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2021年6月17日更新
[沖縄]6.23慰霊の日企画②|戦争体験者の声 動画で配信
戦争を体験していない若い世代の中には、沖縄戦を知りたい、次世代に伝えたいと自分にできる形で取り組んでいる人たちがいる。演劇グループ「演撃戦隊ジャスプレッソ」の渡久地雅斗さん(28)と照屋愛さん(28)は、戦争体験者の証言を朗読することでその思いを強くしている。
南城市が配信している戦争体験者の証言の朗読を担当した演劇グループの渡久地さん(写真左)と照屋さん
祖父母から戦争体験を聞くこともなかった照屋さん。沖縄戦に関心を持つきっかけとなったのが南城市役所文化課の市史編さん係専門員として証言の書き起こしや、戦争体験者への聞き取り調査だった。照屋さんは「それまでは沖縄戦のことは本などで知るしかなかったが、直接お話を聞くことで文字や写真では伝わらない体験者の思いを感じた。話の内容は重いのに、明るく話されているのが印象的だった」と話す。
戦争体験者の証言を朗読する渡久地さん。劇団の5人がそれぞれ朗読した
友人との話題に
照屋さんは証言を聞いて、当時と今と似ているところ、違うところ、話に出てきた人物はどうしてそういう行動をしたのかなど、沖縄戦について考える時間が増えたという。同世代の友人とも自分が知った沖縄戦のことを話題にするようになった。
照屋さんは劇団では裏方作業を担当しており、今回の朗読でも準備作業に携わった。証言に出てくる音声だけだと伝わりづらい専門用語を分かりやすい言葉に言い換えるといった台本づくりなどを手掛けた。「動画の視聴なら活字を読むより敷居が低いと思う。ちょっと見てみようかなという気持ちで沖縄戦に触れてほしい」と呼び掛ける。
朗読の配信に取り組んで、証言集に収録されたほかの証言も何らかの形で発信できればという思いを強くした。「戦争体験者も高齢になり、平和教育の授業などで学校に足を運ぶのも難しくなってきていると思う。こうした証言の動画が平和教育に生かされれば」と話す。
葛藤しつつも伝えていく
一方、劇団リーダーで朗読を担当した渡久地雅斗さんは、市から朗読のオファーを受けた時、普段はコメディーを演じている自分たちがやっていいものかと、最初は戸惑ったという。
「沖縄戦を誤った形で伝えてしまわないかという不安があり、それまで沖縄戦に関するオファーは受けてこなかった。しかし、葛藤を抱えながらも私たち若い世代が真剣に沖縄戦と向き合い、次の世代に伝えていく使命があると思った」と話す。
朗読の際は、できるだけ感情を込めないように読むことを心掛けた。「お芝居の先生から、朗読はあくまでも言葉をそのまま伝えるものと教わった。証言者がその時どういう感情だったか、聞いた人が想像してほしい」と説明する。
渡久地さんは、母校の読谷高校で毎年開催している慰霊の日の平和授業の一環として行われている演劇の演技指導もしている。「自分の高校時代は大勢の前でパフォーマンスをしたいという動機の方が強かったと思う。今の子たちは劇に対して真剣で、沖縄戦を伝えたいという意識を持って参加しているように感じる」と話す。
動画の配信をきっかけに沖縄戦を題材にした演劇のオファーも来ている。「いつか劇団でも沖縄戦を題材にしたオリジナルの演劇をしたい。沖縄戦にあまり関心がなくても演劇に興味がある人なら見てくれると思う。演劇に携わるものとして、自分たちなりに沖縄戦を伝えられたら」と話した。
ユーチューブで朗読を配信
朗読した五つの証言は、ユーチューブチャンネル「なんじょうデジタルアーカイブ」から視聴できる。同チャンネルでは、ほかにも南城市の各地域の伝統芸能や祭りの風景などさまざな動画を配信している。
関連記事 6.23慰霊の日企画①「ひめゆりの心 未来へつなぐ」
演撃戦隊ジャスプレッソ
リーダー 渡久地雅斗さん
制作担当 照屋愛さん
ことし3月、旧大里村出身者の戦争体験を収録した「南城市の沖縄戦 証言編―大里―」が発刊された。南城市は、証言集や沖縄戦について若い世代に関心を持ってもらうため、同書の中から五つの証言を朗読した動画を配信している。その朗読を依頼されたのが、照屋さん渡久地さんらが所属する演劇グループ「演撃戦隊ジャスプレッソ」。県内の若手俳優などで結成する。
祖父母から戦争体験を聞くこともなかった照屋さん。沖縄戦に関心を持つきっかけとなったのが南城市役所文化課の市史編さん係専門員として証言の書き起こしや、戦争体験者への聞き取り調査だった。照屋さんは「それまでは沖縄戦のことは本などで知るしかなかったが、直接お話を聞くことで文字や写真では伝わらない体験者の思いを感じた。話の内容は重いのに、明るく話されているのが印象的だった」と話す。
戦争体験者の証言を朗読する渡久地さん。劇団の5人がそれぞれ朗読した
友人との話題に
照屋さんは証言を聞いて、当時と今と似ているところ、違うところ、話に出てきた人物はどうしてそういう行動をしたのかなど、沖縄戦について考える時間が増えたという。同世代の友人とも自分が知った沖縄戦のことを話題にするようになった。
照屋さんは劇団では裏方作業を担当しており、今回の朗読でも準備作業に携わった。証言に出てくる音声だけだと伝わりづらい専門用語を分かりやすい言葉に言い換えるといった台本づくりなどを手掛けた。「動画の視聴なら活字を読むより敷居が低いと思う。ちょっと見てみようかなという気持ちで沖縄戦に触れてほしい」と呼び掛ける。
朗読の配信に取り組んで、証言集に収録されたほかの証言も何らかの形で発信できればという思いを強くした。「戦争体験者も高齢になり、平和教育の授業などで学校に足を運ぶのも難しくなってきていると思う。こうした証言の動画が平和教育に生かされれば」と話す。
葛藤しつつも伝えていく
一方、劇団リーダーで朗読を担当した渡久地雅斗さんは、市から朗読のオファーを受けた時、普段はコメディーを演じている自分たちがやっていいものかと、最初は戸惑ったという。
「沖縄戦を誤った形で伝えてしまわないかという不安があり、それまで沖縄戦に関するオファーは受けてこなかった。しかし、葛藤を抱えながらも私たち若い世代が真剣に沖縄戦と向き合い、次の世代に伝えていく使命があると思った」と話す。
朗読の際は、できるだけ感情を込めないように読むことを心掛けた。「お芝居の先生から、朗読はあくまでも言葉をそのまま伝えるものと教わった。証言者がその時どういう感情だったか、聞いた人が想像してほしい」と説明する。
渡久地さんは、母校の読谷高校で毎年開催している慰霊の日の平和授業の一環として行われている演劇の演技指導もしている。「自分の高校時代は大勢の前でパフォーマンスをしたいという動機の方が強かったと思う。今の子たちは劇に対して真剣で、沖縄戦を伝えたいという意識を持って参加しているように感じる」と話す。
動画の配信をきっかけに沖縄戦を題材にした演劇のオファーも来ている。「いつか劇団でも沖縄戦を題材にしたオリジナルの演劇をしたい。沖縄戦にあまり関心がなくても演劇に興味がある人なら見てくれると思う。演劇に携わるものとして、自分たちなりに沖縄戦を伝えられたら」と話した。
ユーチューブで朗読を配信
朗読した五つの証言は、ユーチューブチャンネル「なんじょうデジタルアーカイブ」から視聴できる。同チャンネルでは、ほかにも南城市の各地域の伝統芸能や祭りの風景などさまざな動画を配信している。
関連記事 6.23慰霊の日企画①「ひめゆりの心 未来へつなぐ」
撮影/比嘉秀明 文/池原拓
『週刊ほ〜むぷらざ』6.23慰霊の日企画②
第1767号 2021年6月17日掲載