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2021年6月17日更新

[沖縄]6.23慰霊の日企画①|ひめゆりの心 未来へつなぐ

4月12日、リニューアルオープンした「ひめゆり平和祈念資料館」。来館する若者は、祖父母も戦争を経験していない世代になった。戦争の記憶をどう伝えていくのか。同僚とともに企画、構成を担当した学芸員、前泊克美さんは、継承へのより強い思いを胸に前へと進む。

ひめゆり平和祈念資料館 前泊克美さん

ひめゆり平和祈念資料館
学芸員 前泊克美さん


展示を工夫し想像しやすく

学徒を身近に感じて/平和継承を自分事に


「来館者の世代の変化とともに、見られているものも変わり、長い文章を読まないなど、伝わりにくくなっていると感じるようになった」と話す学芸員の前泊克美さん。

沖縄戦に動員された、ひめゆり学徒隊の実相を伝える「ひめゆり平和祈念資料館」(糸満市、普天間朝佳館長)。展示を素通りする姿を見ることもあった。「自分事として捉えてもらうためには、伝える方法を考える必要がある」。職員みんなで話し合い、資料館の17年ぶりとなるリニューアルが決まった。

今回のリニューアルは前泊さんら戦後生まれの職員が、初めて担い手となった。沖縄戦の実相を分かりやすく伝えるためにどうすればいいか知恵を出し合い、展示に初めてイラストを用い、笑顔の生き生きとした日常が伝わる写真を増やした。

第1展示室「ひめゆりの学校」をテーマに、写真やイラストを交えて当時の女学生の学校生活が分かりやすく紹介されている第1展示室「ひめゆりの学校」をテーマに、写真やイラストを交えて当時の女学生の学校生活が分かりやすく紹介されている


 女学生の日常を紹介 

資料館は「戦争からさらに遠くなった世代へ」をテーマに展示を一新。ロビーに大きく掲示された修了式の集合写真は、戦場に動員される1年前のもの。教師になる夢を持った女学生たちは、どの表情もにこやかで、聡明な顔をしている。第1展示室へと誘う通路の先には、生徒の登校風景を描いた美術作家の海津研さんの絵画。校門に続く相思樹の並木道をセーラー服の学生たちが歩く。振り返り片手を高く上げる学生からは、「おはよう!」と今にも声が聞こえてきそうだ。赤瓦の校舎を見れば、資料館が校舎を模して建てられたことが分かる。展示物の説明書きには誰の持ち物かも記した。几帳面に書かれた数学のノート、かわいらしいイラストのシールが貼られた寄せ書き帳。一人一人の人物像が脳裏にイメージとして浮かび上がる。

第1展示室にあるイラストレーター・作家の三田圭介さんのイラスト。女学生の学校生活を生き生きと描いている第1展示室にあるイラストレーター・作家の三田圭介さんのイラスト。女学生の学校生活を生き生きと描いている


 2度目のリニューアル 

前泊さんは、「展示に学校らしさを出したことで、生徒の話だというのが伝わるようになった。ひめゆりの生徒たちも今の中高生と変わらない学生生活を送っていたことを知り、身近に感じてもらえるようになった。だからこそ、戦場への動員、戦争がよりつらく、胸に響いてくる」と話す。

前泊さんは、2004年に元学徒らが中心となって進めたリニューアルにも携わっている。そのため、「皆さんが何度も話し合い、議論を重ねて作った展示を変えてしまっていいのか、戸惑いもあった」と打ち明ける。リニューアルの内容や表現はその都度、電話や手紙で確認を取り、元学徒の思いに寄り添いながら丁寧に進めた。

プレオープンの日、元学徒から、「学校を思い出した」「想像以上に伝わる」と言葉をもらいホッとしたと話す前泊さん。「この先も伝えていけるんだねと喜んでくれたのがうれしかった」と笑顔を見せる。


 コロナ禍で来館者減少 

ひめゆり平和祈念資料館は1989年、ひめゆり同窓会(現、公益財団法人ひめゆり平和祈念財団)が設立した民間の施設。開館以来、行政の財政支援を受けずに運営してきた。しかし、約50万人だった来館者数は、コロナ禍で修学旅行のキャンセルなどが続き86%も激減。運営の要である入館料が減り、危機的な状況という。資料館は存続のための寄付を募りながら、戦争の実相を伝え、命や平和の尊さを伝える活動が止まらぬよう、現在も感染症対策を行って開館し、平和講話もオンラインで対応するなどしている。

「子どもの頃、社会見学で行ったきりという県民の話をよく聞く。大人になって、親になって、改めて見たとき、自分の子どもだったら、自分が引率の先生だったら、と感じ方が変わる。沖縄の戦争の記憶を沖縄の人にこそ知ってほしい」と訴える。「平和と命を尊ぶ、ひめゆり学徒隊の思いを次世代につないでいきたい」。資料館存続と活動継承を心に誓う前泊さん。その歩みが止まることはない。



 リニューアルのポイント 

全6つの展示室がある、ひめゆり平和祈念資料館。ここでは主な展示室のリニューアルポイントを紹介する。

 第1展示室 
リニューアルで第1展示室のテーマは「ひめゆりの学校」に変更。イラストや写真で女学生を身近に感じてもらえるよう工夫した。右の写真は、県外へ疎開する女学生のため、友人たちがメッセージを書いたサイン帳。
ひめゆり平和祈念資料館 第1展示室
ひめゆり平和祈念資料館提供


 第2展示室 
第2展示室「ひめゆりの戦場」では、沖縄陸軍病院に動員されたひめゆりの活動を紹介。上の負傷兵の手術のイラストは、少ない麻酔で行われた苦痛の表情が元学徒の指摘によって描き直されるなど、生々しく描かれている。
ひめゆり平和祈念資料館 第2展示室
ひめゆり平和祈念資料館提供


 第5展示室 
第5展示室は「ひめゆりの戦後」として、ひめゆり学徒の戦後の思いと資料館開館を紹介。最後のビデオルームで上映している映像を見て「つらくても体験を語らなければ、戦争で死んだ友だちのことがなかったことになってしまう」と立ち上がった元学徒の思いに涙を流す人も多い。
ひめゆり平和祈念資料館 第5展示室
ひめゆり平和祈念資料館提供


ひめゆり平和祈念資料館
沖縄戦で、沖縄師範学校女子部と沖縄県立第一高等女学校から陸軍病院に動員されたひめゆり学徒隊の戦争体験を伝える場として1989年に設立された。
住所/糸満市伊原671-1
TEL:098-997-2100


 プロフィル 
まえどまり・かつみ
1977年、宮古島市生まれ、浦添市で育つ。琉球大学法文学部人文学科卒業。大学の卒論でひめゆり学徒を取り上げたことがきっかけとなり、2001年、ひめゆり平和祈念資料館学芸員に採用。資料館の展示、企画に携わる。

関連記事 6.23慰霊の日企画②「戦争体験者の声 動画で配信」
 

撮影/比嘉秀明 文/赤嶺初美(ライター)
『週刊ほ〜むぷらざ』6.23慰霊の日企画①

第1767号 2021年6月17日掲載

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