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2023年5月25日更新

良かれと思ってしたことが…子どもの将来の足かせに

子どもたちが自分らしく生き抜くために必要なスキルとは何だろう? 進路について話し合うことの多いこの時期、親として知っておきたいこと、子どもへの声掛けの仕方、関わり方などを、人材育成に携わる(一社)グッジョブおきなわプロジェクト代表理事の喜屋武裕江さんに聞きました。



社会の変革や多様化が進む今、終身雇用や学歴重視の価値観など、親世代の当たり前や常識は通用しなくなってきている。企業や社会が重視する、自分で考え行動できる「人間力」を育むために親ができることは何だろう。人材育成に携わるグッジョブおきなわプロジェクト代表理事の喜屋武裕江さんは、「子どもの成長段階に応じた声掛けや対話、距離感を心掛けて」と話す。
 

成長に応じた対話と距離感がカギ

きゃん・ひろえ/(一社)グッジョブおきなわプロジェクト代表理事。家庭・学校・地域・企業・行政と多角的にキャリア教育、人材育成に携わる。キャリアカウンセラーとして就活学生やニート・フリーターと関わった経験も多数。個に対する支援と、個を取り巻くコミュニティー、経済・産業界に対する働きかけを同時に行う「地域連携型キャリア教育」「産学協働型産業人材育成」など、人に焦点をあてた沖縄発の地域活性プロジェクトを数多く手がける。



必要なのは正解でなく考えて分析する力

先行き不透明な時代を生き抜く人材育成の一環として2025年、大学の入試改革が行われる。それに向け小中高では学習指導要領も変化。高校では先生が教えるのではなく、生徒が自分で探究するスタイルに変わりつつある。喜屋武さんは「私たち親世代は何が正解かを学びましたが、これから求められるのは考えて分析する力。背景には国際社会との競争があります。多くの企業が、学歴、資格などではなく、人間力のある人、一緒に闘える人を求めています」と話す。



正解のない時代を生きる子どもたちは、何事も自己責任で決める必要がある。「どこに行っても自分らしさを失わず幸せに生きるには、自分の弱さ、強さを知り、足りない技術や知識を取り入れながら、変化していけることが大切です。そのためにも、幼い頃から失敗や成功をたくさん経験した方がいい。家庭は大人になるための良い実地訓練の場と考えて」と喜屋武さん。具体的には、子どもに家族としての役割を持たせ、自分で考えさせ、その間は待つことを心掛けよう。「やりたいことは、やるべきことをやってから、を習慣づけましょう。家族はチーム。役割を果たさなかったら誰がどう困るかを伝えることで、物事の影響力を理解でき、社会と関わる力が養われます。入学・進学期は子どもに意識付けするいい機会」と話す。


得意と好きは違う失敗も成功も理由を分析

沖縄県の離職率は他府県に比べて高い。特に、就職後1年以内の離職率の高さが懸念されている。その一因に喜屋武さんは「自己理解の不十分さ」を挙げる。「自分は何ができて何ができないのか、好きなことは何かを知るには、子どもの時から失敗も成功もその理由を分析するのがオススメ。親はそのサポートをしましょう。失敗した時は思い切り慰めた後に『どうして失敗したのかな?』、成功した時も一緒に喜んだ後に『うまくいった理由は何だろう?』と声掛けを。繰り返すうちに子どもに気付きや自信、感謝が生まれ、自己理解が深まりますよ」



例えば、野球部で頑張りながらプロを目指す子の場合、「具体的に野球の何が好きなのかを知っているといい」とアドバイス。ケガなどで選手になれなかったとしても、トレーニングが好きならトレーナーに。チームで何かを達成することや野球に関わることが好きなら指導者やチームマネジメント、広報もある。活躍して目立つことが好きならプロゴルファーに転向したり、ケガした経験から体の構造に関心を深めたなら、医療系に進む道もある。「何が好きか、得意かを知っているだけで、職業の選択肢はとても広がります。自分が得意だと思っていることを多角的に見る力があれば、社会に出た時に役立ちます」と力を込める。


親こそ自分の人生を楽しみ「大人」のロールモデルに

子どもに大人へのステップをどう踏ませるかを考えるとき、「親は一番身近なお手本でありロールモデル」と喜屋武さん。「心も体も疲れ果てた親を見たら、子どもは親や大人になりたくないと感じてしまうはず。特にお母さんは、女性が輝くこと、学ぶこと、おしゃれを楽しんで」と呼び掛ける。自分で働いたお金や自分の時間で自分にご褒美を与える姿に、子どもは「そんな大人になりたい、働きたい!」と憧れを持てる。親という枠を外し、人生の先輩としてどういう姿を見せるかも大事なポイントとした。

 

家での接し方のヒント!

 
 Q  ことし小学校にあがった娘がいます。今からできることは? 
 自分のコトを一つ、家族としての役割を一つ、やるべきコトを割り当てて。社会性・人間力の育成に

小学1年生からは自律と自立を育む良いタイミングです。例えば、自分の上履きやパンツは自分で洗う、ゴミ出しや玄関を掃除するなど、自分と家族のことについて、一つずつでいいので役割を与え、家族というチームであることを認識させましょう。

下着を自分で洗うことは、男女ともに大事。親がかまい過ぎると後々、体の成長にうまく対応できず、いつまでも大人になれない。男の子は夢精で下着を汚してしまった際、どうしていいか分からず、布団から出られなくなって、長期欠席の理由になることもあります。

また、学校まで親が車で送迎するときは、せめて校門の100m手前で降ろし、親に「ありがとう」と言わせること。自分で歩く距離は学校へ行く心の準備になります。先生や友達にあいさつすることも大事。周囲に感謝する心を育て、社会と関わる力になります。


 Q  何を聞いても「わからん」と中3の息子。どう接すればいい? 
 否定せず、受け止めることから

中学生は自分の考えていることを言語化することがまだ難しい年代。進路など大切なことを聞いても「わからん」と言われると、親としてはついイラっとしてしまいがちですが、そこはガマン。「何が分からないの?」「また来週、話そうね。それまで一つでもいいから考えてごらん」と自分で考えるように促しましょう。

子どもは失敗や成績への不安があったり、母親の求める正解が分からず、反抗心から素直に言えなくて「わからん」と答えていることもあります。お母さんのことが大好きだからこそ悩むんです。母親になかなか素直になれないなら、父親と無言でもいいから過ごす時間があると信頼関係が築ける。「君の人生だよ」「信じているからね」と声が掛けられるといいですね。ほかにも祖父母や部活のコーチなど、子どもが信頼している別の大人・キーパーソンに聞いてもらうのもいい。難しい時期の子育ては一人で抱えず、チームプレーで。子どもの感情を表情や体から読み取るようにし、心は離さず、適度な距離を持つことです。


 Q  心配で、子どもの進路に、つい口出ししてしまいます 
 
ミスリードに注意を

口出ししてしまう背景には、親自身のコンプレックス、「私のような苦労を子どもにはさせたくない」との思いがあるのではないでしょうか。良かれと思ってやっていることが逆に子どもには邪魔かもしれず、結果的にミスリードにつながることも。子どもの将来に、手かせ足かせを掛けることになるかもしれません。子どもに残せるもので最も大切なのは、愛される力と愛する力だと思います。親の人生と子の人生は違うもの。親は子どもの人生の最後までは伴走できません。自分と同じように愛してくれる人とつながる力を育みましょう。
文/赤嶺初美(ライター)
『週刊ほ~むぷらざ』家庭でできるキャリア教育
第1868号 2023年5月25日掲載

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