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彩職賢美

2021年7月15日更新

[沖縄・輝く女性を紹介]彩職賢美|バイオリニスト 琉球交響楽団コンサートマスターの阿波根由紀さん|演奏の楽しさ子どもたちに

小学3年生で始めたバイオリンが、学生時代の私の唯一の取りえ。でも、演奏家になれるなんて、思いもしませんでした。いただいた機会に一つ一つトライし、人一倍失敗もして今の私がある。バイオリンを通して社会とつながり、演奏の楽しさ、何でもやってみようという気持ちを、後輩や子どもたちに伝えていきたい。

何でもやってみよう!

バイオリニスト
琉球交響楽団コンサートマスター
阿波根 由紀
 さん

人との出会い、機会を力に
チャレンジの数が自信生む


「バイオリンって優雅に見えますが、演奏中の頭の中は計算だらけ。弓を引くスピードや使う分量まで細かく考えながら弾いているんです」。創立20周年を迎えた琉球交響楽団(琉響)で、コンサートマスター(コンマス)を務める阿波根由紀さん(53)。6月には、琉響初の東京公演も実現。沖縄民謡や琉球古典音楽のフレーズを織り込んだ新作交響曲で、2000人の聴衆を魅了した。

コロナ禍で、東京公演は2度延期に。「鳴り止まない拍手をいただき、1年余り待っていてくださったお客さま、実現に向けて努力してくれた関係者には本当に感謝。ここからが新たなスタート」と気を引き締める。

琉響設立時からのメンバーで、コンマスへの抜てきは40歳の時。長男が通っていた小学校で、琉響が音楽鑑賞会を開いたことがきっかけ。「故・祖堅方正代表の計らいでコンマスをさせていただくことに。『指揮が振りやすい』とおっしゃっていただき翌年、正式に就任。何がチャンスにつながるか分からない」

何でも断らずに、やってみるのが信条。「実は気弱で最初は断りきれなかっただけ。失敗も山ほどしましたが、そのおかげでいろいろなことができるようになり、自信もつきました」と晴れやか。

数々のコンサートで活躍する一方、浦添市のジュニアストリングスや児童センターでバイオリン指導を手掛けるなど、子どもたちの育成にも積極的。「異年齢の仲間と合奏することで、協力しながら達成感を得ていく楽しみや、気づきがある。地域の人たちのために演奏する機会もあり、自分たちが社会の役に立っている感覚も得られたなら、大成功」



バイオリンを弾く同世代の子を見て、「かっこいい!」と憧れた。1年がかりで両親を説得し、小学3年生から故・数和子氏のもとで始めたバイオリンだが、「ご指導いただく先生たちが、口をそろえて『趣味でやっていきなさい』と言うほど、全く才能がなくて…」と笑う。

それでも、「私からバイオリンを取ったら何も残らない」と、高校3年生で音大受験を決意。受験生対象の講習会へ参加したことが一つの転機に。「あまりに演奏できない私を見かねて、後に師事する井上将興教授が、門下生の合宿に誘ってくださって。基本練習の大切さ、どんな練習がどれだけ必要か、ふに落ちました」

ダメもとで受けた東京音楽大学に合格。早朝6時から、練習に明け暮れる日々を過ごした。「休日は1日10時間、指から血を流しながら練習。でも、教授たちから演奏家は無理と言われていたので、沖縄に戻って学生の指導に携わることにしました」

県立芸大では非常勤演奏員として、学生たちの演奏をサポート。「学生たちをリードして音楽を作り上げていくため練習を重ね、レッスンを一緒に受けているうちに、演奏家としての力が育ったと思う」。地道な積み重ねが演奏家への道を開いた。

県教育委員会の事業では、へき地校での演奏会へ参加。人に思いを届ける演奏の素晴らしさを実感した、忘れられない体験だ。「子どものころから評価が伴う演奏ばかりしていたので、間違えずにうまく弾くことを考えていた。でも演奏を聞いた子どもたちの笑顔、涙を流す姿を見て初めて、演奏って楽しい!と思えました。子どもたちには楽しいと思える経験を早い時期にしてほしい」

2人の子どもを育てながら音楽活動が続けられたのも、同じ環境の仲間と助け合うことができたから。「私の体験を後輩や子どもたちに伝えることで、沖縄のクラシックを100年先まで引き継いでいけたら。どんなことにも、思い切ってトライしてほしい」と次世代へエールを送る。



 赤ちゃんから楽しめる公演 オーケストラを身近に  

琉球交響楽団提供

阿波根さんがコンサートマスターを務める琉球交響楽団は、地元沖縄で活躍している演奏家で構成される。年2回の定期演奏会のほか、小・中・高校での音楽鑑賞会や、「0歳児からのコンサート」=写真=など、赤ちゃんから大人まで、オーケストラを身近に楽しめる活動にも力を注ぐ。

昨年はコロナ禍で、演奏会の中止が相次ぎ、「楽器によっては、練習場所を確保するのもままならない状況。本番に向けてコンディションを整え、モチベーションを維持するのは大変でした」と、阿波根さんは振り返る。

7月23日(金・祝)には「沖縄版桃太郎」、8月28日(土)には「特別演奏会」を予定している。「たくさんの楽器の音色、音の重なり、迫力と、色彩豊かにさまざまな表現ができるのがオーケストラの魅力。音楽の楽しさを見て、聴いて感じてほしい」と話した。


 演奏する楽しさ伝える  


子どもたちへのバイオリン指導に力を注ぐ阿波根さん。個人レッスンで、幼稚園児から大人まで約20人を指導するほか、浦添市内の児童センターや音楽教室でも講師を務める。

一緒に弾きながら、ポイントをアドバイスしていくのが阿波根さんの指導スタイル。コロナ対策として、個人指導ではオンラインレッスンも導入。「音楽の表現方法はさまざま。子どもたちには、自由な発想で音楽を楽しみ、自分の長所を生かして、人生も音楽のように楽しんでほしい」と目を細める。


問い合わせ先/gon.yuk.tk.02@gmail.com




プロフィル
あはごん・ゆき
1968年生まれ、那覇市出身。東京音楽大学卒業後、県内高校の音楽科で実技指導の講師を務め、県立芸大では非常勤演奏員として学生をサポート。2001年、琉球交響楽団設立時からのメンバー。08年からコンサートマスターを務める。演奏活動だけでなく、指導者として活躍。幅広い世代にバイオリンの魅力を伝える。音楽ユニオン沖縄代表。浦添市文化協会音楽部会長。浦添市ジュニアストリングス指導員長。

今までの彩職賢美 一覧


撮影/比嘉秀明 文/比嘉千賀子(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』彩職賢美<1386>
第1771号 2021年7月15日掲載

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比嘉千賀子

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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

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