彩職賢美
2022年5月5日更新
[沖縄・輝く女性を紹介]彩職賢美|「女性を元気にする会」代表のゴージャス理枝さん|美のサポートで 女性を自立へ
美を通して沖縄の女性を元気にしたい!と、「女性を元気にする会」を立ち上げたのが7年前。ワンコインで美容と健康ケアを体験できるイベント「トータルビューティフェア」を軸に、女性の自立支援と子どもの貧困解決に取り組んでいます。コロナ禍では生活が苦しくなった世帯への食料支援も展開。みんなが笑顔で暮らせる社会をつくっていきたい。
行動変えるきっかけづくり
「女性を元気にする会」代表
ゴージャス理枝さん
子どもの貧困解決目指す
150%の力でやり切る!
「こっちは子どもたちが食べ盛りだから、お米は2袋。小さい子たちには、キャラクターもののお菓子がいいよね」。家族構成と子どもの年齢、配達地域を記した箱に、スタッフと2人で2週間分の食料品や生活用品を仕分け。専用LINEに届く支援依頼の緊急度に応じて、北は今帰仁村から、南は糸満市まで直接届ける。
2020年から始めた個人宅への食料支援は、2千件を超えた。個性的な名前で活動するのは「いざという時、すぐ思い出してもらえるように」と考えてのことだ。配達時には必ず、現状や困り事を聞く。食糧支援は、困り事を抱える女性たちと、直接つながり合える機会だと捉えている。
「出会ったお母さんたちが元気になり、自立に向けて自分で考え、行動することを重視。生活や自分の気持ちを立て直すために必要な情報と、私なりのアドバイスをお伝えしています」。時には、行政への橋渡しも担う。支援先からは感謝と共に、「生活が落ち着いたら、少しずつ恩返ししていきたい」と、前向きな声も届いている。
支援品は、個人や企業、団体からの寄贈。取材時にも、デニッシュパンの缶詰がケースで届けられた。貧困の現状を知ってもらおうと講話なども積極的に行い、協力者の輪は広がっている。「一人一人ができることを行動に移すことで、本当のユイマールが生まれる。人の温かさは、前に進む力になる」
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専門学校卒業後に語学留学した、オーストラリアでの体験が、女性の美と自立を意識した原点。「社会で活躍している女性たちが、おしゃれでカッコ良くて。見た目が変われば気分も変わり、行動も変わる。沖縄の女性がもっと活躍できるよう、外見から変えたいと思ったんです」
帰国後は県内のコンビューター会社に就職。社員は男性ばかりで、女性は結婚や出産で辞めてしまう。「それが悔しくて。力のある女性たちを取り戻したいと思いました」。産休や育休を整備するなど、女性が働きやすい環境づくりに注力。自身は取締役になり、会社はいつしか社長以外は全員女性社員に。「本当にやりたいことへ向かう、区切りになりました」
退職し、08年に那覇市内にエステサロンをオープン。自身も2児を育てるシングルマザー。家計に余裕がなくても気軽に来店できるよう、料金を設定した。それでも、本当に手助けしたい人はなかなか来ない。「待つのではなく、仕掛けよう」。15年に女性を元気にする会を設立。すぐにワンコインでさまざまな美容・健康ケアが受けられる「トータルビューティーフェア」を開催した。
親子で楽しめる企画が評判を呼び、3回目には目標だった来場者1千人を達成。「やると決めたら、150%の力でやり切らないと気がすまない。私が目標をクリアすれば、できないと思い込んで動けずにいる女性たちの励みになると思った」
児童養護施設の子どもたちとの出会いで、活動に拍車が掛かる。「冬場に半袖で縮こまっている子、底が外れた靴をはいた子。沖縄の貧困の深刻さにがくぜんとしました」。SNS発信で集めた大量の衣類を施設に届け、イベントではフードドライブを始めた。母子寮や児童養護施設を毎月訪れ、無償で美容ケアも提供する。
「子どもは親を見て育ちます。お母さんが楽になれば、子どもの話も笑顔で聞いてあげられる。それが、子どもたちの人生を変えるきっかけになれば」。負の連鎖を断つ。その強い思いを胸に、支援を続ける。
来場者4000人 トータルビューティーフェア
2015年の会設立後、わずか2カ月で始めた「トータルビューティーフェア」=写真(同会提供)。美容や健康ケアに関する多彩な施術が500円から体験できるほか、子どもたちのバイオリン演奏やダンスといったチャリティーコンサートやフードドライブなど、親子で楽しみながら福祉支援にも参加できるのが魅力だ。
コロナ前は年2回の開催。初回300人だった来場者は、19年には2日間で4千人が足を運ぶまでに。「人が集まることで、交流も支援の輪も広がる。初回が終わった時、1千人を超えたら、コンベンションセンターを借りてやると周りに宣言。本当に実現できたことは、自信になりました」。コロナ禍でイベント開催が難しい時期、再開の企画を温めている。
■女性を元気にする会
https://joseigenki.com
「ゴージャス」な名前の由来は…
1度聞いたら忘れない、個性的な活動名。「子どもの頃からゴールド(金)が好きだったので、インパクト重視でつけました」と、ゴージャスさん。一緒に活動するスタッフのマツ毛美紀(本名・兼元美紀)さんは、担当するまつげエクステがネーミングの由来だ。
「ゴールドもゴージャスも、言葉を聞くだけで、なんだかお姫様気分になりません?」。そんな思いから、経営するエステサロン「ビューティーサロンゴージャス」も、白を基調にゴールドとシャンデリアでキラキラ感をプラスした内装になっている。
サバイバルなオーストラリア留学
県外での季節労働で資金をため、20代で留学したオーストラリア。車を購入して出掛けた国内一周の一人旅は、「命懸けのサバイバルだった」と苦笑する。
魚を釣っていてワニに食べられそうになったり、カンガルーに体当たりされて車がへこんだり。お金が尽きて、1週間の食料が1斤の食パンだった時期も。「田舎ではフロントガラスを割られ、物取りにあって。窓ガラスのない車で移動する私を見かねて、モーテルのオーナーが1週間タダで泊めてくれたんです。人の温かみがありがたかった」
必死に生き抜いた体験が、芯の強さと、何事にも全力投球で取り組む土台になっているよう。
プロフィル
ごーじゃす・りえ 本名・赤嶺理枝(あかみね・りえ)
1971年、大阪府生まれ、小学5年生のときに那覇へ移住。専門学校を卒業後、オーストラリアに語学留学。帰国後は、県内のコンピューター会社に11年勤め、取締役を経て退職。2008年に「ビューティーサロンゴージャス」を開業。15年ボランティア団体「女性を元気にする会」を設立。代表を務める
[今までの彩職賢美 一覧]
撮影/比嘉秀明 文/比嘉千賀子(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1402>
第1813号 2022年5月5日掲載