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2021年9月23日更新

[沖縄・輝く女性を紹介]彩職賢美|書家の上間志乃さん|書で表現追求

書道は、習字とは違う、表現する芸術です。作品を見たときに「面白い」とか、心に引っ掛かり足を止めて見てもらえるような作品を書きたい。そして、書道を次世代へとつなげていきたいです。

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上間志乃書道教室

私らしく。書道を次世代へ

書家
上間 志乃
 さん

高校と教室で指導 一緒に成長したい

「書道と習字は別ものです。きれいに書くことが大事な習字と違い、書道は表現する芸術。自分の内面と向き合う時間や楽しむ心が必要です。自分の弱さや長所を知るなど、気付きや学びが多く、書道は自分の成長が作品によって自分で感じられる。それも書道の魅力です」

5歳から習字を始めたという上間志乃さん(43)。部活動で一時中断したが、再び学び始めたときに師事した盛島清盦(せいあん)氏や高校書道教員の我喜屋明正(あきまさ)氏との出会いが書道の扉を開いてくれた。

志を決めたのは、高校2年の県大会で書いた作品が代表に選ばれ、九州大会へ参加したとき。沖縄以外は、書道の強豪校出身の生徒ばかりで作品はどれも「自分の表現したい思い」が込められていた。「衝撃だった。字って、きれいに書くだけのものじゃないんだと気付いた」。戻ってすぐ「表現する書道がやりたい」と相談。書道を専門に学べ、恩師2人の母校でもある大学へ進学した。

入学当初は、学友らの意識やレベルの違いに圧倒されたが、書家として著名な新井光風(こうふう)教授に師事し、「書道の表現の幅広さ、楽しさを知りました」と振り返る。

卒業後は八重山高校で臨時の書道教員となり、書道部の顧問も務めた。かつて自分も経験した九州大会に、今度は引率者として生徒と参加。「喜びと同時に指導者としての反省も感じた」上間さんは、子どもたちを育てることへ思いを新たにした。

書家は、ひたすら自己研さんに努めながら書を究めるタイプもいるが、「私は人に教えながら、自分も学んでいくのが性に合っている」と笑う。平日は読谷高校の非常勤講師として書道を指導。金曜と土曜は教室で小中学生を中心に指導している。

「書道の指導は賞を取ることだけが目的ではない。目標に向かい取り組み、大きな舞台を経験すると、人は大きく成長する」と語る。これまで、九州、全国大会に参加したり、書道で台湾留学をする生徒もいた。以前八重山高校で指導した女生徒は、高校の書道教員になった。中城の教室に通う小2~小6の武島家の4人きょうだいは「字がきれいになってうれしい」とにっこり。その姿に「子どもたちの成長が刺激になる。私も上手にならなきゃって励みになるんです」と目を細める。


「多くの人が近寄りがたい印象を持つ書道をもっと身近なものにしたい。足を止めて見たいと思える作品を書きたい」と話す上間さん。作品のテーマを決めるときは、書道に詳しくない人が見るときの視点も大切にしていると言う。

次の展示会に出品する作品には、コロナ禍を意識した言葉と詩文を選んだ。鋭気を養うの意の「養鋭」(表紙作品)は力強さを、もう一つの詩文では、日々を大切に過ごしてほしいと願い、繊細さを表現した。

「自分がやりたいことを表現するためには日々の練習と感性を磨くことが大切」と語る。過去の優れた筆跡を手本に学ぶ「臨書」を「どれだけやったかで表現が変わり、幅が広がる」とし、その指導にも力を注ぐ。生活では、夏の暑さ、冬の寒さ、雨が降るときの湿った空気など、自然を五感で感じるよう、なるべく冷暖房に頼らず暮らしている。「『雨を聴く』という言葉が好き。自然とともに生きるという意味で、雨を聴ける人になりたい」と笑顔を見せる。

「書道は、なくても生きていけるけど、あると心が豊かになるもの。いつか大人のための書道教室をやりたい。表現としての書道を広げていきたい。学校や地域で教えながら、自分も学び、高める。そんなふうに私らしく書道を次世代につなげていきたい」と瞳を輝かせた。



 目に留まる筆文字を意識  
上間志乃さん コラボレーション
書道を純粋に楽しんでもらえるよう、いろいろな取り組みをしている上間さん。デザイナーである夫の実さんとのコラボレーションは「書への新しい視点をもたらしてくれる」と語る。名刺や印のデザイン=写真=を担当したときは、「私自身の表現としてではなく、どうやったら皆さんに見てもらえるだろうと、アイキャッチとしての筆文字を考え、意識することができるようになった」と振り返り、「今後も書道という伝統を守りつつ、より多くの人へ伝わる書にも取り組んでいきたい」と意欲を見せる。


書と触れる場所を増やしたい

上間志乃書作展

コロナ禍で多くの展示会が中止や延期になる中、書道用品専門店が大きな打撃を受けていることを知った上間さん。「つぶしてしまうんじゃなくて、コロナの中でできることをやろう」と昨年11月、書道用品専門店丸正の2階スペースを借り、フローリスト宮﨑匠さんによる盛花と、陶芸家の宮城正幸さんによる陶器とコラボレーションした「上間志乃書作展」を開催した=写真。

上間さんは「書道を単独で展示するより、空間に書と花や器が一緒にあることで、互いが引き立てられ、心を潤す空間を提案できた」と振り返る。

現在は、タイムスビル3階ホールで開催中の、沖展会員・準会員の30~40代の若手中堅作家による作品展「okitenU50」に参加。期間は9月26日(日)まで。また、来年2月17日~20日には浦添市美術館で個展を開催し、その併催として、出身校である大東文化大学OBが4年に1回開催しているグループ展「大東文化大学OB書作展」を予定。「多くの人が書に触れる場を増やしたい」と意気込む。

■問い合わせ先
https://kokoroasobasu.localinfo.jp/


上間志乃さん
プロフィル
うえま・しの
1978年、宜野湾市出身。5歳から習字を習う。92年、書家の盛島清盦に師事。94年、普天間高校で書道教師の我喜屋明正に出会う。高校3年で沖展に初出品、初入選。同年大東文化大学文学部入学。書家の新井光風に師事。卒業後、帰沖。県立高校で書道の臨時教諭、非常勤講師を務める。2008年、書道教室を始める。第56回、57回、59回の沖展奨励賞受賞。沖展準会員。現在、県立読谷高校非常勤講師。中城村で上間志乃書道教室主宰。

今までの彩職賢美 一覧


撮影/比嘉秀明 文/赤嶺初美(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1389>
第1781号 2021年9月23日掲載

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