改善しない症状の最後の砦ともいわれます。今月から始まるこのコーナーでは、鍼灸の治療法や特徴、その魅力について、沖縄統合医療学院の鈴木信司先生が分かりやすく紹介。初回は「肩の痛み」の治療です。
鈴木信司(沖縄統合医療学院 学校長)
琉球大学大学院医学研究科博士課程修了、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修了。医学博士。県内初の鍼灸学科を開講した沖縄統合医療学院学校長。はり師・きゅう師等の国家資格と養成教員資格を持つ。全日本鍼灸学会、日本伝統鍼灸学会等に所属。
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中高年に多いのは頸肩腕症候群や五十肩です。
頸肩腕症候群とは、首、肩、腕に痛みが現れる症状で、頭を支える肩から首全体が痛むこともあり、痛みの他、動きが悪い、力が入りにくい、しびれなどが生じることもあります。また、筋肉の緊張が強くなると頭痛が起こることもあります。日常的に悪い姿勢でスマートフォンやパソコンなどの作業を続けたり、デスクワークなどで同じ姿勢が続いたり、運動不足だったりすると起こりやすくなります。
五十肩とは、中年以降に増えてくる肩関節周囲炎のことで、肩関節を構成する骨、軟骨、靭帯、腱などが老化し、肩関節周囲の組織に炎症が起こることが主な原因とされます。肩を動かすときに痛みがあるため、あまり動かさずにいると、ますます肩の動きが悪くなってきます。また、ひどくなると痛さで眠れないこともあります。
こうした痛みやしびれは体からの警告信号です。骨折など耐えられないほどの「一次痛」、突き指のようにずきずきキリキリと痛むけれど救急を受診するほどではない「二次痛」のように、肩周りの急性の痛みで医療機関を受診したものの、消炎鎮痛剤だけではなかなか改善せず、慢性化してしまった方が鍼灸に通うケースが多くみられます。
全身整える本治法
即効性ある標治法
慢性化してなかなか改善しない痛みで肩を動かさずにいると、東洋医学でいう気・血・津液が滞った状態になってしまいます。気とはエネルギー、血は血液、津液とはリンパ液や尿など血液以外の液体を意味し、これらがバランスよく体内を巡る状態を目指して治療するのが東洋医学です。
鍼灸には大きく分けて二つの治療法があります。一つ目は東洋医学的な全身の気・血・津液の流れを整える「本治法」で、徐々にその効果が表れてきます。二つ目はいわば局所治療といえる「標治法」で、即効性が期待できます。
慢性的な肩の痛みに対しては、標治法で筋肉のこりに鍼灸で直接アプローチします。鍼灸を施術するポイントは筋肉で、一人一人の状態に合わせて治療点を探し、鍼や灸を行います。標治法は即効性が期待できるので、痛みなどは多くの場合、短期間で改善します。それと同時に、本治法で、その方の今の病態を見極めながら、全身の調整を行っていきます。
ツボ刺激でセルフケア
肩こりには首の後ろ 髪の生え際に並ぶ三つのツボと、肩上部の肩井(けんせい)がおすすめです。首の中央の太い筋の両脇にある「天柱(てんちゅう)」、その外側1cmほどにある少しくぼんだ「風池(ふうち)」、その外側の筋肉が盛り上がった「完骨(かんこつ)」を、親指で10秒ほど押します。こりが強いときは、指で押しながら頭を少し後ろへ倒すと、より効果的です。
鍼灸ひとくちメモ
鍼って痛くないの?
日本で一般的に使われている鍼の太さは、細いものでは髪の毛よりも細い直径0.1mmしかない、衛生的な使い捨ての医療機器です。打たれている感触を感じることもありますが、先端がわずかに丸みを帯びているため、刺すような痛みを感じることはありません。
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取材/堀基子(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』鈴木先生が解説!なるほど鍼灸①
第1894号 2023年11月23日掲載
『週刊ほ〜むぷらざ』鈴木先生が解説!なるほど鍼灸①
第1894号 2023年11月23日掲載