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2023年8月17日更新

一般社団法人共育ステーションつむぎ 代表の髙良久美子さん|ミルクとオムツ 困窮世帯に支援[彩職賢美]

「粉ミルクの在庫、無いですか?」。社会福祉協議会の方に尋ねられて缶ミルクを一缶購入し、手渡したのが「ベビーミルク支援」の始まりでした。私自身、夫が急逝し母子家庭だったので、ママたちはピア(仲間)。これまでに約800世帯にミルクとオムツを届ける支援をしています。


撮影/比嘉秀明 撮影協力/ふく薬品長田店
 

支援者よりも仲間として

一般社団法人共育ステーションつむぎ 代表
髙良久美子さん



母子家庭で4人子育て
困窮はまさかで始まる


困窮世帯に無償でミルクとオムツを届ける「ベビーミルク支援」を行う高良久美子さん(60)。(一社)共育ステーションつむぎの代表としてメンバー5人と共に活動(写真右は、與那覇友理華副代表)。ミルクやオムツの寄贈・寄付を受けて、各家庭に届ける。

きっかけは5年前。那覇市母子寡婦福祉会で事務局長をしていた高良さんは、那覇市の社会福祉協議会(社協)の職員に声をかけられた。「今日赤ちゃんにあげるミルクがない方から相談があったのですが、在庫がないんです。ミルクはありますか?」。母子会にも無かったが、自分で購入して一缶を手渡した。

それから在庫が途切れないよう、社協に毎月1~2缶ミルクの寄贈を続けた。コロナ禍で困窮世帯が増えて、需要が増加し、友人、知人へ協力を募り2020年4月に団体を立ち上げ、ことし4月に一般社団法人へ。運営資金はほとんど寄付や寄贈だ。仕事の傍ら睡眠時間を削り、貯金を取り崩し、無償で活動を続けた。「なぜそこまで」という問いに、「仲間だから」と答える。

18年前、4人の子どもの子育て真っ最中に突然夫を亡くした。過労死だった。当時上の子は18歳、下の双子は8歳。「子どもにご飯をあげるために日雇いで働いたことも、財布に128円しかなかったこともあった」と振り返る。

生まれ育った家庭は、困窮世帯だった。父が医療事故で片足を切断し、手術のため家1軒分ほどの借金を負ったからだ。「事故は、私がおなかにいたころに起きた。うちは母親の母乳が出たからよかったけれど、そうじゃなければ、私自身、どうなっていたか分からない」

支援を受ける人の状況はさまざまだ。離婚、病気やケガによる失業、コロナ禍での減給。「病気になろうと思う人も、離婚しようと思って結婚する人もいない。困窮は『まさか』で始まることが多い」と力を込める。

支援をしてきた中で忘れられない人がいる。失業し離婚。里帰り前に支援を利用後、「あなたが救った娘です」と赤ちゃんを連れてきた女性だ。「支援がなかったらどうなっていたか…」と打ち明けられた。同じようなケースは、何度かあった。そのころ、県外で乳児の衰弱死がニュースになった。「命を救いたい」という思いが、高良さんを支えている。
 

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活動を始めたころ、「支援があるから無責任に子どもを産む母親がいるんだ」「ほかに支援があるから不用だろう」と批判された。「子どもの支援は手厚いけれど、ミルク支援がすっぽり抜けている。そこに気付いている人はほとんどいない」と高良さん。「当事者は周囲に『大変だと分かっていてなぜ産んだの』と責められるので、助けてと言えない。体がキツい産後、経済的な困窮が加わるとダメージは大きく後々まで影響する。節約のために粉ミルクを薄めると、子どもの体に負担がかかる」と支援の必要性を訴える。

活動を続ける上で、大切にしているのがつながりだ。市町村と連携して支援することは多く、当事者を行政へつなぐこともある。民間でも、ミルクを受け渡す薬局や寄付・寄贈をする会社など協力企業が増えている。先月、沖縄県と那覇市への陳情が通り、行政を通してミルク支援をすることが決まった。「ベビーパワーです。私はベビーの家来」と笑う。

次の目標は、母親の自立支援だ。「頑張って自立したいと思っている人は多い。ミルクを買えるようになるサポートをしたい」と構想を練る。「子どもたちが独立し、少し余裕ができた今、苦しかったころにあったらな…と思うことをしている」。自然体の温かさで、多くの人を救っている。
 



 琉球ロマンに引かれる「歴女」 曽祖母から繰り返し聞いた寝物語を基に紙芝居にした「いねとつる」

曽祖母から繰り返し聞いた寝物語を基に紙芝居にした「いねとつる」
 

 

「地元の子どもたちも初めて知ったと喜んだ」という「北谷長老」「地元の子どもたちも初めて知ったと喜んだ」という「北谷長老」
 

「歴史が大好き。歴女です」という高良さん。「琉球ロマンの詰まった物語に引かれる。地域の物語を次世代へ伝えたい」と、伝承を紙芝居にし、読み聞かせすることをライフワークにしている。きっかけは子どものころ、曽祖母が話していた寝物語だ。実家のあったうるま市の伊覇按司にまつわる話で、「つるが明国からくわえてきた稲を持ち帰り、干ばつで絶えた稲を再興した」という話を「いねとつる」というタイトルで紙芝居に仕立てた。ほかにも、無料塾の子どもたちの声に応えて、僧侶「北谷長老」の話を紙芝居に。北谷町砂辺で琉球競馬(ンマハラシー)が行われていたことを調べ、ンマハラシーを再現したイベントにも関わった。

紙芝居作りは、高良さんが物語を、娘が絵を担当。イベントや地域の行事などで子どもたちに読み聞かせしてきた。「地元にこんなにすごい人がいた、と知ると子どもたちがワクワクするんです。伝統の継承にもつながる」



 本島、石垣、宮古でミルク支援 寄付も受け付け 

一口500円の寄付金13人分で、1回分のオムツとミルクのセットになる。つむぎは届ける際に、「みんなあなたのことを応援しているよ」と伝えている

一口500円の寄付金13人分で、1回分のオムツとミルクのセットになる。つむぎは届ける際に、「みんなあなたのことを応援しているよ」と伝えている

「ミルク支援」は、本島、石垣市、宮古島市で行っている。対象は、県内で月齢0~18カ月を目安に、ミルクの購入が困難な困窮世帯。期間は、1世帯月1回(2缶)、3カ月間が基本。宅配や行政などの支援機関、薬局などでの受け取りとなる。
 また、個人や企業からの寄付、寄贈も受け付けている。寄付は500円1口から、継続と1回のみがある。詳細は、ホームページ(tumugi.okinawa)にて。

ほかに、アマゾンでも寄贈ができる。寄贈するには、アマゾンの「みんなで応援プログラム」で支援団体に「つむぎ」を選択。ほしい物リストから商品をカートに入れ、届け先につむぎを選択して購入すると、つむぎに商品が贈られる。



プロフィル/たから・くみこ
1962年生まれ。那覇市出身。那覇商業高校を卒業。94年、中央大学法学部法学科中退。事務職を経て、学研教室の運営、無料塾で就学支援をするなど教育に携わる。3年前から、株式会社リンクス(有料老人ホーム)の入所相談員に。2020年に共育ステーションつむぎを立ち上げ、23年4月に一般社団法人化した。


 


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文・栄野川里奈子
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1426>
第1860号 2023年8月17日掲載

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スタッフ
栄野川里奈子

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編集者
おいしいものに目がないガチマヤー(くいしんぼう)。2016年に国際中医薬膳師の資格をとりました。おいしく健康に!が日々のテーマ。

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