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2019年7月25日更新

発祥は那覇? 本部?|沖縄ぐるめ ルーツはどこ!?

Vol.4 ぜんざい
夏といえば「ぜんざい」で涼をとるのがうちなー流! 本土では、ぜんざいといえば冬に食べるお汁粉タイプのあったかスイーツなのに、なぜ沖縄のぜんざいは、砂糖や黒糖で甘く煮詰めた金時豆の上にかき氷がのったスタイルなのか。その由来をリサーチするため、ぜんざいの老舗2店舗に足を運んだ。
案内人・伊東一洋(トラベローグ)

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イチゴシロップが基本 謎を呼ぶみぞれと金時

まず訪ねたのは那覇の「千日」。歴史は古く、前身の屋船食堂が創業した1952年から数えて68年。専門店としては現存する最古の店と考えられる。創業時の店主、金城新五郎・春子さん夫妻はともに故人であるため、三女の小坂れい子さんに話を聞いた。

「屋船食堂では、食堂メニューのほかに金時、みぞれも提供していました」と小坂さん。当時の写真を見せてもらうと確かに店のガラス戸に「みぞれ」「金時」の文字がある。「みぞれはイチゴシロップをかけたかき氷のこと。金時は煮詰めた小豆餡の上にみぞれがのったものなんですよ」。ここまで聞いて、「金時」が現在のぜんざいに近いと確信した!

ではなぜ、金時豆が使われていないのか? 「1962年、現在地に移転して千日冷菓に店名を変更。この頃からアメリカから輸入され手に入りやすくなった金時豆も使うようになったようです。しばらくは小豆と2種類の餡を作っていましたが、仕込みが大変なのと粒が大きく煮崩れしにくいため、金時豆だけになりました」。ちなみにイチゴシロップを使っていないかき氷は…「なかったようです。ただこの写真を見てください」といって差し出された1枚の写真。昭和40年代初頭の店内の様子が写し出されたそれには、壁のメニュー札に「冷しぜんざい」の文字があるではないか! 料金は10セント。金時やみぞれもあり、明らかに、冷しぜんざいとは別物であることが分かる。おそらく「冷しぜんざい」こそが、イチゴシロップがかかっておらず、金時豆を使った、現代でも親しまれているぜんざいそのものであると推測。年代は1960年前後と思われる。
 
千日のぜんざいの源流ともいえるいちご金時(ぜんざい)450円。イチゴシロップなしの一般的なアイスぜんざいは350円
 

屋船食堂時代の写真。金時、みぞれの文字が目立つ
 

家族で切り盛り。左から2人目が小坂れい子さん



[店舗情報]
千日(地図
沖縄県那覇市久米1-7-14
098‐868‐5387
11時30分~20時(10~6月は~19時)
月休(月曜が祝日の時は火曜休)
P1台



本部町の老舗店へ 無念の迷宮入り

ぜんざいの老舗といえば本部町渡久地にある「新垣ぜんざい屋」も外せない。同店は1955年頃、故新垣隆元さんと妻の敬子さん(97)によって創業された。現在、店を切り盛りするのは長女の初美さんと長男嫁の智子さんだ。

「父はもともと大工をしていたんだけどね、戦争で傷を負って大工仕事ができなくなった。そこで、父の兄がコックをしていた国際通りの山形屋(1999年閉店)で食べた『みぞれ』を思い出して店を始めたわけ」と初美さん。当時はかき氷の上に手作りの赤いシロップをかけていたという。千日はイチゴシロップだったが、こちらもシロップは赤。当時は赤色がはやっていたのだろうか…。ともあれ当初はみぞれ店だった同店に転機が訪れたのは3年後の1958年頃。「近くの糸数菓子店がぜんざいをはじめ、それを見た親戚に勧められて、みぞれとぜんざい両方を出すようになった」のだとか。その後ぜんざい1本に絞って今に。

わずかな差だが千日より先にぜんざいを始めた店が存在したのだ! 残念ながら写真もなく証言のみ。調べるすべもない。ぜんざいの氷が目の前で溶けていくのとは対照的に、ぜんざい発祥の疑問は解けることがなかった(泣)。
 
新垣ぜんざい屋の氷ぜんざい300円
 
豆を煮詰める専用窯。まきを燃やし12時間かけてつくる
 
智子さん(左)と初美さん


[店舗情報]
新垣ぜんざい屋(地図
沖縄県本部町渡久地11-2
0980‐47‐4731
12時~18時(売り切れ次第終了)
月休(月曜が祝日の時は火曜休)
P6台



こぼれ話
7月25日は日本かき氷協会が制定する「かき氷の日」。お気に入りの店の「ぜんざい」で涼んでみては?
※ぜんざいの発祥にまつわる情報をお持ちでしたらお寄せください



いとう・かずひろ/北九州市出身。雑誌編集に携わり県内各地に出没。食べ歩きがライフワーク。大の猫好きでwebサイト「おきなわにゃんこビレッジ」も運営
 

毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざ
「第1669号 2019年7月25日紙面から掲載」

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