教育
2021年2月4日更新
Q出会い系アプリで知る男性、怖くない?|思春期の性教育[10]
文・百名奈保|家庭では話題にしづらいけれど、大切な性教育のこと。このコーナーでは、助産師の百名奈保さんが、思春期の性教育についてつづります。
部活中の中2女子に質問
Q 出会い系アプリで知る男性、怖くない?
A 「安心そうな人を選ぶから平気」
車に乗せてくれる男性がいる!?
女子中学生たちに「休みの日は、いつもどこで遊んでいるの?」と尋ねたら、バスや車でしか行けない遠いショッピングモールの名前を言いました。詳しく聞いてみると、車に乗せて連れて行ってくれる大人がいるとのこと。出会い系アプリで知り合った「初めて会う大人の男性」と、気軽に行きたい場所へ移動するそうです。
この話をしてくれた生徒さんたちは、まだ幼い印象が残る中学2年生、部活も休まず頑張っている子どもたちです。
「知らない人の車に乗るのは怖くないの?」と聞くと「SNSで何回もやりとりしたし、優しい人だよ。怖くない」「今まで複数の人に、何回も乗せてもらったよ」と、言います。
これは「大変!」と思い、SNSが関係した性犯罪のことや、「もし相手が何人かいたら怖いでしょ」と、彼女たちに話しても「やばい、怖いじゃん! でも、こっちも友だち数人と一緒だから抵抗して拒否れる、だから大丈夫」「実際に会う前に遠くから確認して、安心そうな人にしか会わないから平気」と、ほとんど警戒していない様子です。
「同年代の女子」のつもりが…
また、オンラインゲームなどで「知らない人」と一緒にゲームをすることも簡単にできてしまう時代なので、「ゲームの攻略の仕方を教えてあげる」「アイテムを買ってあげる」と近づいてきた見知らぬ大人と親しくなり、実際に会うというケースもあります。
男子生徒がだまされたケースでは「同年代の女子」とやりとりをしていたつもりが、会ってみたら成人男性だったということもあり、顔の見えないやりとりは本当に危険だということがわかります。
生徒さんたちは、学校で行われる講演会で何度も「SNSとの付き合い方」や「SNSの危険性」について学んでいるはずですが、知っている友だちや自分がトラブルに巻き込まれたことがないから、ピンとこないのだと思います。
大学生男女に、小中高生のSNSトラブルを回避する方法を聞いてみましたが「今、20歳を過ぎた自分たちはネットの怖さがわかるから危ないことはしない。でも、子どもは怖さよりSNSの興味の方に負けてしまうので、どんなふうに説いても危機感は伝わらないと思いますよ」という、解決につながらない返事しかもらえませんでした。
今の子どもたちは生まれた時からスマホが身近なところにあり、簡単に外の世界につながる方法を知っています。
どんなに危険だと伝えても、SNSは生徒さんたちに魅力的で、知らない人と会ってしまう場合があるので、思春期講演でSNSの話をするときは、①一対一で会わない ②人目があるところで会う(助けを求められる場所)③密室には行かない(カラオケや相手の家など)-この三つを伝えます。
特に中学1・2年生の早い時期にこのことを伝え「自分のこと」として考えてもらいます。
「これをすれば大丈夫」はない
保護者の方から、SNSトラブルに巻き込まれないために家庭でどうしたらいいのか聞かれることが多いのですが、残念ながら「これをすれば大丈夫」というものはないと思います。最低限、①ルールを決める(使用時間、充電場所など)②フィルタリングをする③使用しているアプリを確認する-などの対策は必要です。
それでも、フィルタリングをしていない友達のスマホから情報を得てトラブルに巻き込まれるケースもあるので、普段からSNSトラブルのニュースを話題にして「危ないよね」「自分だったらどうしていたか」など、一緒に考える時間を小まめに作ることが大事だと思います。
ひゃくな・なお/那覇市嘱託助産師・保健師として、学校で性教育について講話。子どもたちからの相談も受け付けている。那覇市首里で、「助産院*きらきら」を開業
same-moon@comet.ocn.ne.jp
毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざ
「第1748号 2021年2月4日紙面から掲載」