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2025年7月17日更新

五感を刺激 楽しく食べる|食欲低下した時の食事ケア|つらくない介護を⑭

要介護者の食欲や体力の低下が気になる夏。摂食嚥下(えんげ)障害看護認定看護師の加藤節子さんは「食べる量や食べやすさばかりでなく、食べる楽しさも心掛けて」とアドバイスする。


五感を刺激 楽しく食べる
食欲低下した時の食事ケア



介護食のみは食欲減
自分で食べる意識へ


加藤節子さん
「(一社)にぬふぁ星」「Das Essen」代表。摂食嚥下障害看護認定看護師


-夏になると食欲が低下する。その原因は?

高齢者は暑さで体力が落ちることに加え、見た目や食感が食欲低下の原因となっていることがあります。食材を液状にしたペースト食は確かに飲み込みやすいのですが、何を食べているのか分からない見た目で食欲が落ち、かむ刺激がないため脳への刺激も減ってしまいます。また、ペースト食だけを食べていると、顎と舌が上下にしか動かず、咀嚼(そしゃく)する動きがなくなり、本来50~60%ある咀嚼能力を30%レベルまで下げてしまっている場合も多く見られます。

座ってむせずに食べられているのであれば、まずは本当にペースト食しか食べられないのかを見直してみましょう。例えば、ポリポリという食感があり、口の中で溶けやすいえび風味のスナック菓子から試してみるといいと思います。

咀嚼嚥下能力があるのに、食欲が低下している場合、大切なのは、無理に栄養を取らせようとするのではなく、まず「食べる楽しさ」を感じてもらうことです。1日三食きちんと食事をすることにこだわらず、回数を増やし、少量ずつでも口にしてもらうことが大事です。

-食べる楽しさを感じてもらう工夫とは?

五感を刺激することが最も重要です。料理の盛り付けや香りを楽しむ、なじみのお茶わんを使う、家族で一緒に食べるなど、食事の雰囲気づくりを大切にしてください。

お菓子や炭酸飲料も食欲を呼び起こすために必要なアイテムです。五感の刺激に役立ちます。例えば、炭酸飲料の缶を開ける時の「プシュッ」という音を聞かせ、水滴のついた缶を本人に持たせて、冷たさなど感触を感じさせ、缶を持たせたまま介助者が手を添えながら口に運ばせると、食べるという一連の行為をすることで、認知機能が引き出されることがあります。



-食事介助をする時に気をつけることは?

姿勢が大切で、まず腰、足、肘を90度に保ちます。顔が上向きだと飲み込むことが難しくなるので、下顎と胸の間をこぶし1個分開ける程度に顎を引きます。そして、できる限り、スプーンやコップを本人に持ってもらい、家族が手を添えてサポートする方法をおすすめします。自分で食べるという記憶が蘇り、スプーンが口元に来ると自然に口を開けてくれるようになります。

また、テーブルの高さも重要です。肘とテーブルが同じ高さになるよう調整し、テーブルとみぞおちの距離を握りこぶし1個分程度に保ってください。高すぎるテーブルは腕に負担をかけ、食べることがおっくうになります。

-食事量の低下で気を付けることは?

体重減少とともに、尿の量が極端に減ったり、色が濃くなったりした場合は脱水の危険があります。これらの症状が見られた時は、かかりつけ医に相談してください。

ただし、適切な水分摂取ができていて、元気があるようであれば、一時的な食欲低下はそれほど心配する必要はありません。大事なのは、がんじがらめに「こうしなければ」と考えず、食べることの楽しさを一緒に見つけていくことです。


 生きる喜びを呼び起こす 

食事量が低下したときは、「食べる楽しさを引き出す工夫を」と加藤さん。好きな器を使い、テーブルの高さや姿勢の角度を見直すほか、「誰と一緒に食べるかも大事」。外食したり、若いころ好きだった音楽を聞いたり、「懐かしい記憶を呼び起こす工夫も食べる力の後押しになる」と話す。
 
取材/赤嶺初美(ライター)
毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざ
「第1979号 2025年7月17日紙面から掲載」

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