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2020年3月26日更新

誕生は森の中の喫茶店|沖縄ぐるめ ルーツはどこ!?

Vol.12 伊豆味のヒラヤーチー
おやつや軽食として、時には台風時の非常食にもなるヒラヤーチー。本部町伊豆味の喫茶店では30年前から軽食メニューとして登場し、以降、訪れる人を魅了し続けています。今回は“伊豆味のヒラヤーチー”の誕生に迫ります。
案内人・伊東一洋(トラベローグ)

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そもそも伊豆味のヒラヤーチーとは?

八重岳など本部半島の山あいに抱かれるようにたたずむ本部町伊豆味地区。冬にはサクラ、梅雨時期にはアジサイ、秋から春にかけて実をつけるミカンなど、沖縄では珍しく季節感が豊かな集落だ。さらに木々に囲まれ自然と一体化したかのようなカフェが点在。2010年頃には10件以上の店が営業し、その半数以上でヒラヤーチーが提供されていた。

伊豆味のヒラヤーチーの特徴は、お好み焼きのような円形ではなく、ポーポーのように丸めたり、折り畳んだ状態で提供し季節の野菜や野草が入っていること。そのスタイルを作ったのが伊豆味のカフェの先駆けとして知られる「やちむん喫茶シーサー園」だ。


客の要望から生まれ後の名物メニューに

やちむん喫茶シーサー園の営業開始は1990年。「のどかな場所でゆっくり過ごせる喫茶店をと思ったのがシーサー園を作るきっかけですね」と話すのは、創業者で先代店主の宮城麗朝さん(73)。平屋の古い家屋を改装してオープンし、当初のメニューはコーヒーのみ。ある日、客の「なにか食べるものがほしい」との声を聞き作ったのがヒラヤーチーだった。「小麦粉と水と野菜があればフライパンで簡単に作れるからね。でも、そのままだとヒラヤーチーが角皿に入らない。ならばと、ポーポーのように丸めてみたら収まりがいい。それからうちのヒラヤーチーはこの形です」と麗朝さん。

「父はシーサー園をオープンする前からヒラヤーチーを私たち子どもによく作ってくれました」と話すのは麗朝さんの長男で2代目店主の麗喜さん(44)。どうやら麗朝さんは、もともとヒラヤーチー作りが得意だったらしい。そのため、急な客のリクエストにも素早く対応できたのだ。ヒラヤーチーの特徴は「生地に油を少量加えて出したモチっとした食感。それと、敷地内でとれた雲南百薬の葉を生地に混ぜ込んでいることですね」。

地元客だけでなく観光客をも引き付けている伊豆味のヒラヤーチー。その極意は2代目にも受け継がれていた。
 
屋根越しに亜熱帯の森が見渡せる2階席は、シーサー園のもうひとつの名物
 
ヒラヤーチー500円。1人前で2枚。カツオベースの自家製しょうゆタレにつけていただく
 
麗朝さんから教わり昨年9月から2代目店主として店を切り盛りしている麗喜さん
 
[店舗情報]
やちむん喫茶シーサー園
沖縄県本部町伊豆味1439(地図
0980-47-2160
11時~18時30分LO
月、火曜休
P10台 



ミカンの直売所で提供したのが始まり

オープン16年になる「農芸茶屋四季の彩」もヒラヤーチーを提供している。店主の座間味広美さんは、「うちはミカン農家で収穫したミカンをこの場所で販売していたんです。販売所では、トーストとヒラヤーチー、ドリンクを提供して少し休憩できるようにしていました」と話す。

こちらのヒラヤーチーは小麦粉をダシで溶き、ニラと敷地内に自生する白いタンポポの葉を混ぜているのが特徴。運ばれてきたヒラヤーチーは三つ折りで食べやすいよう切れ込みが入っている。焦げ目が香ばしく口当たりは軽いが、ボリュームがある。

新緑の季節。自然に触れ合いながらオリジナリティーあふれる伊豆味のヒラヤーチーを味わってみては。
 
ヒラヤーチー540円。こちらも2枚入り。ドリンクセットだと750円
 
森が一望できるバルコニーが特等席
 
16年前しっかりとした食事も食べたいとの客の要望で販売所を店舗へと改装した
 
[店舗情報]
農芸茶屋四季の彩
沖縄県本部町伊豆味371-1(地図
0980-47-5882
11時~15時30分LO(季節により変動あり)
月、火曜休
P10台 



こぼれ話
注文が多い時は四つのフライパンを同時に使っていたそうです



いとう・かずひろ/北九州市出身。雑誌編集に携わり県内各地に出没。食べ歩きがライフワーク。大の猫好きでwebサイト「おきなわにゃんこビレッジ」も運営

毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざ
「第1704号 2020年3月26日紙面から掲載」

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