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2023年8月10日更新

那覇電気工事業協同組合 事務局長の棚原さやかさん|電気工事士の地位向上目指す[彩職賢美]

20年以上電気工事士として働いた経験から、インフラを整備する重要な仕事なのに他業種に比べて賃金が安く、人材確保や育成が課題だと感じています。電気工事を営む企業や個人をサポートする業務を通して、電気工事士の地位向上につなげたいです。


撮影/比嘉秀明
 

男女平等より男女共同に

那覇電気工事業協同組合 事務局長
棚原さやかさん



キレイ・キラキラ・カッコイイ
目指すのは新たな3K


電気工事士とは、安全に電気を使えるように配線や照明器具などを整備する仕事だ。高校生の頃に資格を取った棚原さやかさん(45)は「新築の建物では、その基礎工事から関わるのが電気工事士。最後にパッと電気が付いたときの感動は今でも忘れられません」と目を輝かせる。

現在は電気工事関連の企業や個人が集まり、電気工事業者の地位向上や業界発展を目指す組織に身を置く。組合員である企業やその従業員向けの各種講習会の企画を行うほか、資格や助成金の情報を提供するなど、現場で働く人や経営者をサポートしている。

電気工事士として最初に働いたのは両親が営む小さな会社。母も電気工事士だった。幼い頃の夢は「電気屋の女社長」。継ぐつもりだったが後に倒産した。借金を返済した時はほっとした。しかし「会社を残したかった」と、悔しさは今も残る。現場で働く人の気持ちも分かる。会社経営の大変さも経験した。過去の経験が今に生きている。「皆さんの役に立てるのがやりがいです」

各企業からは以前にも増して「働き手がいない」という声が聞こえ、電気工事士の人材確保と育成が業界全体の課題だと感じている。「インフラを整備する生活に欠かせない重要な仕事。資格に加えて知識や経験も必要。それなのに、他業種と比べて賃金が低く転職者も多い」と、表情が曇る。「建築業界は休みが取りづらく、3K(きつい・汚い・危険)のイメージが大きいのでは。一人前になるまでに時間がかかることも要因かもしれません。少子化も影響しているのかな」と複数の原因が重なっていると分析している。

SNSで仕事や業界について発信しているのも「多くの人に仕事の価値を認めてほしくて。電気工事士の地位向上につなげたい」と、言葉には力が入る。目指すのは「キレイ・キラキラ・カッコイイ」の新3Kだ。
 

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「今の自分に何ができるか・何をすべきか」を問い続け、新しいことに挑戦してきた。2年前には、ベテランが望ましいとされてきた業務に工業高校を卒業したばかりの新人を任命。「ベテランがやる業務を今から経験させたら将来は魅力的な人材になると思って。ほかのメンバーの協力もあって、今では現場での問題点を先輩に質問するなど、仕事への責任感が増してきた」と成長を喜ぶ。

自身が現場で働いていた頃は、周りは男性ばかり。「素っ気ない人もいて、時には女性であることに劣等感を感じました。丁寧な仕事を心がけることはもちろん、職人の皆さんが楽しいと思える現場にするために冗談を交えながら話しかけ続けたら、相手から声を掛けてくれるようになったんです」。そう笑えるのは、コミュニケーションを大切にして相手に真剣に向き合ったからこそ。

「コンセントや照明器具の取り付けなどは、きめ細かな仕上げが求められる。女性にできることもたくさんあります」と言う。男性に負けたくない一心で同じ作業をこなし、筋力など肉体的な差を感じた経験から気づいたのは「男女平等ではなく、『男女共同』が最も効率が良い」ということだ。「それぞれの良さを生かして尊重し合い、無事故でお客さまが満足する仕事が理想」

妊娠や出産に伴う制度や、トイレの問題など、女性が働きやすい環境を整えることが容易ではないことは理解している。しかし、「年齢や性別を問わずに、『まずは行動して、その人ができることから始める』のが人材不足の解消や業界発展につながるのでは」

業界を思う気持ちはあふれるばかりだ。


 



 九州の技能大会で優勝経験も 


 

24歳のときに出場した、配線器具の取り付けの正確さとスピードを競う「全九州電気工事技能競技大会」で、県勢で初めて優勝した。さらに大会史上初めての女性優勝者ということもあり、ダブルの快挙だった。

初めて同大会の県予選に出場したのは20歳のとき=写真。「日中は現場で作業を行い、夜は大会に向けて必死に練習した。それなのに『仕事もせずに大会に来た女の子』『女性だから特別扱いされてきたのでは』と偏見の声もありました」

大会で優勝するため、練習場所を提供してくれた人々や、技術のアドバイスをくれた電気工事士の先輩、厳しい言葉を言いながらも精神的にサポートしてくれた母。「恩返しの意味でいい成績を収めたかった」という。

電気工事の仕事を続けることや技能大会への出場、資格取得は「今後の電気工を目指す女性の見本になればと思ってやってきた」面もある。「今後は組合として、年齢や性別に関係なく電気工事の仕事ができる環境作りをサポートしたい」と語る。



 夫のアドバイスも仕事に生かす 


数年前に結婚した夫は農業を営んでいる。「週末は農作業にかり出されるんですよ」とほほえむ表情からは楽しんでいる様子がうかがえる。最近ではゴーヤーやジャンボシシトウ、島トウガラシなどの収穫を手伝ったそう=写真。

以前は企業の経営者だったという夫からは「経営者目線の話を聞き、各企業の代表との接し方などをアドバイスしてもらうこともあります。育ち方や生き方が異なるからこそ刺激になりますね」

趣味は肉を食べること。「おいしいお肉を食べるのが幸せ」と笑顔を見せる。


那覇電気工事業協同組合 事務局長 棚原さやかさん
プロフィル/たなはら・さやか
1978年、沖縄市出身。県立高校の普通科に通いながら、2年生の時に第二種電気工事士の資格を取得。高校卒業後は具志川職業能力開発校に進学。19歳で両親が営む電気工事店に入社。29歳で公共事業を請け負う会社へ転職。40歳を期に那覇電気工事業協同組合へ入組。42歳から現職。保有資格は第一種電気工事士、1級電気・1級管・1級土木施工管理技士。

 


今までの彩職賢美 一覧


文・比嘉知可乃
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1425>
第1859号 2023年8月10日掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
比嘉知可乃

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新人プランナー(企画・編集)
1990年生まれ、うるま市出身。365日ダイエット中。
真面目な話からくだらない話まで、「読んだ人が誰かに話したくなる情報」
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