介護
2021年11月11日更新
[沖縄]11月11日は介護の日|ちょっと待って!「家族のリタイア」
司会業で活躍中の許田エミさん。約30年前から家族の介護を続けている。きょうだいがなく、叔父叔母にも家族がいなかったため、介護の責任を一人で担う。どのようにして仕事と両立させているのか話を聞いた。
許田さんの経験から 周囲の理解と支援が力に
きょだ・えみ/1966年、沖縄市出身。司会者として、テレビ、ラジオ、CM、披露宴で活躍。両親と母方の叔父、叔母の4人の介護を仕事をしながら約30年続けてきた。介護に関するさまざまな支援を活用してきた経験を持つ。
約30年にわたり、両親、母方の叔父、叔母と4人の介護をしてきた許田エミさん。一人っ子の許田さんは介護を共にするきょうだいもいない。同居はせず、仕事を続けながら、子どものなかった叔父、叔母と母の最期をみとり、現在は老人ホームにいる父親を介護している。
「介護と仕事との両立は一人で抱えず、制度を活用し、助けを借りること。私は地域包括支援センターへよく相談に行った。介護は情報収集が大事。何でも相談した方がいい」と話す。
一人暮らしだった叔母は、ペンダント式の送信器を押すと自動的にコールセンターを通して許田さんに連絡がくる、行政の「緊急通報システム」を活用した。食事や入浴介助はホームヘルパーに依頼。「叔母の告別式の後、お世話になったヘルパーさんたちが来てくれ、あの時は大変だったねと思い出話で笑ったんです。長年、介護を一緒に頑張ってきたからこそできること。すごくありがたくて救われました」と話す。
4人同時に介護していた時期もある。許田さんはいつ呼ばれてもいいように、自分の自宅にそれぞれの入院セットを用意し、非常時に協力してもらえるよう、隣近所にも声を掛けていた。父親が外で転倒したときは「近所の人が見つけ救急車を呼んでくれた」という。
母の状態が悪化した時期は、披露宴の司会依頼を数カ月間ストップしたり、担当していたラジオ生放送では、別の曜日担当者が対応してくれた。「仕事の現場が理解し支えてくれたのは本当に心強かった」と感謝する。
一人で抱えず相談を
ある日、病院での用事を済ませ、立ち寄ったカフェで新商品の試食を勧められた。「人から優しくされて思わず涙が出たんです」。心身ともに疲労困憊だった。それでも仕事を続けられたのは、周りのサポートと「仕事を辞め自分の生きがいがなくなること」を恐れたから。「介護は良くなることより、悪くなることの方が多い。自分に合うストレス解消法を見つけて。私は愛犬や愛猫の存在にも癒やされました」と話す。
カフェでの出来事は今も許田さんを温める思い出だ。「病院の待合室で、疲れた様子で付き添う家族を見ると、よく頑張っているね。大丈夫だよって声を掛け、コーヒーをおごりたくなる。話せる人がいるってすごく大事。介護は一人で抱えないで。助けを求めて」。優しく呼び掛ける言葉に気持ちがこもる。
女性一人でも介助が楽! 許田さんは、障がい者でも乗り降りがしやすいよう座席が回転する仕組みに改造できる車を購入し、13年間使用した=写真。「福祉車両は女性一人でも介助が楽なので、在宅介護をしている人は活用すると便利。当時はめずらしかったけど、今は、介護タクシーやレンタカー、リース、中古車も豊富にあるので、それぞれの状況に合わせて検討してみては」と話す。
家事代行で在宅介護を支援
介護福祉士として介護施設で働いていた経験を生かし、自費介護サービスの提供をしている「家事代行COCONA(ココナ)」代表の喜納雅子さん。要介護者に同居者がいる場合の掃除や通院以外の外出介助、見守りなど、公的介護保険サービスでは対応できない部分をサポートしたいと起業した。
電球の交換や扇風機の掃除、買い物同行などを利用した高齢夫妻からは、「家庭の物事がスムーズに行くようになった」と喜ばれたと話す他、冠婚葬祭に参加するときの送迎、付き添いも好評という。
喜納さんは「家事代行も上手に利用して、介護が必要な人も、介護をする人も、笑顔で過ごせる時間が増えるといいなと思います。気軽に相談してほしい」と笑顔で呼び掛ける。
きな・まさこ/家事代行COCONA代表。介護福祉士の経験を生かし、自費介護サービスなどを提供
関連記事:ちょっと待って!「介護職のリタイア」
「介護難民」にならないために
文・赤嶺初美(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』特集・11月11日は介護の日|ちょっと待って!介護のリタイア
第1788号 2021年11月11日掲載