教育
2020年12月3日更新
妊娠・出産はいつでもできる?|思春期の性教育[8]
文・百名奈保|思春期講演で、小学生にもライフプランについて話をします。将来、どんな仕事をしたいのか。結婚はしたい? 独身がいい? いつか親になる? そして、今は何をすればいいのかという話です。
A 男女共に適齢期がある
妊娠・出産の適齢期は
中学生に「将来、お父さん、お母さんになりたい人はいますか?」と問いかけると、女子は6割くらい、男子は2割くらい手を挙げます。
「何歳で親になりたいですか?」の質問には、女子は「23歳くらい」「妊娠したら高校生でも産む、だって赤ちゃんはかわいいから」「仕事のキャリアを積んでから35歳くらい」と、答えます。「オレは一生1人がいい」「40歳くらい」「子どもは3人欲しい」と答える男子もいます。さまざまですが、生徒さんには「妊娠、出産には適齢期がある」ということを伝えます。
「20歳ちょっとの若い時に親になるのも悪くはないけれど、①経済力②がまん強い心③協力してくれる人、この三つがそろってから親になるほうが、余裕を持って子育てができると思うよ」という話をします。
さらに、女性の年齢と卵子の数の話もします。卵子の数は、生まれた時に200万個あるけれど、それから一つも増えることなく減り続けて、37歳くらいで2万個、50歳のころにはほとんどゼロになります=グラフ①参照。また、妊娠のしやすさも年齢とともに下がり、35歳くらいからさらに下がるので、産婦人科医の多くは「妊娠適齢期は25歳~35歳くらい」と言っています。
何歳でも産める?
この話をすると、何人かの女子は「45歳くらいでも簡単に産めるでしょ、芸能人の○○さんも産んでたよ」と言います。たしかに45歳で自然妊娠、出産できる人もいるけれど、高齢になると多くの人は治療が必要で、それにはたくさんの時間やお金がかかります。
高額な費用を支払って体外受精などの治療をしても「45歳では1%しか赤ちゃんに会えない」というデータ(2018日本産科婦人科学会)=グラフ②=もあるので、もし親になりたいのなら「何歳までに、何人の子どもを持ちたいのか」などについて、中学生の時から十数年後のライフプランを考えてみることは大切なことです。
女子の中には「〇〇を食べると卵巣が老化しない」「恋や、SEXをしたら女性ホルモンが増える」といううわさを信じている子もいますが、これは医学的根拠のない間違った情報です。
子どもは多くのことをスマートフォンで調べますが「その情報は、信頼できる専門家が述べている内容か? ということまで考えて読むことが大事」と子どもに伝えるのは、親ができるアドバイスの一つです。
精子も老化する
驚かれるかもしれませんが、精子も老化します。精子は毎日作られ続けているけれど、35歳くらいから精子の数が減ったり、機能が衰えてきたりする、と言われているので「将来、お父さんになりたいと思っている人は、親になる年齢から逆算してライフプランを立ててみてね」という話を思春期講演でします。
もちろん、男子にも女子にも「結婚をしない生き方、子どもを持たない生き方もあり、人それぞれ自由ですよ」ということも加えます。
日常の親子の会話の中で、さらりと「卵子や精子の老化」「子どもの人生設計」について話ができる機会が増えるといいなと思っています。
ひゃくな・なお/那覇市嘱託助産師・保健師として、学校で性教育について講話。子どもたちからの相談も受け付けている。那覇市首里で、「助産院*きらきら」を開業
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毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざ
「第1739号 2020年12月3日紙面から掲載」