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彩職賢美

2022年5月26日更新

[沖縄・輝く女性を紹介]彩職賢美|(一社)沖縄県歯科医師会会長 米須歯科医院院長の米須敦子さん|歯の健康守り 人生を豊かに

いつまでもおいしく食事をし、笑顔でおしゃべりするためには、お口の健康が大切です。地元の沖縄市で歯科医院を開業して30年余り。「歯科医療で患者さまの生活の質(QOL)を高めていきたい」と、予防にも力を入れた診療を行っています。昨年から県歯科医師会の会長となり、今後も歯科医療を通して、県民、特に子どもたちのより良い人生を応援していきたい。

(一社)沖縄県歯科医師会会長 米須歯科医院院長の米須敦子さん|歯の健康守り 人生を豊かに

QOL高めるトータルケア

(一社)沖縄県歯科医師会会長
米須歯科医院院長
米須 敦子さん


沖縄の歯科医療の充実を
次世代の支援・育成に力


虫歯や歯周病など、悪いところだけを診るのではなく、口の中全体の環境を整える「フルマウス治療」がモットー。診療時には毎回、歯科衛生士が磨き残しをチェック。患者一人一人の状態に応じて、歯ブラシの当て方や力加減など、効果的な口腔(こうくう)ケアの方法をアドバイスする。「患者さんには、ご自身が日常でできることを意識してやっていただきます。専門家と患者さんがタッグを組んで取り組むと治療効果も予防効果も高まります」

1991年6月に開院。学校の歯科検診医を務め、中学校では職業講話の講師に。訪問治療も行うなど、地域との関わりを大切にする。

コロナ禍で、最も危険な職業と言われた歯科医療。しかし従来、診療時のマスク、グローブ、ゴーグル着用が常の世界。「さまざまなウイルスや細菌などへの感染を防ぐため、歯科医院では普段から予防策をしっかりと講じています。ですから、歯科医院が発生元のクラスターは、全国で1件もありません」

コロナ直後は医療用ガウンが手に入らず、90リットルサイズのごみ袋を防護幕替わりに、ビニール越しに治療を行うなど独自の対策で臨んだ。その後は、基本的な感染対策に加え、専用の吸引器具なども導入。患者もスタッフも安心して通院できる環境を整える。「コロナ禍で通院を控えた患者さんには、口腔環境の悪化が見られた。コンスタントに通われていた方との差は大きく、改めて定期的受診の重要性を実感しています」

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明海大学歯学部を卒業後、東京や埼玉の歯科医院に4年間勤め帰郷。地元・沖縄市で開院した。最新の歯科医療を学ぶスタディーグループに所属。毎週末、東京や福岡に飛び、研修を受ける生活を10年以上続けた。また、カンボジアやトンガなどへの歯科治療ボランティアにも参加するなど、探究心と行動力で技術と知識の幅を広げた。「休診などで、患者さんにはご迷惑もお掛けしたと思う。それでも、『実験台のように治療していいから、学んだものをほかの人に生かしなさい』と言ってくださる、地元の粋なおじさまたちがいて。患者さんに育ててもらって、今がある」と感謝する。

96年に県歯科医師会中部地区役員を務めた。同会の常務理事や専務理事、副会長などを歴任し、昨年6月、会長に就任した。女性の会長就任は全国でも初めて。「女性の歯科医師が増え、歯科大学への入学者も女性が半数を占める時代。男女差なく、お互いが積極的に協力して関わる環境づくりに努めたい」と語る。

県民の歯の健康を支えるため、同会ではさまざまな活動を行う。米須さんが特に力を注ぐのは、次世代支援だ。県内数カ所の子どもの居場所で行った口腔環境の調査結果に衝撃を受けた。家に歯ブラシがない子や「ご飯を食べさせてもらえなくなるから」と、親に歯の痛みを言い出せずにいる子。「衛生用品販売企業による歯ブラシの配布や、中学卒業までの医療費無料を周知することなどで、受診につなげたい」。歯科治療が困難な子どもたちの、環境改善を目指す。

沖縄歯科衛生士学校の学校長も兼務。歯科医療を支える次世代の育成も課題だ。「社会人や男子の入学も増えています。資格の有無で、就ける職業や収入も変わる。だからこそ、学力だけでなく、学生たちの“なりたい気持ち”を大切にしたい」。苦手科目がある合格者には、プレスクールで課題を出し、入学までに学力アップを図るなど、国家試験に合格できる指導と学びの環境を整える。

少子高齢化が進む中、「子どもたち、人財は宝。医療と教育に格差があってはならない」。強い思いで沖縄の歯科医療と未来へ思いをはせる。



 米須さんに聞いた! 虫歯予防のポイント 

6月4日から10日は、歯と口の健康週間。他府県に比べて、虫歯率が高いという沖縄。「コロナ禍で子どもたちの虫歯率は、前年に比べ0・4ポイント増えています」と米須さん。虫歯予防のポイントを教えてもらった。

虫歯のなりやすさに影響するのは、歯の強さと菌の多さ。予防のこつは、食事の取り方と歯の磨き方です。予防ポイントの一つは唾液です。虫歯菌が出す酸を唾液が中和することで、虫歯になりにくくなります。食事の時間も重要。ダラダラと食べ続けるのは、唾液の質が悪くなってしまうので要注意です。

口の中に虫歯菌が多くいるのは、朝起きた直後です。虫歯予防には食後はもちろん、起き抜けのうがい・歯みがきがお勧め。高齢者の誤嚥(ごえん)性肺炎の予防にも効果的です。

また唾液には、溶け始めた歯を修復して元に戻そうとする「再石灰化」という働きもあります。食事をとらないと唾液の分泌が減り、再石灰化が行われなくなります。そうなると口の中に汚れもたまりやすくなるため、虫歯菌が増えることに。食べ物をしっかりかんで食べると唾液の分泌が促されます。さらに、腸を刺激して便通も良くなりますよ。

虫歯予防には、フッ化物の活用も効果的。フッ化物配合の歯磨き粉を使うことで、歯の再石灰化や歯質の強化などが促されます。

米須歯科医院 電話098(939)6123


 頑張った自分へのご褒美 一目ぼれの絵画 
頑張った自分へのご褒美 一目ぼれの絵画
歯科医院の待合室には、絵や米須さんの母親が撮った写真などが飾られている。中でもお気に入りは、開業当時に「温かみのある配色にひかれて」購入した、ロイ・フェアチャイルドの絵=写真。研修で毎週のように通っていた東京の画廊で見つけて、一目ぼれ。「でも、開業したばかりで借金も多く、高価で購入はあきらめていました」。

それでも絵の前から離れられず、ずっと眺めていた米須さん。「そこまで気に入っているなら、買わないと後悔しますよ」。画廊オーナーの一言が、思い切って購入する後押しになった。「絵は値段ではなく出合いが大事。頑張っている自分へのご褒美にしようと思いました。この絵を見ると、初心に返ります」

画廊オーナーは、絵に合わせて額縁までしっかり考えてくれ、額装して沖縄まで送ってくれたそう。絵画は30年たった今も色あせることなく、院内を彩っている。


 歯科医の仕事 子どもたちに伝える 

沖縄市内の中学校の依頼を受け今年、職業講話を行った。「歯科医院というと歯科医のイメージが強く、歯と口の中の健康づくりをサポートする歯科衛生士や、入れ歯などを製作・加工する歯科技工士と助け合っていることを話すと、『知らなかった』という反応が多かったですね」と振り返る。

講話後、感想や質問がたくさん届き、「資格の持てる職業を知ってもらうことも、将来の選択肢を増やす機会になる」と実感している。

 


(一社)沖縄県歯科医師会会長 米須歯科医院院長 米須敦子さん
プロフィル
こめす・あつこ
1962年生まれ、沖縄市出身。明海大学歯学部を卒業後、都内の診療所や埼玉県内の歯科医院勤務を経て、91年6月に米須歯科医院を開業。96年に県歯科医師会中部地区役員となり、以来、常務理事や専務理事、副会長などを歴任。2021年6月から会長を務める。


今までの彩職賢美 一覧


撮影/比嘉秀明 文/比嘉千賀子(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1403>
第1816号 2022年5月26日掲載

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